5月30日、消費者庁は那覇市の葬儀会社(株)那覇直葬センターに対し、「直葬プラン」又は「火葬プラン」と称する葬儀サービスの表示について、景品表示法違反(有利誤認) の措置命令を行いました。
今回の措置命令は、消費者庁及び内閣府沖縄総合事務局の調査による事案です。
有利誤認表示とみなされたのは、低価格を訴求する本件葬儀サービスに、基本プランには含まれていない追加料金が必要なサービスが含まれていると誤認させる写真の掲載と、当該サービスについて、販売実績のない「通常価格」の比較対象価格表示です。
葬儀サービスに対する過去の措置命令は、2017年12月の「イオンのお葬式(イオンライフ(株))」、2018年12月の、「小さなお葬式((株)ユニクエスト)」、2019年6月の「よりそうお葬式((株)よりそう)」と、いずれも有利誤認での違反認定となっています。
葬儀サービスに限らず、低価格を訴求しようとする際、注意すべき景品表示法上のポイントを確認します。
———-
株式会社那覇直葬センターに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年5月30日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/038015
———
違反概要
【対象役務】
「直葬プラン」又は「火葬プラン」と称する葬儀サービス
【表示媒体・表示期間】
・日刊新聞紙に折り込んだチラシ
2023年3月4日、18日、5月20日、27日、6月10日、24日
・自社ウェブサイト
2023年4月25日~5月11日
【違反内容】
表示内容:
・日刊新聞紙に折り込んだチラシ
仏具がある部屋に安置された棺の写真、合掌する複数の人物の写真及び供花がある部屋に安置された棺の写真と共に、「直葬」、「火葬プラン 77000円(税込)」等と表示することで、あたかも、本件サービスの提供に当たって、個室で遺体と面会する場合(当該個室に供花又は仏具を置く場合を含む。)でも7万7000円以外に追加料金が発生しないかのように表示していた。
実際:
個室で遺体と面会する場合には個室の料金が追加で発生し、加えて、当該個室に供花又は仏具を置く場合には供花又は仏具の料金が追加で発生するものであった。
【表示例】
報道によると、実際には仏具や花には追加料金がかかり、写真と同じかたちで葬儀を行う場合、料金は少なくとも15万円近くに上っていたと報じています。
—————
“消費者を誤解させるチラシ配布”葬儀会社に再発防止命じる
(NHK 2024年5月30日)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20240530/5090027987.html
—————
・自社ウェブサイト
「直葬プラン 70,000円(税別) 77,000円(税込)」及び「通常価格 180,000円(税込198,000円)」と表示することにより、あたかも、「通常価格」と称する価額は、那覇直葬センターにおいて本件サービスについて通常提供している価格であり、実際の提供価格が当該通常提供している価格に比して安いかのように表示していた。
実際:
「通常価格」と称する価額は、那覇直葬センターにおいて本件サービスについて提供された実績のないものであった。
【表示例】
「追加料金一切不要」が問題となった、葬儀サービスの過去の景品表示法違反事例
葬儀サービスにおける料金表示に対する景品表示法違反は、過去にも発生しています。
違反内容はいずれも、葬儀サービスプランを提示して「追加料金一切不要」と記載することで、サービスを提供するにあたって必要な追加、変更する場合でも、あたかも、記載された価格以外に追加料金が発生しないかのような表示で、有利誤認表示とみなされました。
また、追加料金についての打消し表示が記載されていたものの、打消し効果が認められていません。
・(株)よりそうに景表法措置命令。続く、葬儀サービスの「追加料金不要」表示の処分(消費者庁:2019年6月14日)
・ユニクエスト、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。Web 広告の打消し表示に注意(消費者庁:平成30年12月21日)
・イオンライフ、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。「追加料金」請求4割(消費者庁:平成29年12月22日)
イメージ写真と実際との乖離に注意
今回の那覇直葬センターの事案については、追加料金不要などの文言は記載されていませんが、チラシに表示された写真と同様のサービスが、表示された価格のプランに含まれておらず、有料オプションになる旨が記載されていないことで、結果的に「あたかも追加料金が発生しないように表示している」と判断されています。
文言ではなく写真の表示内容により有利誤認認定となった事案には、振袖に袋帯、長襦袢等を組み合わせた着物レンタルサービスの事案があります。
DM用カタログに、着物のセット商品を着用したモデルの写真とセットレンタル料金を記載し、あたかも、記載された金額で写真と同等のコーディネートのセット商品がレンタルできるかのように表示していました。
しかし、写真通りのコーディネートを選ぶと、記載された金額の他にグレードアップのために必要な相当程度の費用が必要となるものでした。
カタログでは写真の裏面にはセット内容の品目は記載されていましたが、オプション内容の詳細(品目及び金額等)は記載されていませんでした。
また、写真の下部に「※写真のコーディネートは、オプション小物(別途料金)を使用しております。」「※写真のコーディネートは参考の一例につき、セットの内容と異なる場合がございます。」と打消し表示が記載されていましたが、オプションとなるグレードアップの内容が不明瞭であり、その金額が消費者の想定と大きく乖離するとみなされました。
低価格を訴求する際、有利誤認表示とみなされないためには、商品・サービスの内容を表す写真やイラストなどを含む表示と、その金額が適切に対応していることが基本条件です。もし、追加料金となるなど例外条件がある場合は、一般消費者に正しく認識できるような打消し表示を行うことが必要です。
また、以下に、価格表示に関する景品表示法の解説記事をまとめました。
キャンペーンやマーケティング施策等を検討する際、広告法務のリスクマネジメントについて、お気軽にご相談ください。
≪参考記事≫
===================================
◆フィデスの美・健広告法務オンライン講座◆
法律を「知っている」から、実務で「判断」「活用」
できるコンプライアンス対応力向上を図ります。
詳細はこちら
===================================
===================================
◆フィデスの広告法務コンサルティング◆
消費生活アドバイザーが、貴社の広告コンプライアンス
体制構築をサポートします。
詳細はこちら
===================================
————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの更新情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————
この記事へのコメントはありません。