期限情報の掲載類型
EC サイトの場合には、発注から配送までにタイムラグが発生し、しかも複数の製造ロットが入り乱れて入荷・発送が行われるため、具体的な消費・賞味期限を EC サイト上に示すことは極めて困難です。
また、取扱い商品や運営体制等の違いにより、期限情報の掲載方法は多種多様です。
どのような食品においてどのような表示をすることが望ましいか、期限情報の掲載類型が整理されています。
「期限情報」の情報提供例
(1)具体的な年月日表示(消費・賞味期限)「賞味期限:●年●月●日」
可能なケース:
・到着日が決まっており、逆算して製造するような場合
・賞味期限が特定されている食品を販売している場合
主な対象食品:
・おせち、クリスマスケーキなど
・賞味期限が近い食品だけを集めたサイトで販売されている食品
掲載例:
・賞味期限:2021年12月25日
・賞味期限:解凍せずに冷凍保存で 2022年1月15日まで
・賞味期限が2021年10月30日と大変短い商品です
・【訳あり品 2022年2月賞味期限】
・【訳あり特価】 賞味期限 2022 年 2 月 28 日
・消費期限:2022年1月15日
・【在庫処分】消費期限 2021 年 12 月 30 日
(2)期限残表示 「賞味期限まで到着日から●日以上お日もちするものをお届け」
対象の食品を残り何日間(おいしく)食することができるかを示す表示。
「到着日から起算する」表示と、「出荷日から起算する」表示の2種類。
特に「到着日から起算」表示は、実際に消費者の手に渡った時点からの期限残日数を提示することとなるため、望ましい。
いずれの表示も、配送期間にタイムラグが出るような場合、EC サイト上で保証した期限残と実商品の期限残にズレが生じうる可能性があるため、表示方法に留意する。
<到着日から起算する表示>
可能なケース:
・発注から発送までの期間と配送期間が明確化されている場合
・配送日や地域が限定されている場合
主な対象食品:
・期限が短い食品
掲載例:
・到着日より7日
・お届け日から 10 日前後
・配送日を含め約 5 日
・賞味期限まで 10 日以上お日持ちするものをお届け
<出荷日から起算する表示>
可能なケース:
・出荷時点で食品の期限残の期間が明確化されている場合
主な対象食品:
・期限が短い食品
掲載例:
・出荷日より7日
・出荷の時点から起算して 10 日前後
・発送日より約 5 日
・商品発送の時点で賞味期限まで残り 90 日以上の商品をお届け
【期限残表示を行う際のポイント】
●期限残表示のための計算式を設定する
対象食品の賞味(消費)期限から、自社内の期限のルールや配送などの概算期間を計算す
ることで、最低限何日以上を保証できるかを算出する。(賞味期限の短い食品にも応用可)
●配送期間に関する留意事項
・期限残情報に近接した場所に配送期間が長くなる代表的な地域とその期間を明記する。
・配送遅延の可能性について、適切に注意喚起しておく
記載例:
・配送地域や交通事情、出荷状況などにより、予定の配送時期が遅れる可能性があります。あらかじ
めご了承ください。
・「前後」や「約」という文言を活用する
記載例:
・お届け日を含め 10 日前後、到着日から約 7 日
●消費者に分かりやすい表記
「到着日+●日」のように、「+」という記号や、「お届け日を含め 10 日」という表現がわかりにくい可能性あり。具体的な日付の例を示すことで、消費者の理解を促進する。
記載例1:
賞味期限:到着日+5 日保証
例:お届け予定日 8 月 1 日の場合、賞味期限が 8 月 6 日以降の商品をお届けいたします。
記載例2:
賞味期限:お届け日を含め 10 日
例:10 月 5 日がお届け日であった場合、「賞味期限:10 月 14 日」あるいはそれより長い期限の商品が届くことを示します。
(3)期間表示 「賞味期限:製造日から●日」
食品そのものに設定された賞味(消費)期限までの期間。
食品固有の情報であるため入手しやすく、出荷や配送などの日程に左右されない表現であることから事業者にとって管理しやすい。
他方、消費者には「期限残」が分からず、届いてから賞味(消費)できる期間と勘違いされるおそれがあるため、注意が必要。
事例:「賞味期限:180 日」と記載された場合、期限残が 180 日よりも少ない 90日や 60 日程度の商品が届くことにより、苦情となる等。
可能なケース:
・各食品の期限情報が把握できている場合
主な対象食品:
・期限が長い食品
掲載例:
・賞味期限:180 日
・賞味期間:冷凍 2 ヶ月
・賞味期限:3 年
・製造日より 180 日
(4)サイト全体方針掲載 「本サイトでは、当社が定めた日数以上の期限残の商品に限り、出荷しています。」
各商品ページでの期限情報提供が困難な場合、当該 EC サイト全体として一定期間の期限残のある商品を提供することを保証する、という掲載方法。
掲載例:
・「本サイトでは、商品ごとに出荷が可能な賞味(消費)期限までの日数を定めており、定めた日数以上の商品に限り出荷させていただいております。」
・当社では、賞味期限が 3 か月を切ったものは扱っておりませんが、万が一そのような商品がお客様のお手元に届いてしまった場合は、無償交換させていただきます。
・当社では、原則として賞味期限が 3 か月以上の商品をお届けいたします。なお、賞味期限が 3か月未満の商品は「訳あり品」として販売する場合がございます。
賞味期限のウェブ掲載が難しいことを消費者は認識していない
食品のネット販売では、食品の購入依頼を受けてから購入処理、食品ピックアップ、配送準備、配送、受取というステップが生じるため、容器包装に示してあるような具体的な賞味期限をEC サイト上に掲載するのは極めて困難です。
しかし、このことを理解している消費者は 3 割程度であり、約 7 割の方には適切に理解されていないという調査結果があります。
このような事業者と消費者の認識ギャップを踏まえつつ、できるだけ消費者に正確な情報提供に努めることで、消費者からの評価や信頼を得られ、問合せ対応業務の軽減が図れることと思います。
自社で取り扱う食品の種類や EC サイトカテゴリ等にふさわしい情報提供の在り方を検討する一助としてのガイドブックの柔軟な活用を勧めています。
≪関連記事≫
・食品ネット販売事業者 義務表⽰事項情報提供は55.6%。情報提供メリットなし7割 (消費者庁 平成28年9月)
・困難な食品ネット販売における義務表⽰情報掲載の環境整備 (消費者庁 平成28年9月)
・食品のネット購入時に義務表示事項確認する人は9割!情報を探して確認できなかった場合、76%がそのサイトで購⼊せず(消費者庁 平成28年8月)
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