平成26年6月12日に施行された改正薬事法により、第1類医薬品を含むすべての一般用医薬品のネット販売が解禁され、6年が経過しました。
厚生労働省では、毎年、医薬品の店舗販売とネット販売の販売ルールの順守状況について、一般消費者の立場から実際の医薬品販売の状況を調査しています。
調査期間は令和元年11月〜令和2年2月、一般消費者である調査員が店頭販売する全国5,036件の薬局・薬店と、特定販売の届出を行い、ネット販売する500サイトが対象。
調査では、ネット販売対応は前回に比べて全体的に改善傾向が見られました。
反面、「相談に対応した者の資格が薬剤師(または登録販売者)であった」、「濫用等のおそれがある医薬品を複数購入しようとしたときの対応」等の一部の項目で、店舗販売に比べて、ネット販売の順守割合が低くなっています。
特に、濫用等のおそれがある医薬品の複数購入対応については、5年続けて遵守率が50%を下回っており、販売ルールの徹底に課題が見られました。
ネット販売に関する調査内容を確認します。
———————————————
令和元年度医薬品販売制度実態把握調査結果
(令和2年9月11日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13507.html
———————————————-
●要指導医薬品、一般用医薬品の取扱い状況
第3類医薬品の「取扱あり」は 92.6%(463件)
第2類医薬品(指定第2類医薬品は除く)の「取扱あり」は 89.8%(449 件)
指定第2類医薬品の「取扱あり」は77.0%(385 件)
第1類医薬品の「取扱あり」は 28.8%(144 件)
要指導医薬品の取扱いなし、薬局製造販売用医薬品の「取扱あり」は 3.4%(17 件)
●ウェブサイトへの記載状況
口コミや使用感など書込みの記載の状況:
購入者による医薬品に関するレビューや口コミは禁止されています。
(医薬品の効能・効果に関すること以外の事項を除く。)
過去の医薬品購入履歴等に基づき、自動的に特定製品の購入の勧誘をすること(レコメンド)も禁止されています。
記載なし 98.0% (平成30年度:98.4%)/記載あり2.0 % (平成30年度:1.6%)
●一般用医薬品の情報提供状況
ネット販売ルールでは、専門家(薬剤師・登録販売者)が購入者の状況に応じた適切な情報提供を行うことが義務付けられています。(参考情報参照)
第1類医薬品を販売する際の対応状況:
(1)使用者の状態等の確認
購入希望者から、年齢、性別、症状等、適切な情報提供に必要な事項を確認する。
確認あり98.1%(平成30年度::96.0%/店頭販売:91.3%)
平成30年度よりさらに2.1ポイント改善され、店頭販売を上回った。
(2)使用者の状態に応じた個別の情報提供
薬局、店舗にいる専門家から、使用者個々の状態に応じた情報提供(用法・用量、服用上の留意点等)を行う。(自動返信メールは情報提供に該当せず。)
情報提供あり81.5% (平成30年度:77.4%/店頭販売:89.7%)
平成30年度よりさらに4.1ポイント改善されたが、店頭販売には劣る。
情報提供を行った者の資格は、薬剤師86.4%(平成30年度:70.8%/店頭販売:96.3%)
登録販売者 0.0%(平成30年度:2.1%/店頭販売:1.1%)
その他・わからなかった 13.6% (平成30年度:27.1%/店頭販売:2.6%)
平成30年度より「その他・わからなかった」「登録販売者」の割合が減少し、薬剤師の割合が15.6ポイント増加した。
(3)第1類医薬品販売時の相談対応
相談*に対し回答あり 96.1%(平成30年度:92.4%/店頭販売:97.4%)。
相談対応した者の資格は、薬剤師82.7%(平成30年度:61.1%/店頭販売:95.7%)
登録販売者 0.0%(平成30年度:2.8%/店頭販売:1.0%)
その他・わからなかった 17.3% (平成30年度:36.1%/店頭販売:3.2%)
回答率、薬剤師の対応率ともに上昇しているが、対応者資格不明は店頭販売を上回っている。
*「子供に飲ませても(使用しても)大丈夫か」、「この薬を飲むと眠くなるか」、「他の薬を飲んでいるが一緒に飲んでも大丈夫か」等を質問し、それに対応する注意事項(添付文書に記載されている事項)等が回答された場合を「適切な回答があった」とした。
第2類医薬品等を販売する際の対応状況:
(1) 第2類医薬品販売時の相談対応
相談に対し回答あり 89.4%(平成30年度:90.6%/店頭販売:96.8%)。
相談対応した者の資格は、薬剤師17.6%(平成30年度:15.0%/店頭販売:5.3%)
登録販売者 29.3%(平成30年度:20.9%/店頭販売:84.4%)
その他・わからなかった 53.1% (平成30年度:64.1%/店頭販売:10.5%)
回答率は約9割で横ばい、薬剤師または登録販売者の対応率は改善されているが、対応者資格不明は5割以上で、店頭販売には劣る。
(2)指定第2類医薬品に関する注意喚起の状況
薬局等において、禁忌の確認や専門家への相談を促す掲示・表示を行うとともに、購入者にその内容が適切に伝わる取組を行う。
認識できた 95.9%(平成30年度:92.1%/店頭販売:81.4%)
平成30年度よりさらに3.8ポイント改善され、店頭販売も上回っている。
(3) 濫用等のおそれのある医薬品を複数購入しようとした時の対応
1つしか購入できなかった 39.4%(平成30年度:41.1%/店頭販売:54.5%)
複数必要な理由を伝えたところ、購入できた 6.4%(平成30年度:5.6%/店頭販売:14.9%)
質問等されずに購入できた 54.1% (平成30年度:53.2%/店頭販売:30.6%)
濫用等のおそれのある医薬品を複数個購入する旨を伝えた際の対応は、5年連続遵守率が50%を下回っており、改善が見られない。
今後、ネット販売での販売ルールへの対応がさらに進むよう、取り組みに期待します。
《参考情報》
医薬品の販売制度(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082514.html
【薬局・薬店向け】一般用医薬品の特定販売(インターネット販売)について
(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/ippan_kusuri/ippan_seido.html
≪関連記事≫
・医薬品ネット販売対応、大幅改善 薬剤師等専門家からの対応に課題
(平成28年6月 医薬品販売制度実態把握調査)
・医薬品ネット販売 使用者への個別の情報提供義務遵守は5割
(平成27年5月 医薬品販売制度実態把握調査)
======================================
◆広告法務コンサルティング・社員教育◆
販促・広報戦略、商品表示・広告チェック社内体制構築等、
社外専門家としてのノウハウとサポート
詳細はこちら
======================================
————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの1週間分の情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————-
この記事へのコメントはありません。