国民生活センターが2016年12月15日に結果を公表した「水素水」の商品テストが、物議をかもしています。
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増える「水素水」に関する消費者相談。溶存水素濃度と効能効果
(国民生活センター商品テスト 2016年12月)
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テストでは、19銘柄について溶存水素濃度等の表示・広告を調べ、それらの値が消費者が飲用する時点での目安になるのか、また、表示のないものや、開封後や生成後にすぐに飲まなかった場合の濃度を調べるとともに、事業者へのアンケート調査を行っています。
今回の商品テストを受け、調査対象となった水素水生成器製造販売元等から、対象銘柄の選定理由や、水素ガス濃度の測定方法に関する意見が多く出されています。
容器入り水素水製造販売元等からは、意見は出されていません。
国民生活センターの商品テスト方法や見解について確認します。
●テスト対象銘柄の選定について
《事業者の意見》
・「PIO-NET」の相談件数が多い企業を商品順に選定しているのであれば納得もできるが、消費者の目に留まる機会が多い商品が選定されたことは納得できない。
・今回選定されず商品テストも受けていない水素水商品(商材)に対しては、今後どのような指導するのか。
《商品テスト部の見解》
今回のテストは、多くの消費者が飲用していると考えられる水素水の実態を調べることを目的としているため、PIO-NETの事例にあった銘柄に限定して選定したわけではなく、消費者が購入するに際し、広く一般に流通している商品群の中から、インターネット通信販売等で検索して目にする機会が多いと考えられる銘柄を選定した。
また、水素水には、公的な定義等がなく、様々なタイプの商品が販売されている現状を踏まえ、複数のタイプを調査した。
●管理医療機器である生成器の水素、水素水の効能効果に関する記載について
《事業者の意見》
記載内容:
還元性のある水を飲むと、どうなるの?
胃腸症状の改善以外にも様々な効果が期待できます。現在、その実証に向けて産学協同研究が行われています。
還元性、つまり抗酸化性がある電解水素水は、△△大学院と 日本トリムとの共同研究(基礎研究)で、様々な疾病の原因といわれている活性酸素を抑制することが国際学術誌で発表されています。 その抗酸化性をベースに、現在、人工透析への応用を始め、 抗糖尿病、メタボリック症候群への効果検証など臨床レベルでの 研究が行われています。
※赤字は健康保持増進効果等があると受け取れる表現として、医薬品医療機器等法や健康増進法や景品表示法に抵触するおそれを指摘された文言
・その記載自体、「(基礎研究)」や「研究が行われています。」といった文言のとおり、研究途上にある旨の記載であって健康保持増進効果等があることを示すものではない。
・当社の管理医療機器生成器の商品販売ウェブサイトに掲載されているものではなく、コーポレートウェブサイトの情報提供のページに記載されたものである。
・よって、一部分の記載を切り取ってあたかも当社が不適切な表示をしているかのように文書に記載されることは妥当ではない。
《商品テスト部の見解》
蛇口直結型の2銘柄については、胃腸症状改善のために飲用するアルカリ性電解水を生成するものとして、管理医療機器の認証を受けているものだが、研究結果等であっても、医療機器について認証を受けていない効能効果を広告することは、医薬品医療機器等法に抵触するおそれがある。なお、広告とみなすかどうかについては、明示的、暗示的問わず、全体の説明の中で判断される。
●溶存水素濃度の測定について
《事業者の意見》
・今回のテストと自社の水素濃度を測定している基準は全く異なる。
・測定方法についての定義は確立されておらず、会社によって測定条件に違いがある。商品テスト部は、その確率されていない定義にも係わらず商品テスト部が設定した定義により測定しているが、実際に正しい測定方法なのか。
・経験上ミネラルウォーターと水道水では水素濃度に違いがあり、同一の水温で測定した場合、水道水では濃度が低めに表示される。又、水道水は地域、天候、水質によりばらつきがあり、日本における相模原市の水道水を標準検体として使用し公表してもよいのか。
《商品テスト部の見解》
溶存水素濃度の測定方法には公定法がないので、今回は、「分析機器の手引き2016」(一般社団法人 日本分析機器工業会発行)に「溶存水素計」として挙げられていた隔膜電極法とガスクロマトグラフ法の2法で測定を行った。
また、各社の溶存水素濃度の測定が、同一の条件で行われているわけではなかったことから、当センターでは、全ての銘柄を同じ方法で測定し、その結果を基に考察した。
なお、テスト対象銘柄の水素水生成器は、水道水の使用を禁じているものがなかったため、特殊な水ではなく、消費者が最も手軽に利用できると考えられる水道水を使用した。
酸化還元電位を測定する機器については、本テストでは検証を行っていないが、一般的に、水素分子のみならず、水中のその他の還元性物質、あるいは酸化性物質、温度、pH等による影響を大きく受けるとされている。
《国センからの消費者へのアドバイス》
容器入り水素水のパッケージに表示されている溶存水素濃度に、充填時や出荷時とある場
合は、飲用する時の濃度とは限らない。また、水素水生成器も水質や水量等により変わる旨の表示があり、必ずしも表示どおりの濃度になるわけではない。
《国センからの事業者への要望》
水素水生成器の取扱説明書や付属のパンフレット等に溶存水素濃度の表示のあった銘柄で、表示値よりも測定値の方が低いものがあった。使用する水質や水量により変わる旨の記載はあるが、どう変わるかが分からない。表示により具体的な情報提供をするよう要望。
●PIO-NET事例について
《事業者の意見》
・水素水販売企業が選定された理由として、2,260件の相談の内、実際に多かった相談内容は公表しないのか。報道発表資料に4事例が掲載されており、どの事例も水素水となっているのか疑問であるとの事で、表示に関する指摘はない。
・全ての相談が苦情によるものなのか、販売方法なのか等、相談内容を項目別に「パーセント(%)」で開示する必要性があるのではないか。
《商品テスト部の見解》
水素水に関する相談については、事例として挙げている品質、表示・広告に関するもののほかに、販売方法や契約などに関するものもあるが、今回の公表の趣旨に沿った事例を取り挙げた。
●マスコミの報道について
《事業者の意見》
・報道では、水素水は何の意味もない商品であったかのような内容となっている。
・報道発表の際、効果に関する内容について、報道各社へどのように伝えたのか、それとも、報道各社が勝手に効果有無について判断したのか疑問。
・もし、報道発表に対する内容と各社報道機関が報道した内容に食い違いがある場合、法律的に罰せることは可能か。
・国センでは、報道発表させる際、事前に各機関の報道内容を確認しているのか。
《商品テスト部の見解》
記者説明会では、報道発表資料に基づき説明を行っている。また別途、取材を受けた報道機関に対しても同様の説明をしている。
各機関からの報道内容は、当センター以外への取材等も交えて取りまとめられていることが多く、その内容の事前確認を一方的に求めることは、憲法で保障された表現や報道の自由を制限、侵害することになるので、行っていない。
●商品テストについて
《事業者の意見》
・試験方法に公定基準や公定測定方法が存在しない中での、濃度テスト判定公表は、時期尚早であり、行政側での基準策定後による試験が望ましい。
・各社及び、外部機関が各種条件及び、各測定器メーカーの測定値に基づいて表示している水素濃度は否定するのか。否定するのであれば、商品テスト部が測定した結果が異なった会社は虚偽表示となるのか。
・商品の表示改善を主とした報道となっているが、商品を選定し調査した段階で、まずは事前勧告をする必要があるのではないか。
・商品テスト対象となる企業へは事前説明を実施後に、商品テストやアンケート収集するのが良いのではないか。
・商品テストの選定から対象企業への通知、商品テスト報告から報道機関に対する発表までの流れの正当性に疑問。
《商品テスト部の見解》
当センターでの商品テストは、テストの公平性を保つため、原則として、テスト結果がまとまった段階で対象となった銘柄の関連事業者への説明を行い、事実内容等の確認をしていただき、必要があれば修正を行った上で公表している。
この商品テストのプロセスについては、ホームページで公開している通り。
なお、当センターには事業者に対する指導の権限はない。また、標準試験法などを作成することを業務として行っている機関でもない。
商品テストの公表の流れ
http://www.kokusen.go.jp/hello/data/test.html#test_flow
事業者から多く寄せられた、対象銘柄の選定理由や、水素ガス濃度の測定方法に関する意見の内容と、国セン商品テスト部の見解が食い違っていることが読み取れます。
国センは、全国の消費生活センター等で受け付けた商品等に関わる苦情相談の解決のために、消費者の使用実態を考慮しつつ、科学的に信頼性の高い商品テストを行っています。
ですので、苦情の多い特定の事業者の指導や取り締まりを目的にしているものではありません。
この目的に照らし合わせて考えれば、「広く一般に流通している商品群の中から、ネット通販等で検索して目にする機会が多いと考えられる銘柄」という選定理由は合理的なものと言えます。
また、外部有識者によって、テスト項目、テスト方法、テストの結果の分析・評価及び公表の法的妥当性等について審議を経た上でテスト結果を公表しています。
今回の商品テストは水素濃度の測定方法に公定法がない中、商品の品質の良し悪しをジャッジするものではありません。妥当性と公平性のある測定を行いつつ、事業者に対して表示による消費者への具体的な情報提供を求めています。
国民生活センターは、消費者の味方ですが、事業者にとって「敵」ではなく、消費生活向上のための情報提供する立場と言えます。商品テストの内容を積極的に事業活動に活かしていくというスタンスを持ちたいですね。
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容器入り及び生成器で作る、飲む「水素水」
-「水素水」には公的な定義等はなく、溶存水素濃度は様々です-
(国民生活センター 2016年12月15日)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20161215_2.html
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