「消費者志向経営」がもたらす事業者への効果(メリット) (平成26年4月 「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」報告書)

消費者庁が、「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」報告書を4月に取りまとめました。
平成27年3月24日に閣議決定された「消費者基本計画」では、「事業者が消費者を重視した事業活動、すなわち消費者志向経営を行うことが健全な市場の実現につながる」ものであると位置付け、消費者志向経営を促進する方策を検討することとしました。
それに基づき、消費者庁では昨年8月より「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」が開催され、審議されてきました。

今回は、「消費者志向経営」がなぜ重要なのか、事業者にとってどのような効果があるのか、具体的な推進策についてお伝えします。

●消費者志向経営とは何か
・事業者が、現在の顧客だけでなく、消費者全体の視点に立ち、消費者の権利の確保及び利益の向上を図ることを経営の中心と位置付けること。
・その上で、健全な市場の担い手として、消費者の安全や取引の公正性の確保、消費者に必要な情報の提供、消費者の知識、経験等への配慮、苦情処理体制の整備等を通じ、消費者の信頼を獲得すること。
・さらに、中長期的な視点に立ち、持続可能で望ましい社会の構築に向けて、自らの社会的責任を自覚して事業活動を行うこと。

上記はあくまで理念ですから抽象的な表現となっています。具体的に事業者に求められる行動として、「事業者の組織体制の整備・充実」「事業者の消費者に対する具体的行動」に大別し整理しています。

●事業者の組織体制の整備・充実
・経営トップのリーダーシップの下での組織一体の取組
・コーポレートガバナンスの確保
消費者からの情報や意見・要望等を経営層に伝え、消費者の視点を考慮して経営の意思決定を行う体制の整備・強化
・従業員一人一人による消費者・顧客の視点に立った行動を根付かせるための取組の実施
・事業関連部門と品消法関連部門の有機的連携
社内での消費者関連情報の共有と活用、及び問題発生時の緊急対応・原因究明・再発防止・情報発信する体制の整備
※ 事業関連部門:商品開発部門、製造部門、営業部門等
品消法関連部門:品質保証部門、消費者及び顧客対応部門及びコンプライアンス関連部門の総称

●事業者の消費者に対する具体的行動

・消費者への情報提供の充実・双方向の情報交換
・消費者・社会の要望を踏まえた改善・開発

このような消費者志向経営の取組が進むことによって、事業者の側には次のような効果を生むと期待されます。

1)事業者の持続的成長と中長期の企業価値の向上
・事業者への消費者・顧客からの信頼が得られることで新たな顧客の獲得、ブランド価値の向上等につながる。
・消費者・顧客からの声に耳を傾け、そのニーズを的確に捉えた新たな商品やサービスの開発・改善が進む。

2)消費者トラブルの減少

・商品・サービスについての適切かつ分かりやすい表示や説明を行うと、消費者の合理的な選択が可能となり、消費者トラブルが減少する。
・消費者と事業者間の取引の適正化の進展は、社会全体の消費活動の円滑化、持続的拡大につながり、適切な取引を行う事業者にとっても事業機会の拡大につながる。

3)コンプライアンス意識の向上によるリスクの軽減
従業員と経営者のコンプライアンス意識が浸透することで、リスク情報の早期把握と問題是正につながる。事業者の幹部への迅速なリスク情報の伝達、組織内での部門横断的な連携により、危機の拡大の未然防止や、重大危機発生時の迅速な対応が可能になる。

4)従業員のモチベーションの向上
顧客から感謝される機会の増加、仕事を通じた社会貢献意識の向上等により、更なる従業員のモチベーション向上が期待できる。

消費者志向経営の取組は個別事業者による主体的な取組が基本となりますが、その普及を図るためには、社会的気運を高めるための全国的な推進活動として展開し、そのための環境整備を図ることが有効だとしています。
基本的には、事業者団体、消費者団体、及び消費者庁を始めとする行政機関により構成される組織(仮、以下「プラットフォーム」という。)を設けて推進すべきと提唱しています。

具体的な対策は以下のようなものです。

1. プラットフォームにおける参加者の情報交換
プラットフォームを構成する事業者団体、消費者団体、行政機関の参加者が、互いに有用な事例の共有、情報交換を行う。

2. 経営者層向けセミナー(トップセミナー)等の開催

経営者層向けに各種のセミナー等を開催し、先進事例の紹介や事業者間の情報共有を行い、消費者志向経営の一層の普及を図る。

3. 事業者の管理職・担当者の資質向上に向けた研修等の開催
想定される具体的な対象者:
・消費者とのコミュニケーション担当者
・品質保証部門
・コンプライアンス関連部門
・人事担当者等従業員の理解を促進する立場にある管理職・担当者
・広報部門や経営企画部門の管理職・担当者等
消費者とのコミュニケーション担当者等による、事業者の枠を超えた交流により、他事業者の類似の課題への対応状況・手法を今後の参考にする機会を提供され、各担当者自身のモチベーションの向上にもつながることが期待される。
また、あらゆる部門の従業員が、消費者問題や関係法令などの基本的な知識を習得し、消費者の視点を業務に生かすことも重要。

4. 消費者志向経営推進に向けた自主宣言・フォローアップ活動
各事業者において、消費者志向経営の実施に取り組むことを自ら宣言すること(以下「消費者志向自主宣言」という。)を呼び掛け、その取組を消費者にも分かりやすく情報提供する。
→事業者の取組状況を可視化し、消費者・社会の理解の促進と、事業者の取組の促進を図る。

消費者志向経営推進活動(仮)を推進するプラットフォームは、
・消費者志向自主宣言の呼び掛けの開始以降、1年間程度、特に集中的に、消費者志向経営推進活動(仮)の周知活動を実施する。
・消費者志向経営推進活動(仮)の開始の後、おおむね2年後から、事業者における消費者志向経営の観点から、他の事業者、消費者等に示唆を与える具体的な取組内容について、参考となる取組事例の公表や、例えば業種ごと、課題ごとに区分して、優良な取組事例の表彰等を継続的に行う。

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消費者志向経営の取組促進に関する検討会では、「消費者志向経営」に対する社会的気運を醸成し、全国的な推進活動が進展するよう、消費者団体、事業者団体、行政の関係者が積極的な取組を行うことを、強く期待している、としています。

まさにフィデスも、消費者、事業者、行政の情報の橋渡し役として、消費者志向経営の取組をサポートしていきたいと思います。

「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/consumer_oriented_management/review_meeting/
「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」報告書
http://www.caa.go.jp/information/pdf/160406_houkokusho.pdf

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。