「無料体験、キャンペーン」「効き目を強調」「無料解約、返金保証」表示に対して、購入した人の3割が後悔(消費者庁調査 2023年9月19日公表)

インターネットやSNS上の広告でよく用いられている「期間限定」や「初回無料」、「返金保証」といった宣伝文句ですが、消費者はどの程度クリックし、購入・契約、さらには後悔・トラブルといった経験をしているのでしょうか。

消費者庁が、インターネット上で購買経験がある消費者に対して、上記のような「合理的な思考が妨げられてしまうおそれのある表示」をきっかけとした商品・サービスの認知から、購入・契約、後悔・トラブルに至るまでの経験等を中心に調査を行っています。
また、消費者の属性・心理的特性等と表示内容との関係性を分析することにより、各表示内容に影響を受けやすい消費者の特性等を明らかにし、消費者それぞれの特性に合わせた効果的な注意喚起の方法を検討する、としています。
「合理的な思考が妨げられてしまうおそれのある表示」は、消費者庁が令和3年度に実施した「消費者意識基本調査」において、「SNS 上の広告で見たことがあるもの」等の設問で用いられた項目を中心に、8種類の表示項目が設定されています。
いずれも、景品表示法の有利誤認や優良誤認、定期購入の特定商取引法違反のおそれのある表示として見慣れたものです。

・見たことのあるSNS広告、「大幅値下げをうたうセール広告」が最多。違法広告に注意
(令和3年度 消費者意識基本調査)

調査結果では、消費者のおよそ6~7割が「合理的な思考が妨げられてしまうおそれのある表示」を目にしており、「無料体験、キャンペーン」「効き目を強調」「無料解約、返金保証」に関する表示に対して、購入した人の3割が後悔を経験していました。
調査より、「合理的な思考が妨げられてしまうおそれのある表示」の認知、表示をきっかけとした商品・サービスの認知、購入・契約、後悔・トラブルに至るまでの経験等に関する項目をご紹介します。

●全ての表示において60~70%の人が見た経験があると回答。表示による差は見られず
●後悔する人の多い表示、「無料体験、キャンペーン」「効き目を強調」「無料解約、返金保証」
●表示から購入・契約に至るケースが多い商品・サービスは「食料品」「保健・衛生品」
●後悔の内容、いずれの表示内容も「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」が最多


全ての表示において60~70%の人が見た経験があると回答。表示による差は見られず

インターネットや SNS を使っている際に、過去に一度でも見た経験があるかを聴取。ポピュラーな広告、販売手法であることが読み取れる。

後悔する人の多い表示、「無料体験、キャンペーン」「効き目を強調」「無料解約、返金保証」

クリックしやすく後悔もしやすい表示は無かったが、「高額サービスの無料体験やキャンペーン表示」、「効き目を強調する表示」、「無料解約や返金保証をうたう表示」の3種は、クリック経験率は少ないものの、後悔・トラブルの経験率が30%を超え、かつ比較的購入金額も高い。

クリック経験:広告表示を見たことがある人について、広告をクリックした経験
購入経験:広告をクリックしたことがある人について、その商品・サービスの購入経験
後悔経験:広告表示に惹かれて商品・サービスを購入した後、後悔やトラブルに至った経験
購入率:1万円以上の商品を購入した人の割合

グループA:
クリックする人は少ないが、後悔する人は多い

「無料体験、キャンペーン」
クリック経験:26.2%
購入経験:24.3%
後悔経験:35.7%
購入率:29.6%

「効き目を強調」
クリック経験:32.2%
購入経験:29.1%
後悔経験:33.9%
購入率:20.6%

「無料解約、返金保証」
クリック経験:24.4%
購入経験:29.8%
後悔経験:30.8%
購入率:28.1%

グループB:
クリックする人と後悔する人が共に一定数存在する

「初回無料、格安を強調」
クリック経験:37.0%
購入経験:35.3%
後悔経験:25.8%
購入率:18.1%

「人気No.1」
クリック経験:38.1%
購入経験:32.8%
後悔経験:22.3%
購入率:22.0%

「限定を強調」
クリック経験:38.9%
購入経験:32.7%
後悔経験:20.6%
購入率:26.7%

「景品、特典、キャッシュバック」
クリック経験:43.9%
購入経験:34.2%
後悔経験:17.4%
購入率:36.1%

グループC:
クリックする人は多いが、後悔する人は少ない

「大幅値下げ」
クリック経験:54.7%
購入経験:40.2%
後悔経験:14.4%
購入率:25.4%

表示から購入・契約に至るケースが多い商品・サービスは「食料品」「保健・衛生品」

表示に惹かれて実際に購入・契約に至った商品・サービスとしては、全般的に食料品や保健・衛生品が多いが、表示内容ごとに他と比べて購入割合の大きい、特徴的な商品・サービスが見られる。
表示別、購入割合の大きい特徴的な商品・サービス
大幅値下げ:衣料品(21.8%)
効き目を強調:保健・衛生品(47.9%)
無料体験、キャンペーン:保険サービス(11.4%)
景品、特典、キャッシュバック:放送・通信(11.8%)

後悔の内容、いずれの表示内容も「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」が最多

表示内容別、後悔やトラブルの内容の上位3項目は以下の通り。

大幅値下げ
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」57.0%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」25.4%、「誤った商品・サービスを購入・契約」19.3%
初回無料、格安を強調
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」48.0%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」39.8%、「表示内容と実際の商品・サービスの内容が違っていた」18.7%
限定を強調
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」46.2%、「誤った商品・サービスを購入・契約」26.9%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」25.8%
効き目を強調
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」57.1%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」27.7%、「表示内容と実際の商品・サービスの内容が違っていた」14.3%、「安全性や衛生面に問題」14.3%
無料体験、キャンペーン
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」42.7%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」33.3%、「表示内容と実際の商品・サービスの内容が違っていた」21.3%、「誤った商品・サービスを購入・契約」21.3%
景品、特典、キャッシュバック
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」43.0%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」29.0%、「表示内容と実際の商品・サービスの内容が違っていた」21.5%、
無料解約、返金保証
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」43.4%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」42.1%、「誤った商品・サービスを購入・契約」21.1%
人気No.1
「商品の機能・品質やサービスの質に不納得」56.7%、「1回だけの購入だと思っていたら、複数回の購入契約」24.0%、「表示内容と実際の商品・サービスの内容が違っていた」24.0%

本調査で取り上げられた「合理的な思考が妨げられてしまうおそれのある表示」は、インターネットやSNS上の広告において、消費者がよく目にする表示であり、特に、「高額サービスの無料体験やキャンペーン表示」、「効き目を強調する表示」、「無料解約や返金保証をうたう表示」の3種は、クリック経験率は少ないものの、一度商品・サービスの購入・契約に至ると、高い確率で後悔したりトラブルに遭遇したりすることになると推測されます。
加えて、比較的購入金額も高いことから、景品表示法の有利誤認や優良誤認、定期購入の特定商取引法違反のおそれのある表示として、今後、より一層、行政の監視が厳しくなっていくことが予測されます。

(※)
インターネット通販における表示内容と消費者の心理的特性等に関する調査
(消費者庁 2023年9月19日公表)
https://www.caa.go.jp/policies/future/project/project_013/

調査方法  オンラインアンケート調査
調査時期  2022 年 12 月 15 日(木)~21 日(水)
調査対象
 人間情報データベース(株式会社 NTT データ経営研究所が開発したデータベース)のモニターである、全国の 20 歳以上 69歳以下の男女
以下の属性が均等になることを目指し回収を行った。
・性別(男性、女性)
・年代(20 歳代、30 歳代、40 歳代、50 歳代、60 歳代)
・居住エリア(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄)
有効回答者数:5,278人
調査項目

「反応を問う設問」においては、回答者がインターネットや SNS を使っていたところ、偶然にも以前から関心があった商品に関する広告が表示されたと仮定した上で回答させる「浅慮条件」と、以前から欲しかった商品の購入を考えてインターネットや SNS で情報収集・検討をしていたところ、その商品に関する広告が表示されたと仮定した上で回答させる「熟慮条件」の2群に分け、調査を行った。

≪関連記事≫

・消費者被害を受けた販売形態の5割がネット通販。「相談・申出」先、36%が「販売店、代理店等」(令和2年度 消費者意識基本調査)

・消費者意識、4人に3人が表示確認を心掛け、現物を見て購入する人は68%(令和元年度 消費者意識基本調査)

・8割の消費者が表示確認を心掛け、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心(平成30年度 消費者意識基本調査)

・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。