消費者被害を受けた販売形態の5割がネット通販。「相談・申出」先、36%が「販売店、代理店等」(令和2年度 消費者意識基本調査)

消費者の意識や行動、トラブル経験を理解することは、事業者においてマクロな視点でのマーケティング活動や顧客体験(CX)向上の指針を得ることにつながります。

消費者庁では、消費者問題の現状や求められる政策ニーズを把握し、消費者政策の企画立案にいかすことを目的に、平成24年度より「消費者意識基本調査」を実施しています。 令和2年度調査より、日頃の消費生活での意識や行動、消費者事故・トラブルの経験、申し出行動に関する項目をピックアップしてご紹介します。

●日頃の買物で意識していること
●購入商品や利用サービスでの消費者被害の経験
●被害を受けた商品・サービス
●被害を受けた商品・サービスの販売・購入形態
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出の有無
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出をした相手

●買い物で意識しているのは、「レジ袋をもらわない」が75%
日頃の買物について、「意識している(『かなり意識している』+『ある程度意識している』)の割合が最も高いのは、「レジ袋をもらわない」が74.7%(前年度56.2%)で、8.5ポイント上昇した。
次いで「ごみを減らし、再利用やリサイクルを行う」60.8%(前年度63.4%)、「弁当・総菜などを購入するときに不要なフォーク・スプーンをもらわない」59.4%(前年度63.5%)で、前年度から低下した。

一方、「意識していない(『あまり意識していない』+『ほとんど・全く意識していない』)」の割合が高い順にみると、「フェアトレード商品(※)を選ぶ」が54.2%(前年度49.8%)と最も高く、次いで「社会貢献活動に熱心な企業のものを選ぶ」50.3%(前年度45.4%)、「環境に配慮されたマークのある食品・商品を選ぶ」38.2%(前年度32.3%)の順。いずれも前年度から意識が低下している。

※フェアトレード商品とは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に取引された商品のこと。

●商品や利用したサービスに対する期待とのギャップに被害意識
この1年間に購入した商品や利用したサービスについて、消費者被害の経験をした人の割合が高い内容は、「商品の機能・品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」9.3%、次いで「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」5.2%、「思っていたよりかなり高い金額を請求された」(3.3%)の順。

前回調査と比較して、「ある」の割合は「商品の機能・品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」(7.4%→9.3%)が1.9ポイント増加。

●被害を受けた最多商品「保健衛生品」前年度比20.3ポイント増、最多サービス「放送・通信」前年度比4.9ポイント減少
被害事例数776件のうち「商品に関するもの」の品目では、「保健衛生品(薬、メガネ、電気治療器、化粧品、シャンプー、美容器具、殺虫剤、ちり紙等)」が最も高く27.7%、次いで「衣料品(洋服、下着等)」(9.5%)、「住居品(洗濯機、ミシン、掃除機、洗剤、冷暖房機器、カーテン、照明器具、消火器等)」(6.6%)の順となっている。

前回の調査結果と比較して、「保健衛生品(薬、メガネ、電気治療器、化粧品、シャンプー、美容器具、殺虫剤、ちり紙等)」(7.4%→27.7%)が20.3ポイント増加。

「サービスに関するもの」の品目では、「放送・通信(テレビ、電話、インターネット等)」が最も高く4.5%。

前回の調査結果と比較して、「放送・通信(テレビ、電話、インターネット等)」(9.4%→4.5%)が4.9ポイント、「外食・食事宅配」(5.7→1.4%)が4.3ポイント、それぞれ減少。

●被害を受けた販売形態、「通信販売(インターネット取引)」50%、「店舗」25%
被害事例数776件を販売・購入形態別に分けたところ、「通信販売(インターネット取引)」の割合が最も高く50.1%、次いで「店舗」(25.1%)となっている。

なお、今回調査から「通信販売」のカテゴリーを、(インターネット取引)と(インターネット取引を除く)」に分けている。
過去の調査結果は、以下の図のとおり。
前回の調査結果と比較して、「店舗」(38.2%→25.1%)が13.1ポイント減少している。

●トラブル経験者の内、「相談・申出」した人は38%
相談又は申し出の有無別では、「した」の割合が 38.4%、「誰にもしていない」が46.4%となっている。
前回の調査結果と比較して、「相談又は申出を『した』」(44.8%→38.4%)が6.4ポイント減少。

●トラブル「相談・申出」先トップは「家族、知人、同僚等の身近な人」と「販売店、代理店等」。「メーカー等」は減少
相談又は申出をした被害事例(298件)について、「相談又は申し出をした相手」は、「家族、知人、同僚等の身近な人」と「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店等」の割合が同率で35.9%と最も高く、次いで「商品やサービスの提供元であるメーカー等の事業者」(29.9%)の順となっている。
「市区町村や消費生活センター等の行政機関の相談窓口」の割合は8.4%にとどまる。

前回の調査結果と比較してみると、「販売店、代理店等」(28.2%→35.9%)が7.7ポイント増加、「家族、知人、同僚等の身近な人」(43.6%→35.9%)が7.7ポイント、「メーカー等」(37.5%→29.9%)が7.6ポイントそれぞれ減少。

コロナ禍の影響でネット通販利用が拡大する中、被害を受けた販売形態の5割をネット通販が占める状況となりました。被害経験として、商品の機能・品質やサービスの質に対する期待とのギャップに被害意識を持つ人の割合が高まっています。現物確認ができない通販だからこそ、消費者目線での丁寧な情報提供が求められるといえるでしょう。

また、被害の「相談・申出」先として36%の人が、「販売店、代理店等」を挙げています。顧客対応窓口の対応品質の重要性が一層高まっているといえるでしょう。

(※)

消費者意識基本調査(消費者庁 令和2年度実施)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002/

調 査 項 目

(1)「新しい生活様式」下の意識や行動について
(2)「消費者事故・トラブル」について
(3)日頃の生活における行動や意識について
(4)「消費者政策への評価」について

調査対象

母集団:全国の満 15 歳以上の日本国籍を有する者
標本数:10,000 人
地点数:400 地点(376 市区町村)
抽出法:層化2段無作為抽出法

調査時期  令和2年11月11日~11月30日

調査方法  郵送配布、郵送回収(WEB 回答併用)

有効回収数(率):5,817 人(58.2%)

≪関連記事≫

・消費者意識、4人に3人が表示確認を心掛け、現物を見て購入する人は68%(令和元年度 消費者意識基本調査)

・8割の消費者が表示確認を心掛け、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心(平成30年度 消費者意識基本調査)

・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。