消費者庁、デジタル広告の証拠収集、ヘルスケア関連商品の性能・効果検証体制強化(消費者庁 令和4年度第2次補正予算案)

これまで法的措置が及びにくかったデジタル広告や、コロナ禍での空間除菌剤、健康食品などヘルスケア関連商品の不当表示に対する法執行が引き続き強まる見込みです。

消費者庁は11月8日に発表した令和4年度の2次補正予算案において、デジタル広告の不当表示対応として、5,000万円を計上しました。
また、ヘルスケア関連商品に関する不当表示対応として、健康食品や除菌関連商品等の性能・効果の科学的根拠について調査・検証を行う事業を2,000万円追加要求しています。この事業は、令和3年度補正予算で計上(4000万円)し、令和4年度はその補正予算の繰越しにより予算執行されており、令和5年度以降も事業を継続する必要があるとしています。
いずれも、事業担当は景品表示法などの執行を行う消費者庁表示対策課です。

取り締まり強化の背景と具体的な方向性を確認します。


デジタル広告の不当表示に対応するための執行体制強化(5,000万円)

アフィリエイト広告、ステルスマーケティングと言った高度なデジタル広告の不当表示に対応するべく、法執行能力向上のための体制強化を求めています。
具体的には、令和3年度に導入されたWebサイト差分チェックツールによる表示内容・状況の速やかな確保・保存や、立入検査により事業者が保有するPC・サーバ等のデータを収集し、これを保全・復元する機材の導入といったものです。
消費者庁は本事業の必要性として、以下を指摘しています。

●物価上昇下における有利誤認表示への重点的かつ緊急的な対応
物価上昇の影響により、商品やサービスの価格をお得に見せかけるような価格表示(例えば、「期間限定価格」、「追加料金不要」、「お買い得品」などの表示)がなされるおそれがあり、有利誤認認表示として景品表示法上の問題となる。

●不当なデジタル広告に対する効果的な証拠収集のための体制整備の必要性
デジタル広告市場拡大とともに景品表示法の執行もデジタル広告の割合が年々増加。
(R元:65% → R2:73% → R3:85%)
複雑・巧妙化したデジタル広告の効果的な証拠収集のための体制整備(デジタルフォレンジックチームの構築・当該チームで用いる専門機器の導入)等が必要。

  • 近年のデジタル広告の中には、意図的に短期間で表示を消失させたり、特定の環境・時間のみでしか表示させないなど、従来の広告に比べ手法が複雑・巧妙化(質の変化)している。
  • 刻一刻と変化するデジタル広告では、一般消費者からの情報提供時や端緒情報の自発的収集(職権探知)の時点において、正に今行われている表示内容・状況を速やかに確保・保存することが極めて重要。立入検査においても、証拠収集が困難な状況。

本事業によって、より精度が高い端緒情報やこれまで収集できなかった証拠を収集することが可能となり、景品表示法上の行政処分のより効果的・効率的な執行が期待されています。

(令和4年度補正予算案事業 参考資料より引用)

ヘルスケア関連商品に関する不当表示の効能・効果検証事業(2,000万円)

コロナ禍におけるヘルスケア関連商品に関する不当表示取締りに必要な、性能・効果検証を行う体制の強化・充実化を図ることを引き続き求めています。
具体的には、性能・効果の検証業務について、外部の研究機関や民間検査機関等へ委託を拡大するというものです。
消費者庁は本事業継続の必要性として、以下を指摘しています。

●依然多い空間除菌用品の不当表示
コロナ禍において、新型コロナウイルス感染症への効果を標ぼうする健康食品や除菌関連商品等の景品表示法や健康増進法に違反する事案が増大した。
国民の予防意識は定着し、ウィズコロナ時代においても、依然として空間除菌用品等の不当表示は多い。
※令和3年度の景品表示法措置件数に占める除菌用品等の割合は約30%(41件中12件)。そのほか行政指導48件、改善要請82件。

《関連記事》
・令和3年度における景品表示法の運用状況(消費者庁)
措置命令の多かった商品役務は、前年度に引き続き「保健衛生品」で12件

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・消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第6弾)。健食の「ウイルス予防効果」を認めない根拠は? (消費者庁  2021年12月~2022年2月)

●機能性をうたう商品の不当表示の効果的な取締りの重要性
いわゆる健康食品の発売が増え、機能性表示食品の届出件数は年々増大している(2021年の合計届出件数5000件超)。
そのような中で、例えば、高齢者をターゲットにした認知機能に関する機能性を標ぼうする商品等、機能性表示を逸脱するような不当表示が増えている。
※令和3年度において、認知機能の機能性表示に関して112 事業者に改善要請。
健康食品への消費者の関心が高まる中、機能性をうたう商品の不当表示の取締りを効果的に行うことが重要。

《関連記事》
・認知機能の機能性表示食品に対するネット広告監視。約6割の商品のネット広告が改善指導の対象に(消費者庁  2022年3月31日)

●不当表示の調査、行政措置に必須となる「性能・効果の科学的根拠についての検証」
ヘルスケア関連商品に関する事案の調査に当たっては、相手方から提出された性能・効果の科学的根拠について検証を行う必要がある。

  • 現状、検証を依頼している国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(栄養研)への依頼を令和5年度以降も継続。
  • 必要に応じて、試験方法の選定のための専門家へのヒアリング等を民間検査機関等へ依頼する
(令和4年度補正予算案事業 参考資料より引用)

本事業によって、景品表示法・健康増進法の違反事件調査に要する期間を削減させ、調査を効率化することにより、不当表示・虚偽誇大表示による消費者の被害を減少させる効果が期待されています。

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◆消費者庁 令和4年度補正予算案について (消費者庁:令和4年11月)
 https://www.caa.go.jp/policies/budget/assets/policies_budget_221108_0001.pdf
 令和4年度補正予算案事業 参考資料
 https://www.caa.go.jp/policies/budget/assets/policies_budget_221108_0002.pdf
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デジタル広告の不当表示対応については、消費者庁は令和5年度予算要求においても監視・情報収集業務として2憶2千万円を計上しており、法のすり抜けが困難になっていくことが予想されます。
ヘルスケア関連商品に関しては、不実証広告規制対策として、商品の効能効果訴求を支える根拠データの妥当性や試験設計がますます重要となります。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。