未成年者の「詐術」の判断基準「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。(経済産業省 平成26年8月)

前回は、経済産業省で8月8日に公表された「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(※)」の11回目の改訂から、以下を取り上げました。

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【1】消費者の操作ミスによる錯誤に関する論点の修正
・最終確認画面を表示しない場合について、電子契約法第3条ただし書の「確認を求める措置」として十分であるかに関する追記。
・「確認を求める措置」を要しない旨の「意思の表明」を消費者が行う場合における、クリックの法的効果に関する追記。
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今回は【2】未成年者による意思表示に関する論点の修正
を取り上げます。

【2】未成年者による意思表示に関する論点の修正

経緯:
近年のオンラインゲーム等の普及に伴って未成年者による高額利用トラブルが増加して
いることを受け、以下の内容を追記しています。

・未成年者のうち幼年者等の意思無能力者が申込みを行った場合には、意思無能力により契約は無効となる。 (準則 i. 56 頁)
(脚注)
意思能力は、自己の行為の結果を判断することのできる能力であり、意思能力があるといえるには、一般的には7~10歳程度の知力があれば足りるとされるが、あくまで当該行為者について個別具体的に判断される。

・未成年者が取引の相手方に対して、成年者であると誤信させるために「詐術を用いた」といえるかの判断についての記載。(準則 i. 61 頁)

未成年者が取引の相手方に対し、成年者である又は法定代理人の同意があると誤信させるために詐術を用いた場合には、その意思表示を取り消すことができません。(民法第21条)

取り消すことができない(詐術に当たる)可能性のある例:
・「未成年者の場合は親権者の同意が必要である」旨、申込み画面上で明確に表示・警告したうえで、申込者に年齢又は生年月日の入力を求めているにもかかわらず、未成年者が、自己が成年になるような虚偽の年齢又は生年月日を入力した場合

その結果、事業者が相手方を成年者と誤信した場合等には、未成年者が「詐術を用いた」ものと評価できる可能性があるとしています。

(脚注の追記)
当該事例は、判断の方向性・可能性を示したものにとどまり、事例に記載された事実に加え他の判断要素も考慮して個別具体的に「詐術を用いた」といえるかを判断する必要がある。

(今回改定)
「詐術を用いた」といえるかについては、画一的な判断ができるものではない。未成年者が詐術を用いたと認められるか否かは、単に未成年者が成年者を装って生年月日(又は年齢)を入力したことのみにより判断されるものではなく、当該未成年者の年齢、商品・役務の性質、商品の対象者、事業者が設定する年齢入力のための画面の構成等の個別具体的な事情を考慮した上で実質的な観点から判断されるものと解される。

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(※)
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」とは
電子商取引、情報財取引等をめぐる現行法の解釈の指針となるもの。
電子商取引、情報財取引等に関する様々な法的問題点について、民法をはじめとする関係する法律がどのように適用されるのかを明らかにすることで、取引当事者の予見可能性を高め、取引の円滑化に資することを目的として、学識経験者、関係省庁、消費者、経済界などの協力を得て、経済産業省により平成14年3月に策定された。
電子商取引、情報財取引等をめぐる取引の実務、それに関する技術の動向、国際的なルール整備の状況に応じて、今後も柔軟に改訂していく予定。
経済産業省では改訂に向けた事業者からの意見を随時受け付けています。

【意見送付先】
住所:〒100-8901
東京都千代田区霞が関 1-3-1
経済産業省商務情報政策局情報経済課
FAX 番号:03-3501-6639
電子メールアドレス:ecip-rule@meti.go.jp
※件名は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則についての意見」としてお送りください。

≪参考資料≫
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました
(経済産業省 平成26年8月8日)
http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140808003/20140808003.html

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。