健康食品124製品のうち98製品に表示違反の疑い(2024年度東京都健康食品試買調査)

東京都では、毎年、法令違反の可能性が高いと思われる健康食品の試買調査(販売店、インターネット通信販売)を行い、不適正な表示・広告を行った事業者に対し改善等を行っています。
成分検査による医薬品成分の検出も確認しています。

2024年度の調査では、「血流改善」「免疫力アップ」など医薬品的な効能効果の標ぼうや「頭髪の悩みを根本から改善する」「化学物質・汚染物質・添加物・ウイルス・細菌などを吸着し体外に排出」など優良誤認に該当するおそれのある表示が指摘されています。

広告表示違反の傾向について、確認してみましょう。

———
令和6年度健康食品試買調査結果
健康食品の不適正な表示、広告にご注意ください
(2025.3.25 東京都福祉保健局生活文化局)https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/03/2025032511
———


ネット購入85製品の89%(76製品)で法令違反の疑い、前年より9ポイント改善

表示・広告では、今回調査で購入した健康食品124製品のうち98製品で、試買品目数の79%に製品表示や広告に法令違反又は違反の疑いあり。
購入方法別では、販売店購入39製品中22製品(56%)、ネット購入85製品中76製品(89%)が不適正な表示・広告となっている。

医薬品成分検査では、3製品からタダラフィルを、1製品からアミノタダラフィル、クロロプレタダラフィル、イカリイン、マグノフロリンの医薬品成分が検出された。

違反が多い製品「美白、美容、美肌」「男性機能向上」「ダイエット効果」「抗糖化・エイジングケア」「免疫力増強」

注目されている製品テーマ(法令違反の可能性が高いと思われる製品の多いもの)として、「美白、美容、美肌」(19製品)、「男性機能向上」(18製品)、「ダイエット効果」(16製品)、「免疫力増強」(15製品)、「抗糖化・エイジングケア」14製品)となっている。

購入方法別では、販売店では「美白、美容、美肌」(10製品)、ネットでは「男性機能向上」(13製品)、「ダイエット効果」(10製品)「免疫力増強」(10製品)が多くなっている。

違反が多い製品は、「美白、美容、美肌」15製品)、「ダイエット効果」(13製品)、「男性機能向上」(12製品)、「抗糖化・エイジングケア」(11製品)となっている。

表示違反が多い法律は、薬機法、景品表示法、特定商取引法

表示違反が多い法律は、医薬品医療機器等法が77件と突出している。次いで、特定商取引法40件、食品表示法(保健事項)35件、食品表示法(衛生事項)34件、景品表示法32件となっている。

製品テーマ別では、主に以下の法律での違反が目立つ。
美白、美容、美肌:医薬品医療機器等法、食品表示法(衛生事項)、特定商取引法
男性機能向上:医薬品医療機器等法
ダイエット効果:医薬品医療機器等法、食品表示法(衛生事項・保健事項)、景品表示法
免疫力増強:医薬品医療機器等法、特定商取引法
抗糖化・エイジングケア:医薬品医療機器等法、食品表示法(保健事項)、景品表示法、特定商取引法

【製品についての不適正な表示・広告の事例】
健康増進法(健康保持増進効果等の虚偽誇大表示):
・著しく事実に相違する又は人を誤認させるおそれのある表示
製品同封の広告に、当該製品を摂取することで、健康保持増進効果等が期待できる表現。
「毛細血管の強化、血流改善効果、LDLコレステロールの低下、抗アレルギー作用、免疫力アップ、腸活などの効果がある」等

景品表示法:
・優良誤認に該当するおそれのある表示
表示内容を裏付ける合理的根拠がない場合など、その商品が実際のものよりも著しく優良であるかのように消費者の誤認を招くおそれのある表示。
「頭髪の悩みを根本から改善する」「化学物質・汚染物質・添加物・ウイルス・細菌などを吸着し体外に排出」等

客観的な実証のない場合など、その商品が他社の商品よりも優れているかのように消費者の誤認を招くおそれのある表示。
「顧客満足度No.1」「ユーザー満足度96%」等

医薬品医療機器等法:
・疾病の治療又は予防を目的とする効能効果に該当
「動脈硬化の予防」「ニキビ予防」「ドライアイの改善」 「眼精疲労の改善」「かゆみ改善」
「月経前症候群」 「抗アレルギー」「抗炎症」

・身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効能効果に該当
「疲労回復」「血流改善」「免疫力アップ」「サーチュイン遺伝子の活性化」「血液浄化」「脳活性」
「肌細胞再生」

【法令で義務付けられている表示についての不適正な事例】
食品表示法(容器包装の表示):
・原材料と添加物が明確に区分されていなかった。
食品衛生法で既存添加物とされており、添加物として表示が必要な物質を、原材料に混在して表示していた。
・原料原産地が表示されていなかった。
加工食品の重量順第一位の原材料に原料原産地表示がなかった。
・表示が欠落していた。
容器包装に一括表示がなかった。
・内容量が欠落していた。
一括表示中の内容量表示がなかった。
・栄養成分表示が正しく表示されていなかった。
「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」の単位が「g」表示ではなく「mg」と、「食塩相当量」の単位が「g」表示ではなく「mg」と、誤って表示されていた。
「ビタミンCが豊富なため」と栄養表示をしようとしているが、栄養成分表示がなかった。

特定商取引法(通信販売広告の表示):
・インターネット通販の広告画面において、送料や返品に関する事項(返品の可否、返品の期間等の条件、返品送料の負担の有無)などの通信販売広告に表示すべき事項が、わかりやすく表示されていなかった。
・インターネット通販の最終確認画面(注文確定となる画面)に表示すべき事項のうち、返品や解約に関する事項、商品の引渡回数や時期などが、容易に確認できるように表示されていなかった。


不適正な表示・広告を行った事業者に対しては改善等を指導しており、他の自治体が所管する事業者については当該自治体に通報し、指導等を依頼しています。
他にも東京都では、インターネット広告表示監視事業により発見された不当表示に対して改善指示を行ったり(※)、消費者庁では、国と地方、地方の間での調査情報、被疑事案情報の共有を図ることを目的とした『景品表示法執行NETシステム』を、2012年4月から運用しています。

(※)
東京都令和5年度ネット広告(年間16,000件)監視 153通販事業者に改善指導!6年度はSNS広告監視強化

<関連記事>

・2023年度健康食品試買調査結果 (東京都)

・2022年度健康食品試買調査結果 (東京都)

・2021年度健康食品試買調査結果 (東京都)

・2019年度健康食品試買調査結果 (東京都)

・平成30年度健康食品試売調査結果(東京都)

・東京都サイバー薬事監視の取組(1)【ネットショッピングモール(B to C)編】

===================================
◆フィデスの美・健広告法務オンライン講座◆
法律を「知っている」から、実務で「判断」「活用」
できるコンプライアンス対応力向上を図ります。
詳細はこちら
===================================

===================================
◆フィデスの広告法務コンサルティング◆
消費生活アドバイザーが、貴社の広告コンプライアンス
体制構築をサポートします。
詳細はこちら
===================================

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの更新情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————

関連記事

  1. 通販広告実態調査、不適正広告事例解説(JADMA「2020年度 通販広…

  2. カラコンの安全性確保 消費者庁が厚生労働省に対し、事業者指導・調査要請…

  3. 健康食品の通販、化粧品の連鎖販売取引に多い特商法違反。平成28年度の東…

  4. 消費者庁 健康食品広告ネット監視127事業者(152商品)の表示に改善…

  5. H25下半期JAS法違反「指導件数」 前年同期比ほぼ横ばい。水産物は増…

  6. 法改正の背景にある社会問題を知ってビジネスチャンスに。《2022年の広…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

最近の記事

2025年5月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。