SNSの販売促進ツール活用に対する監視の目が強まりそうです。
最近、特に情報商材でのSNSが関連する消費者トラブルが多いとされていますが、それ以外の商材でも注意喚起や行政処分が出されています。
行政処分としては、若者に対してマッチングアプリやSNSなどを通じたマルチ商法への勧誘を行ったとして、22年10月14日に、連鎖販売業者日本アムウェイ合同会社に対し、特定商取引法に基づく取引等停止命令(6か月)の処分が出されました。
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連鎖販売業者【日本アムウェイ合同会社】に対する行政処分について
(消費者庁 2022年10月14日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/030531/
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消費者安全法での注意喚起では、高校生をターゲットとした「クラスTシャツ」でのSNS広告やLINEのみでの注文受付が問題視されています。
・「クラスTシャツ」の納品遅れに消安法の注意喚起。SNSの販促ツール活用に注意(消費者庁 2022年10月27日)
SNSの急速な普及に伴って消費生活相談が増加している状況を受け、22年9月に消費者委員会より「SNSを利用して行われる取引における消費者問題に関する建議」及び意見が発出されています。
本建議は、SNSを利用して行われる取引における消費者問題への対応等について、8月に取りまとめられた「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ報告書」を踏まえ、早急に対応すべき点を上申しています。
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消費者委員会 2022年9月2日
SNSを利用して行われる取引における消費者問題に関する建議
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2022/0902_kengi.html
SNSを利用して行われる取引に関する消費者委員会意見
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2022/0902_iken2.html
デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ報告書
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2022/houkoku/202208_digital_houkoku.html
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今回は、SNS の利用状況や関連する消費生活相談の現状、今後、SNSの販売促進ツール活用に対して強化される見込みの法執行・法規制について、上記、消費者委員会の報告書及び建議よりポイントを確認します。
【SNS の利用状況】
年々増加するSNSの利用率。幅広い年代にコミュニケーションツールとして一般化
ユーザー同士の交流やコミュニケーションを主な目的とするサービスの中で最も利用されているのはLINE(90.3%)、次いでTwitter(42.3%)、Instagram(42.3%)、Facebook(31.9%) と続く。
若年層に限らず、高齢者も利用しており、幅広い年代にSNSが浸透している。
事業者による販売促進ツールとしても広く使用されている
SNS に表示された広告をきっかけとして商品・サービスを購入した経験は SNS 利用者の4割以上。30代、50代で5割に上る。
一方で、SNS 上の広告をきっかけとした商品・サービスの購入に関して、トラブルや困った経験がある消費者は14.4%。
SNS関連の消費生活相談件数は年々増加。2021年は5万件
これに伴い、SNS関連の消費生活相談件数も年々増加し、2021年には合計で約5万件の相談が寄せられている。
年齢層別に見ると、20 歳代が最も多いが、40 歳代、50 歳代でも多くの相談が寄せられており、幅広い年齢層において、SNS に関連するトラブルが発生している、
PIO-NETに登録された消費生活相談情報によると、SNSに関連する消費生活相談には、「①SNS での広告がきっかけとなるトラブル」、「②SNS での勧誘がきっかけとなるトラブル」「③SNS 上で知り合った相手との個人間取引のトラブル」という3つのケースが見られる 。
【今後、SNSの販売促進ツール活用に対して強化が見込まれる法執行・法規制とは】
「SNSを利用して行われる取引における消費者問題に関する建議」において、3つの事項が掲げられています。
- SNSのメッセージを含むインターネットを利用した広告表示に対する法執行の強化
- 電話勧誘販売に該当する場合の解釈の明確化及び周知
- 消費者への注意喚起及び関係事業者等への情報提供
1.SNSのメッセージを含むインターネットを利用した広告表示に対する法執行の強化
1)SNSのメッセージによる広告表示を含め、特定商取引法第11条(表示義務)及び第12条(誇大広告等の禁止)などの通信販売に関する規定の執行強化。
SNSのメッセージについては、電子メールと同様に、URLを表示すること等により紹介しているサイト(リンク先)を一体として、通信販売についての「広告」に該当し得る。
通信販売の広告において、「住所」は「現に活動している住所」、「電話番号」は「確実に連絡が取れる番号」を記載することを要するが、記載されている住所や電話番号によっても、事業者との連絡が取れないため、消費者被害の救済が図れないケースがある。
SNSのメッセージを利用した情報商材や転売ビジネスの消費者被害に関し、勧誘メッセージにおける、虚偽・誇大な広告・表示等に関するものが含まれている。
2)SNSのメッセージから契約に至る場合において、特定商取引法第11条の表示義務事項を消費者がSNSのメッセージ上で容易に認識できる場所に表示させることの徹底。
情報商材等の事案では、例えば、クレジットカード決済が利用される場合「SNS→SNS上にリンクされたURLをタップ→決済代行業者のサイトでカード情報の入力」という経過をたどって申込みに至るケースもある。
上記のように、SNSのメッセージから契約に至る場合において、SNSを端緒として販売を行う事業者は、表示義務事項を消費者がSNSのメッセージ上で容易に認識することができる場所に表示する。
3)形式的な契約当事者以外の第三者による不当な広告や勧誘について、特定商取引法の執行を強化する。
事業者が販売業者等と連携共同して事業を行っていると認められるのであれば、その事業者は「販売業者等」として特定商取引法の規制を受けるとされている。また、契約当事者以外の事業者(処分例では、他の販売業者等と連携共同して通信販売を行っていた統括事業者等)についての執行実績もある。
4)特定商取引法上の執行とともに消費者安全法上の注意喚起を行う運用に限らず、関係する法制度を連携させた運用を図る。
なお、消費者委員会では、「通信販売ではあるが、積極的な勧誘がなされる類型については、SNSのメッセージによる勧誘と電話による勧誘の類似性を念頭に置きつつ、勧誘規制等を引き続き調査、審議等を行っていく」としています。
2.電話勧誘販売に該当する場合の解釈の明確化及び周知
情報商材等の消費者トラブルでは、当初の契約に加えて更に高額な契約を勧誘する事例や、WEB会議ツールによる勧誘事例など、新たな手口やツールを利用して勧誘を行う取引が出現しており、電話勧誘販売に該当すると考えられる場合であっても、販売業者等が電話勧誘販売の該当性を認めないケースがある。
そのような場合に、消費生活センター等における消費者トラブルの解決に資するため、電話勧誘販売に関する解釈を事例に即して分かりやすく、販売業者等のみならず、関係事業者(クレジットカード会社等)、関係団体(消費生活センター等)に対し周知する。
3.消費者への注意喚起及び関係事業者等への情報提供
消費者被害の発生又は拡大の防止を図るため、消費者安全法を活用し、SNSのメッセージを利用した消費者事故等の発生に関する情報について、消費者への積極的な注意喚起を行うとともに、関係事業者等(SNS事業者等)にわかりやすい形で情報提供する。
販売業者等に加えて、背景に存在し関与していた事業者名も併せて公表する等、幅広く事業者等に関する情報提供を行ったり、具体的な手口や画面例を掲載するなど、注意喚起の方法を工夫することが求められる。
SNS等をビジネスモデルとして成り立たせているのが、ユーザーの行動履歴を中心としたデータでありそれを用いた広告であるという側面からも、行政及び関係団体とSNS事業者が連携し、事業者の自主的取組による消費者被害防止が求められています。
≪参考記事≫
・見たことのあるSNS広告、「大幅値下げをうたうセール広告」が最多。違法広告に注意(令和3年度 消費者意識基本調査)
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