認知機能の機能性表示食品に対するネット広告監視。約6割の商品のネット広告が改善指導の対象に(消費者庁  2022年3月31日)

消費者庁は、認知機能領域の機能性表示食品に対するネット広告表示の一斉監視を行い、3月31日に公表しました。

今回の監視では、機能性表示食品の届け出後の「事後チェック指針」に基づき、景品表示法(優良誤認表示)、健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)の観点から、115社の131商品にインターネット広告について、表示の改善指導が出されました。
また、改善要請の対象となった事業者が出店していたショッピングモール運営事業者に対して、情報提供も行っています。

認知機能領域の機能性表示食品は、2022年2月末時点で223商品が販売されており、その約6割の商品のネット広告が改善指導の対象になったことになり、業界では大きな波紋を呼んでいます。
今回の一斉監視の目的と指導内容について確認します。

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認知機能に係る機能性を標ぼうする機能性表示食品の表示に関する改善指導及び一般消費者等への注意喚起について
(消費者庁 2022年3月31日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/028137/
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機能性表示食品の「事後チェック」とは

機能性表示食品制度は、国の事後チェックを前提とした制度です。
トクホや特別用途食品のような許可制ではなく、企業の責任において届け出ることで食品の機能を表示できる制度であることから、国として、届け出られた食品の事後的な確認及び監視執行が行われることとなっています。
これまで、消費者庁では「機能性関与成分の分析方法の検証」「機能性関与成分に関する検証(買上調査)」を行っています。

また、機能性表示食品の届出・広告について、景品表示法や健康増進法による事後規制の透明性を高めて、事業者の自主点検や業界団体による自主規制の円滑化を図ることを目的に、消費者庁では「事後チェック指針」(※)の運用を2020年4月から始めています。

(※)
機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針(2020年3月24日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_200324_0003.pdf

当該指針では、機能性表示食品の科学的根拠に関する事項のほか、広告その他の表示上の考え方等を定めています。後者について、景品表示法等の法令上問題となるおそれのある表示事項として、以下のポイントで重点的な事後チェックを行っています。

(1)解消に至らない消費者の健康上の不安や悩み等の例示
(2)届出された機能性の範囲を逸脱した表示
 ・許可成分以外の成分を強調した表示
 ・医薬品的効果効能の標ぼう
 ・対象者範囲を逸脱した表示
(3)実験結果及びグラフの過大表示
(4)医師や専門家等の不適切な推奨等
(5)体験談の不適切使用
(6)届出表示又は資料の一部を引用した過大な強調表示
(7)No.1 表示等の不適切使用
(8)国の評価、許可等を受けたものと誤認される表示

太字の事項が、今回の改善指導で指摘された表示事項となっています。

3事業者は景表法と健増法、112事業者は健増法のみの観点から指導

景品表示法及び健康増進法に基づく改善指導となった3事業者(3商品)に対しては、「物忘れや認知症の治療又は予防効果等の医薬品的効果効能が得られるかのような表示」について、特に優良誤認の観点から直接電話による指導を行っています。

《改善要請を受けた表示》
「認知症予防の救世主〇〇大学教授監修」
「2025 年には 65 歳以上の5人に1が認知症に」
「認知症は物忘れだけではありません!、トイレ で用を足せない、徘徊する、暴言を吐く、幻覚を見る、異性に抱きつく、暴力を振るう、不潔なままでいる、認知症の原因は40代から始まっている!」
「認知症の代表的疾患であるアルツハイマー病は、記憶をつかさどる海馬の萎縮が脳全体で起きることにより発症」
「海馬の委縮は、脳細胞を死滅させてしまう『アミロイドβ』というタンパク質が40代から数十年かけて脳に蓄積していくことで引き起こされる。そのため、認知機能を維持しておくには少しでも早めの対策が必要。」
「認知症は早めに対策すれば発症や悪化を防げる」
「アルツハイマー病モデルマウスが野生型マウスと同程度まで記憶障害が改善」

他方、健康増進法のみに基づく改善指導となった112事業者(128商品)に対しては、「届出された機能性の範囲を逸脱した表示」として、必ずしも商品の優良性に結び付かなくとも、健康保持増進効果について事実誤認となる部分を取り出して、メール、書面による指導を行ったとしています。

問題となった表示事項として、「届出された機能性の科学的根拠が得られた対象者の範囲が限定されているにもかかわらず、当該対象の範囲外の者にも同様の機能性が期待できるものと訴求する表示」が挙げられています。

また、どちらの指導対象事業者においても共通して、以下の表示事項が問題となっています。

「届出表示の一部を切り出して強調することで、届出された機能性の範囲を逸脱した表示」
「機能性表示食品を摂取しても解消に至らないにもかかわらず身体の組織機能等に係る不安や悩みを列挙した表示」
「届出表示の内容について、消費者庁の許可や承認を受けているかのような表示」
「実験結果及びグラフを用いることにより、届出された機能性の範囲を逸脱した表示」

監視指導の背景に、認知機能に関する届け出内容を逸脱した誤認表示の氾濫

消費者庁は、認知機能に関する機能性が監視テーマとなった背景を以下のように説明しています。

  • 認知機能は記憶力、言語能力、判断力など、様々な機能があるとされているが、その作用領域が限定されているにもかかわらず、あらゆる認知機能に効果があるかのような表示や、届け出において対象者が限定されているにもかかわらず、その範囲を逸脱しているような表示がなされている。
  • 認知機能が改善できることを強調した誇大広告では、認知症や物忘れが予防・改善できるものと一般消費者に誤認されやすく、そのような誤認が生じた場合、適切な診療等の機会を逸してしまうおそれがある。

このような状況を踏まえ、誤認表示の排除と消費者への注意喚起を行うためにスピード感のある行政指導を行ったとしています。一斉監視は2月に実施。指導は3月、要請文書で4月8日までに改善を求めています。

(措置命令の)行政処分を行うには、訴訟にも耐えうる証拠に基づく事実認定が必要になる。すなわち時間がかかる。ある意味問題となる表示が広がっている状況を踏まえ、何よりスピード感を優先し、行政指導を行った。(行政指導は)相手方の任意を前提とし、法的効果があるものではない。だが、まずは行政指導の結果を公表し、かつ、消費者に注意喚起を行うという政策判断を優先させた。

(表示対策課 南雅晴課長による記者会見 2022年3月31日)

機能性表示食品広告に対する景品表示法の措置命令は、2017 年に葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とした機能性表示食品の販売事業者16社に対し出されましたが、その後の処分は2021年度までは出されていません。

・「葛の花」16社に、機能性表示食品で初の景表法措置命令。届出内容と表示の整合性
(消費者庁:平成29年11月7日)

一般消費者への注意喚起では、物忘れや認知症の治療又は予防に根拠のあるサプリメントや特定の食品はなく、認知機能に関する機能性表示食品に関しても、対象者の範囲や機能性の内容が限定されており、広告の表示内容を確認するよう、消費者庁の公式ツイッターとフェイスブックを通じて情報提供されています。

今回の機能性表示食品のインターネット広告の監視については、消費者庁が継続的に実施している健康食品等の虚偽・誇大表示のインターネット監視や、新型コロナウイルスに対する予防効果をうたったネット広告の緊急監視と同様の手法となっています。

・消費者庁 健康食品広告ネット監視228事業者(231商品)の表示に改善要請(消費者庁: 2021年10月~2021年12月)
・消費者庁の新型コロナウイルス予防健康食品緊急監視(第6弾)。健食の「ウイルス予防効果」を認めない根拠は? (消費者庁  2021年12月~2022年2月)

今後も、健康食品をはじめ機能性表示食品においても、表示適正化に向けた継続的な監視・指導が継続されることが想定されます。

≪関連記事≫
・機能性表示食品広告48件中7件に違反の恐れあり。事後チェック指針への適合性は次回審査以降に (日健栄協 第3回機能性表示食品広告審査会)

・4年目に入った機能性表示食品制度品質管理の課題とは(1)。届出後における品質分析実施状況(届出資料編)

・4年目に入った機能性表示食品制度品質管理の課題とは(2)。届出後の分析実施状況(アンケート調査編)

・4年目に入った機能性表示食品制度品質管理の課題とは(3)。届出後の分析実施の公開状況(アンケート調査編)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。