大作商事の「ピュアサプライ」措置命令事案にみる、景表法の合理的根拠判断基準の変化

「空間除菌製品」の除菌効果表示に対する景品表示法の不実証広告規制(※)を用いた処分が相次いでいますが、「表示の裏付けとなる合理的根拠」の消費者庁判断をめぐって、事業者側の抵抗が強まっています。

今年1月の大幸薬品「クレベリン」事案に関しては、同社が消費者庁の命令案を不服として差し止め訴訟を行い、「置き型」に対しては東京地裁では合理的根拠が認められており、スティックタイプ、スプレータイプについても、取消訴訟や審査請求を行う構えで、波紋を呼んでいます。

2月の大作商事の「ピュアサプライ」事案では、同社が2007年に公正取引委員会に提出した根拠資料に対して妥当性が認められたにもかかわらず、今回、消費者庁が妥当性を認めず、措置命令を下したことを同社は遺憾であるとしています。

今回は、大作商事の事案から、景品表示法の所管が公取から消費者庁に移管後で変化した違反認定基準について解説します。


景表法の所管が消費者庁移管以降、競争法から消費者法へ

本件広告では、「浮遊物質の除去効果は実使用空間での数値ではない」「試験チャンバー内で実施された試験」等と表示されていることから、空間の菌・ウイルス除去効果の根拠として大作商事が提出した資料は「実生活空間」での試験データではなかったことが推察されます。そのため、これまで同様、今回も消費者庁は合理的根拠とは認めなかったと考えられます。

他方、2007年当時の公正取引委員会の判断では、浮遊物質除去効果の試験条件や「浮遊物質を完全に除去するものではない」といった打消し表示を正しく併記すれば違法認定には至らず、指導レベルの対応となったものと推察します。

この異なる行政判断となった理由は、景品表示法を公取が所管していた当時と、2009年の消費者庁の創設に伴い同庁に移管されて以降とでは、不当表示認定の判断基準が変わったことが考えられます。
2009年の景表法改正により、同法は競争法から消費者法体系に属するものとして目的規定(1条)が改正されました。具体的には、「一般消費者の利益を保護すること」が間接的な目的から直接的な目的へと変更され、消費者保護法であることが明らかにされました。

2009年改正前(抜粋)
商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、独占禁止法の特例を定めることにより、「公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護すること」

2009年改正後(抜粋)
商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」

これにより、不当表示認定において消費者の認識が判断基準として重視されるようになったのです。

合理的根拠の認定基準も消費者目線に

不実証広告規制においては、合理的根拠と認められるための2つの要件があります。
(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること
(2)表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

本件において、おそらく(1)については認められたこと思いますが、(2)についての解釈が、競争法と消費者保護法として消費者の認識を判断基準とした場合とでは異なってきます。

前者の競争法の解釈では、浮遊物質除去効果の試験条件や、「浮遊物を完全に除去するものではない」といった打消し表示がきちんと記載されていれば、表示と実証された内容が適切に対応していると認められました。
しかし、後者の消費者の認識を判断基準とした場合、たとえ打消し表示があったとしても、表示を見た消費者が、実際の商品使用時に浮遊物質除去効果が相当程度得られると期待して購入することが予想されるとみなされれば、表示と実証された内容が適切に対応しているとは認められなかったのだと考えられます。

また、「打消し表示」に関しては、2017年から18年にかけて3回にわたる大規模な消費者調査を行い、強調表示と打消し表示についての考え方を示しています。
調査によると「普段、打消し表示を意識している」人の49.7%~65.6%が打消し表示を「見ない(読まない)」と回答しています。(Web広告の同一画面内に表示されている場合)
景品表示法の執行においても、この報告書で明らかにした考え方に基づく事実認定を行っており、空間除菌製品も多数処分事例があります。

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打消し表示に関する実態調査報告書(平成29年7月)http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180921_0001.pdf

スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書(平成30年5月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0002.pdf

広告表示に関する消費者の視線に関する実態調査報告書(平成30年6月)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0003.pdf
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大作商事の事案は、公正取引委員会時代の判断基準が通用しなくなったことを示す処分事案となりました。
同社は「2007年当時から現在までに関連法規制とガイドラインの変更は無く」と述べていましたが、法規制の考え方は時代や社会の変化とともに変化するものです。
コンプライアンスリスクを回避する上でも、法規制動向をキャッチアップしておくことが重要です。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。