埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。20事業者に行政指導(埼玉県 2022年4月20日)

埼玉県が、県内の大学、高校と連携して、違反表示・広告等に対する監視に取り組んでいます。

2021年度(令和3年度)に実施された不当表示広告調査では、県内の高校生1,258名(6校)、大学生95名(1大学)の計1,353名から、479事業者、計1,353件の広告表示が報告され、271事業者(854件)について不当表示のおそれがありました。
不当表示のおそれのある事業者は、1社あたり平均3.2件の不当表示を行っている計算となります。
また、大学生・高校生はネットやスマホでのダイエット・美容関連広告における不当表示に接触する機会が多いことがうかがえる結果となりました。

県では、報告があった1,353件を精査し、20事業者に対して文書による行政指導を行っています。

令和元年度の本調査では、調査報告を端緒として令和2年3月31日に、(株)ニコリオのダイエットサプリメントの表示に対して埼玉県が景表法に基づく措置命令を行っています。

・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日)

令和3年度調査の内容を確認します。


調査実施期間
2021年7月から2022年1月

広告媒体別件数
調査媒体は以下の通り。

  • インターネットの広告(メールマガジン等の広告を含む)
  • スマートフォンの広告(メールマガジン、情報発信アプリ等の広告を含む)
  • 新聞紙上の掲載広告
  • 新聞折り込みチラシ(調査学生・生徒の自宅のチラシ)
  • 雑誌(週刊誌、ファッション誌、情報紙等)の掲載広告
  • フリーペーパーやミニコミ誌の掲載広告
  • 店頭の広告

調査媒体の選定は各校が任意に選定している。

報告件数と不当表示のおそれありの件数の媒体別内訳は、インターネット582件中391件、スマートフォン575件中382件、新聞115件中44件、折込チラシ47件中24件、雑誌24件中10件、フリーペーパー4件中1件、店頭2件中1件、その他4件中1件。

調査媒体の85.5%がネットやスマホ広告で大学生・高校生のインターネット利用率が高いことを示している。
また、不当表示のおそれがある広告におけるネットやスマホによるものは773件で約9割を占めている。

(埼玉県 不当表示広告調査 結果報告書より引用)

商品・サービス別件数等
調査対象について、特定の商品類は指定していない(大学は、食品表示に限定)。
報告件数と不当表示のおそれありの件数の商品・サービス別内訳は、報告件数の多い上位3分類について、ダイエット関係が434件中352件、美容関係373件中261件、健康関係156件中88件となっている。
不当表示のおそれがある広告では、ダイエット関係によるものが41.2%、美容関連が30.6%で約7割を占めている。

(埼玉県 不当表示広告調査 結果報告書より引用)

事業者の状況
報告があった1,353件を事業者別に集計したところ、同一商品の報告の重複により、479事業者となった。479事業者のうち、不当表示のおそれがあると思われるものは計271事業者であった。

違反被疑表示事例と指摘事項
報告のあった表示事例のうち、主な違反のおそれのある事例と学生・生徒の指摘事項については、次のとおり。 

(埼玉県 不当表示広告調査 結果報告書より引用)

————————————
令和3年度大学・高校との連携による不当表示広告調査結果について
(埼玉県 2022年4月20日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0310/jigyousyasido/03gakkourenkei.html
————————————

このような取り組みは埼玉県だけでなく、国や他の自治体においても、一般消費者に不適切な広告表示の調査モニターを委託して、事業者指導に活用しています。

東京都では「東京都消費生活調査員制度」事業を、平成14年度から実施しています。
本事業では、年度ごとに消費生活調査員として20歳以上の都民を対象に公募し、食品表示調査(調査員:200人、調査回数:5回)、表示・広告調査(調査員:200人、調査回数:3回)、計量調査(調査員:100人調査回数:6回、)を委託しています。

・消費生活調査員による調査(東京都)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/chousa/t_chosain/

今回取り上げた埼玉県の取組は、成人ではなく学生・生徒を調査員の対象にしています。
これは、調査を通じて次代を担う大学生、高校生が不当表示等に関する正しい知識を得ることにより、消費者被害の未然防止を図るという、若年者への消費者教育も意図された取組となっています。
また、本調査結果をもとに県が違反事業者に対する是正指導を行っており、大学生、高校生が悪質事業者の是正に貢献し、社会参画していることを実感する機会ともなっています。

調査事業は今年度も実施する予定で、現在、協力校を募集しています。
2022年4月より成年年齢が引下げに伴う、若年者の消費者トラブル防止の観点からも、このような取り組みが広がることを期待したいと思います。

《関連記事》
・埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。19事業者に行政指導(埼玉県 2021年4月13日)

・埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。1事業者に行政処分、25事業者に行政指導(埼玉県 2020年7月13日)

消費者の東京都への悪質事業者通報、通販が5割超、誇大広告は健康食品関係が約2割(東京都 悪質事業者通報サイトの通報概要(令和元年度))

消費者からの広告表示に対する厳しい目 東京都「悪質事業者通報サイト」に大幅通報件数増加(東京都 2019年6月27日)

・JAROへの苦情、通販定期購入契約の苦情は減少せず。ネット広告への苦情二桁増続く (日本広告審査機構 2018年度の審査概況)

ネット通販トラブル疑似体験や通報窓口設置 「消費者力」向上を目指す自治体の取り組み

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。