公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)「広告適正化委員会」が、2021年2月に実施した「2020年度通信販売広告実態調査」の結果を2回に分けてご紹介します。(※)
この調査は、通信販売取引改善を目的に2012年度から実施されています。これまでは、新聞折込チラシとテレビ通販CMが対象でしたが、2019年度に初めてネット広告も調査対象となりました。ネット広告の調査対象はJADMAの通販110番に寄せられた消費者相談に関連する商品、サービスに関するネット上の表示でした。
2020年度は調査方法が大きく変更となり、消費生活アドバイザー等の資格を有する一般消費者の中から調査員を選定し、調査員が調査期間 の1週間に に日常生活のなかで接触したすべての通信販売に関する広告を対象とし、問題があると考えた広告を収集するサンプル調査となっています。
今回の調査サンプルとなった、法令順守や消費者保護の観点から問題があるおそれのある広告は118件です。
通販広告の広告表現の適正性について全体傾向をお伝えします。
【問題があるおそれのある広告の媒体・商材状況】
●Web広告が全体の約43%、アフィリエイトは約18%
●「美容・健康」、「飲食料品」で約8割を占める
【広告内容の適正性】
●「解約に関する事項」の記載なしが35%
●「誇大な性能・効果効能表現」が約76%
【問題があるおそれのある広告の媒体・商材状況】
●Web広告が全体の約43%、アフィリエイトは約18%
問題があるおそれのある広告を媒体分類別に見ると、「Webサイト上の広告」が43.2%、次いで新聞広告・雑誌広告が33.1%となった。
「ラジオ」と「Web動画」については該当する広告がなかったが、前者は広告を保存する必要があることから収集が難しかったこと、後者はWeb動画からリンクをたどることでWebサイト上の広告に誘導されることから「Webサイト上の広告」の項目に含まれていることが理由として考えられる。
「Webサイト上の広告」、「Web動画」、「SNS上の広告」のうち、アフィリエイト広告に関連するものは17.8%を占めている。
●「美容・健康」、「飲食料品」で約8割を占める
商品分類別では、「美容・健康」が39.8%、「飲食料品」が37.3%を占めている。具体的には、化粧品や健康食品に関する広告が目立つ。
【広告内容の適正性】
●「解約に関する事項」の記載なしが35%
問題があるおそれのある広告について、特定商取引法に基づく義務表示事項や返品特約等について記載割合が少ない事項は、「付帯費用」(50.8%)「申込期限」(31.4%)、「支払時期」(69.5%)、「解約」(65.3%)。
付帯費用や申込期限については、そもそも販売時に設定していないケースがある一方、解約に関する事項については、解約の方法や期間に制限がある場合には、トラブル防止の観点からも重要な事項であるため、できる限り明瞭に記載を求めたい。
事例:定期購入であることや解約の条件が分かりにくい
定期購入であることの表記が不足しているものや、定期購入の解約には数回の購入が必要であるなど条件が付されているにもかかわらず条件が明示されていないものが目立った。
また、定期購入であることや解約には条件があることについて、小さく目立たないように記載するあまり、消費者が見落としてしまうようなものも散見される。
●「誇大な性能・効果効能表現」が約76%
問題があると考えた理由(複数選択可)について、「誇大な性能・効果効能表現」(76.3%)を占める。
また、「不明瞭な商品内容」(39.8%)では、定期購入での販売においてその商品内容や価格が分かりにくいといった指摘があった。
「せん情的な広告内容」(37.3%)では、健康や美容の悩みを過度にあおったり、品切れになるなどとして購入を急かすといった、商品の購買意欲を高めるために行き過ぎた表現が散見された。
事例:化粧品や健康食品の効果効能の表示が誇大
コンプレックス商材を中心に「シミが消える」「痩せる」「毛が生える」といった訴求を行い、根拠の疑わしい情報を併記して効果を強調するものが目立った。
また、使用体験談の中に、上記のような誇大な表現を記載しながら「個人の感想です」などと 注記するものも目立つ。
事例:購入を急かすなど消費者をあおる表現
Webサイト上の広告を中心に、「売り切れが続出しており、今回入荷分も残りわずかである」「この広告画面を閉じたら割引価格では二度と購入できなくなる」「セット購入の割引キャンペーンはいつ終わるかわからない」などと、早く購入しなければ商品を手に入れられない、今しか商品を安く手に入れられないかのような印象を与える表現が目立った。
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本調査委員会では、不適正な表示を行っている通販各社に対し改善要望を通知する、関係各所と情報共有を行っています。
特に「通販の関連法令に抵触するおそれのある広告」を行った通販会社に対しては、改善要請書を通知し、それに対する協力姿勢がなく、違法性・悪質性があり、消費者にとって多大な不利益やトラブルの発生が予測できる広告表示を再度行う場合には、JADMAから関係省庁などへ通報するとしています。
調査報告書では、「一部不適正な表示が見られ、改善が必要な広告」「関連法令に抵触するおそれのある広告」について具体的な審査広告事例が公表されています。
次回は、個別広告事例を解説します。
※
通信販売取引改善のための通販広告実態調査 (2020年度調査)
(公社)日本通信販売協会 広告適正化委員会 2021年7月
https://www.jadma.or.jp/pdf/2021/koukokujittai2020.pdf
<調査概要>
調査エリア:
九州地方(福岡県 · 佐賀県 · 長崎県 · 熊本県 · 大分県 · 宮崎県 · 鹿児島県 · 沖縄県)とし、各県の人口構成に応じて調査員を選定。
調査期間:
2021年2月8日(月)~14日(日)までの1週間
対象広告:
調査員が接触したすべての通信販売に関する広告とした。
消費生活アドバイザー等の資格を有する一般消費者の中から調査員を選定し、本調査に関するガイダンスを行ったうえで調査活動を開始した。
《関連記事》
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