「定期購入販売」関連相談2020年も132.2%増。待たれる改正特商法施行と法執行(令和3年版 消費者白書)

先日の記事で、(公社)日本通信販売協会の消費者相談室に寄せられた2020年度の消費者相談においては、「定期購入販売」関連相談件数が減少傾向にあることをお伝えしました。

しかし、消費者庁が6月に公表した「令和3年版消費者白書」によると、国民生活センターのPIO-NETに登録された2020年の相談件数は過去最多の59,172件、前年比132.2%となっており、増加傾向が続いています。
商品別でみると、「健康食品」66.4%と「化粧品」31.2%で、相談のほとんどを占めており、特に「健康食品」の件数が増加しています。

令和3年版消費者白書 より引用

「定期購入」規制については、2017年12月の特定商取引法の改正に伴う「特定商取引に関する法律施行規則」により、定期購入契約に関する表示が義務付けられたものの、相談件数が減少に転じることはありませんでした。
2019年には、新たな手口として回数縛りのない「継続的な定期コース」(中止の申し出があるまで継続的に販売する方法)等を行う事業者が増え、相談件数は203.6%と大幅増加となり、2020年も132.2%増となっています。

具体的な相談内容は、以下のようなものです。

消費者が定期購入であることを誤認して申し込むケース:
「インターネット広告からダイエットサプリの初回お試し品を申し込んだが、2回目に4か月分が届く高額な定期購入だった」など。

解約条件をめぐるトラブル:
「定期購入の歯みがき粉が、未開封商品の返品可能と記載されていたのに、返品を断られた」など。

契約解除を妨害するケース:
解約したくても事業者と連絡が取れず、解約の申請期間が過ぎてしまい請求を受ける。
「10日間返金保証付きのサプリメントを解約したいが、事業者の電話がつながらず、メールも返信がない」、「『初回500円、1回のみの購入OK』という広告を見て契約したサプリメントの定期購入を解約したいが、事業者に電話がつながらない」など。

ネット通販定期購入被害が拡大する中、2019年末あたりから2021年に入ってからも特商法による法執行が度々行われてきました。
通販定期購入に関する特商法での処分事案について、以下の記事でまとめています。

2019年度:
・ネット通販定期購入の表示に特商法での処分 (株)TOLUTOと前代表取締役等に業務停止命令(2019年12月26日)
・(株)アクア ネット通販定期購入の最終申込ボタン表示に特商法で指示処分(2019年12月26日)
・続く特商法処分。ネット通販定期購入の最終申込ボタン表示で(株)GRACEに指示 (2020年1月22日)

2020年度:
・ネット通販定期購入に特商法での処分 (株)wonderと(株)GRACEの代表取締役に業務停止命令(2020年8月7日)
・続く、ネット通販定期購入に特商法での処分 (株)Kanaelに業務停止命令(6カ月)(消費者庁 2020年12月18日)
・ネット通販定期購入に立て続けの特商法での処分 (株)Super Beauty Laboに業務停止命令(3カ月)(消費者庁 2021年1月14日)

2021年度:
・東京都がLibeiroに業務停止命令(3カ月)。化粧品のネット通販定期購入に特商法での処分(東京都 2021年7月8日)
・詐欺的通販定期購入の事業者3社を統括 (株)LIBELLAに業務停止命令(9カ月)(消費者庁 2021年7月16日)

これだけ処分が出されていても被害拡大が止まらないということは、悪質な手口を行う事業者が後を絶たないということだと思います。
特に、2021年7月のLIBELLA(リベラ)事案のように、代表者が黒幕として詐欺的行為を主導して、複数の関連法人に対して詐欺的定期通販事業を統括していたというケースを見ると、トカゲのしっぽ切のような処分を繰り返しても、焼け石に水なのではと危惧します。

2021年6月16日に公布された「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」では、通信販売の「詐欺的な定期購入商法」への対策として、 消費者利益の擁護増進のための規定が強化されました。
具体的には、

・定期購入を含めた通信販売で消費者を誤認させる表示などをした場合の直罰化
・消費者が誤認して申し込みをした場合に取り消しを認める制度の創設
・通信販売の契約解除の妨害に当たる行為に対する罰則付きの禁止

などを盛り込んでいます。

広告コンプライアンスガイド>法規制と罰則
特定商取引法とは

早い時期に法施行となり、悪質な手口による営業は大きなやけどを負うことを理解してほしいと思います。

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令和3年版 消費者白書
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/
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≪参考記事≫
・通販で定期購入契約を行う際の広告に、販売条件の明記が義務付けに(特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(平成29年6月30日公布))
・強まる「定期購入」契約に関する監視の目。適格消費者団体、行政の動向

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。