「定期購入」利用経験55%、利用しない理由「解約に手間がかかる」が8割超(令和2年度「東京都消費生活調査員調査」)

前回の記事では、埼玉県が県内の大学、高校と連携した違反表示・広告等に対する監視事業として公表した、令和2年度の不当表示広告調査をご紹介しました。

・埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。19事業者に行政指導(埼玉県 2021年4月13日)

一般消費者に不適切な広告表示の調査モニターを委託して事業者指導に活用する同様の取り組みは、他の自治体においても活発です。
東京都では、平成14年度から「東京都消費生活調査員制度」として、食品、生活用品、サービス等の表示や計量に関する法律の遵守状況などの調査を、都民との協働により行っています。
調査結果は、事業者に対する指導、行政施策の基礎資料等に活用されています。

本事業では、年度ごとに消費生活調査員として20歳以上の都民を対象に公募し、食品表示調査(調査員:200人、調査回数:5回)、表示・広告調査(調査員:200人、調査回数:3回)、計量調査(調査員:100人調査回数:6回)を委託しています。
表示・広告調査では、商品やサービスの店舗や広告等における表示の実態について、景品表示法等に基づき調査を行っています。

◆東京都消費生活調査員制度とは(東京都)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/chousa/t_chosain/

今回は、「東京都消費生活調査員制度」の令和2年度調査結果より、「定期購入に関する広告調査」概要を紹介します。
初回お試し価格による「定期購入」トラブルの激増により、特商法改正が進んでいるところですが、本調査では消費者の定期購入の利用・非利用理由についても聴取されており、マーケティングのヒントも得られそうです。



【調査目的】
商品の「定期購入」に関する広告については、一回限りで購入するより値引きや特典があるなどお得感を強調する一方で、中途解約の条件が不明瞭であったり、初回お試し価格が定期継続購入を条件として設定されていることなどがわかりにくいとトラブルになる事例が近年増加している。
そこで、消費者が日常的に目にする新聞折り込みチラシ、フリーペーパー等の広告において、「定期購入」に関して契約条件等がきちんと表示されているか、誤認を招く表示になっていないかなどについて調査を実施した。

【調査対象】
新聞・雑誌広告、折り込みチラシ、ダイレクトメール、ポスティングチラシ等の他、フリーペーパーを調査対象とした。
※インターネットのホームページ等に表示されている広告は「調査対象外」

【調査期間】
2020年7月13日(月曜日)から同月27日(月曜日)まで

【調査結果】
調査対象広告189件のうち、不当な表示と思われると報告された表示は154件(81.5%)。
不当表示であると判断した理由として、「文字が小さいなど、契約条件に関する記載がわかりにくい」(66件:42.9%)、「中止・解約条件が不記載・不十分、もしくは表示内容がわかりにくい」(39件:25.3%)、「定期購入前提のお試しなのか、通常購入も可能なのかどうかがわかりにくい」(30件:19.5%)等が挙げられた。

調査員から「不当表示あり」と報告された広告のうち6事業者の表示について、景品表示法(有利誤認)に抵触するおそれの有無について調査及び指導を行った。

【有利誤認のおそれがあった表示例】
・新聞折り込みチラシにおいて「1回だけ試して」と表示し、契約条件や解約条件が別途に小さく記載されていたため、定期購入ということがわかりにくいものであった。
・新聞広告において「お試し〇日間500円」を強調して表示し、定期購入を誘引しているが条件等の説明がない。また、本体の通常購入価格が不明であるため、「お試し〇日間500円」が、消費者にとって安い価格なのか不明瞭であった。

【定期購入に関するアンケート結果】
●定期購入の利用経験
「利用したことがある」(104件:55.0%)、「利用したことがない」(81件:42.9%)

●定期購入の利用理由、非利用理由
利用した理由には、「価格や送料の割安感」(69件:66.3%)、「注文する手間が省ける」(53件:51.0%)、「使い続けることで効果を実感できる」(28件:26.9%)。
利用しない理由には、「解約や返品に手間がかかる」(68件:84.0%)への負担、「すぐに解約できない」(66件:81.5%)、「使いきれないうちに次の商品が届くことがある」(63件:77.8%)。

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令和2年度第1回表示・広告調査結果「東京都消費生活調査員調査」
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/chousa/t_chosain/chosain_kekka.html
調査期間:2020年7月13日~同年7月27日
調査方法:
消費生活調査員の身近にある新聞・雑誌広告、折り込みチラシ、ダイレクトメール、ポスティングチラシ、フリーペーパー等において、「定期購入」に関する広告について最も問題があると思われる表示を1点選び、その広告全体を見て、景品表示法上の不当表示にあたると思われる表現がないか調査してもらった。「定期購入」との直接的な記載がなくても、関連があると思われる表示(「毎月お届けコース」「初めての方限定特別価格」「お試しキャンペーン」など)も対象とした。
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通販の「詐欺的な定期購入商法」対策:
・定期購入でないと誤認させる表示等に対する直罰化
・上記の表示によって申込みをした場合に申込みの取消しを認める制度の創設
・通信販売の契約の解除の妨害に当たる行為の禁止
・上記の誤認させる表示や解除の妨害等を適格消費者団体の差止請求の対象に追加

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消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案
(第204回国会(常会)提出法案 令和3年3月5日)
https://www.caa.go.jp/law/bills/#204
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《関連記事》
・埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。1事業者に行政処分、25事業者に行政指導(埼玉県 2020年7月13日)

消費者の東京都への悪質事業者通報、通販が5割超、誇大広告は健康食品関係が約2割(東京都 悪質事業者通報サイトの通報概要(令和元年度))

消費者からの広告表示に対する厳しい目 東京都「悪質事業者通報サイト」に大幅通報件数増加(東京都 2019年6月27日)

・JAROへの苦情、通販定期購入契約の苦情は減少せず。ネット広告への苦情二桁増続く (日本広告審査機構 2018年度の審査概況)

ネット通販トラブル疑似体験や通報窓口設置 「消費者力」向上を目指す自治体の取り組み

・行政の広告監視動向をキャッチするヒント 「オーガニック」「天然由来」シャンプー、石けんの表示調査(平成26年度「東京都消費生活調査員調査」)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。