JAROへの苦情媒体、ネット広告がトップに。アフィリエイト関連は「警告」31件中18件 (日本広告審査機構 2019年度の審査概況)

JARO(公益社団法人 日本広告審査機構)が、2019年度に消費者から受け付けた苦情や問い合わせに基づく審査概況を6月3日に公表しています。

苦情の業種別では、「デジタルコンテンツ等」「健康食品」が大きく増加し、広告の媒体別では「インターネット」が「テレビ」を超えて、初のトップとなっています。
この要因として、JAROは、以下のように分析しています。

・苦情が集中するテレビCMが2019年度は相対的に少なかったこと
・「インターネット」はオンライン経由でより多く寄せられるところ、ウェブサイトの送信フォーム改修によって受付件数がさらに増加したこと(オンライン受付は2018年度2,211件、2019年度3,389件と1.5倍)
・広告費においてもインターネットが増加していること(※)
(※)
電通の「2019年日本の広告費」においてインターネット広告費がテレビ広告費を超え、初めてトップになったことを公表。2019 年の総広告費は 6 兆 9,381 億円、うちインターネット広告費は2兆1,048億円、テレビメディア広告費は1兆8,612億円であった。


業務委員会で審議した「見解」対象となったものでも、「インターネット」が1位となり、そのうち、悪質なアフィリエイトプログラムに関するものが半数以上を占めました。

内容を確認してみましょう。


●2019年度の「苦情」件数は13%増。「デジタルコンテンツ等」「健康食品」増加目立つ
総受付件数は1万2489件(前年度1万1051件)で、前年度比113.0%となった。
相談のうち「苦情」は9324件(前年度8386件)で、前年度比111.2%となった。

「苦情」を業種別にみてみると、上位は以下の通り。
1位「デジタルコンテンツ等」855件(前年度668件)で、前年度比128.0%。
2位「健康食品」770件(前年度520件)で、前年度比148.1%。
3位「自動車」344件(前年度282件)で、前年度比122.0%。
4位「化粧品」324件(前年度216件)で、前年度比150.0%。

1位の「デジタルコンテンツ等」は855件中268件がスマートフォン用ゲームアプリで、「広告とゲーム内容が異なる」、「卑わいな広告表現が不快」というもの。
2位の「健康食品」については、定期購入契約で販売する数社に苦情が集中し、件数が大きく増加した。「痩身等の効果が得られない」「定期購入だと分からなかった」「解約の電話がつながらない」というもの。
4位の「化粧品」は、テレビCMで、「前半と後半の出演者が異なるのに、まるで使用前後の効果を表現しているかのように見える」との苦情。
2018年度の3位「携帯電話サービス」、4位「通信販売業」は、大幅に減少した。

●「インターネット」が僅差で「テレビ」を上回り、初の1位
「苦情」を媒体別にみてみると、上位は以下の通り。
1位「インターネット」4,048件(前年度2,847件)で、前年度比142.2%。
2位「テレビ」3,961件(前年度4,396件)で、前年度比90.1%。
3位「ラジオ」305件(前年度308件)で、前年度比99.0%。

順位は「インターネット」が僅差で「テレビ」を上回り、初の1位となった。
「インターネット」は「デジタルコンテンツ等」643件、「健康食品」536件、「化粧品」230件など。
「テレビ」は「住居関連機器」242件、「デジタルコンテンツ等」198件、「健康食品」186件など。

●「苦情」内容の半数以上が誤認表示の問題で、大幅増加
「苦情」を内容別にみてみると、構成比は以下の通り。
「表示」4,963件(構成比53.2% 前年度比128.0%)。
内訳:
「価格・取引条件等」2,265件(構成比24.3% 前年度比150.1%)
「品質・規格等」1,696件(構成比18.2% 前年度比184.3%)
「その他」1,002件(構成比10.7% 前年度比69.2%)
「広告表現」3,624件(構成比38.9% 前年度比91.9%)。
「広告の手法」737件(構成比7.9% 前年度比132.3%)。

「表示」は、広告・表示が事実と異なる、誤認を招くといった表示に問題があると訴える苦情。
業種別件数では「健康食品」500件、「通信販売業」216件、「デジタルコンテンツ等」239 件、「化粧品」213件、「外食」211件など。
媒体別では、「インターネット」2,895件、「店頭」217件、「チラシ」198件、「折込」168件で、「インターネット」が 58.3%を占める。
「表示」の内訳では、「価格・取引条件等」は前年度比150.1%、「品質・規格等」は同184.3%と大きく増加した。

「広告表現」は、広告の描き方に関する苦情。広告の描き方が「セクハラである」「暴力的である」「子どもに悪影響がある」などといった意見。
業種別件数では、「デジタルコンテンツ等」342件、「住居関連備品機器」231件など。
媒体別では、「テレビ」2,522件、「ラジオ」148件など。「テレビ」が69.6%を占める。

「広告の手法」は、 CM の音の大きさ、広告の頻度、ステマ、迷惑な露出方法など。
業種別件数では「デジタルコンテンツ等」92件、「買取・売買」22件など。
媒体別では「ラジオ」39件、「交通」10件、「屋外」19件など。

●「見解」34件を発信、1位「健康食品」、2位「化粧品」
業務委員会で審議し「見解」を発信したのは34件。(前年度26件)
内訳は警告31件、要望2件、提言1件(前年度はそれぞれ21件、3件、2件の計26件)。
対象業種は「健康食品」17件(前年度8件)、「化粧品」8件(同6件)、「医薬部外品」「医療機関」各2件、その他は「書籍」「衣類」「電気製品」「エステティックサービス」「医薬品」各1件。

●「見解」34件中、8割がインターネット。半数以上がアフィリエイト
対象媒体は「インターネット」が見解34件中28件(前年度14件)で、同媒体の過去最多件数となった。
悪質なアフィリエイトプログラムが関わった事例は18件あり、①広告(ニュースサイトやSNSのインフィード広告が多い)、②アフィリエイトサイト、③広告主の自社通販サイトの順でリンクしたものが目立った。
また、アフィリエイトサイトにはASPのほか、ウェブサイト制作会社、広告会社などが関わるものもあり、警告を発信した何件かは、広告会社等が共通しているものも見られた。
その他の媒体は「テレビ」3件、「新聞」「パンフレット」「雑誌」「店頭」各1件。

●定期購入契約の苦情は大幅増加
定期購入に関する苦情が234件で、前年度98件からに大幅に増加した。警告31件のうち、14件が定期購入契約の事例である。
多いのは「健康食品」「化粧品」「医薬部外品」など。
2017年12月の特定商取引法施行規則の改正により、広告には「定期購入であること」「支払総額」「契約期間」などの販売条件の明記が義務付けられたが、改正後は、「よく見ると定期購入だと書かれているが、分かりにくい場所にある」「全額返金保証などとうたっているのに広告に記載のない条件があった」などと苦情内容が変わった。

具体的な警告内容は以下の通り。

2019年度の警告一覧 ( )内は媒体
(1)ニュースアプリのインフィード広告で、着用するだけで脚が短期間で劇的に細くなるような表現をした加圧レギンス(インターネット〈バナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(2)糖尿病に効果があるかのようなナレーションや体験談をうたったサプリメント(テレビ)
(3)「1週間で10kg以上体重が減少したら使用を控えてください」など劇的な痩身効果があるかのように標ぼうしたサプリメント(インターネット〈メールマガジン、自社通販サイト〉)
(4)「食べたことがなかったことに」とうたい、ラーメンと当該商品をミキサーにかけると透明な水に変化する動画を表示したサプリメント(インターネット〈SNSインフィード動画、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(5)食べても太れなくなるとの文言や1カ月で10kg痩せたとする体験談などを表示したサプリメント(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(6)食べても太れない衝撃的なダイエットなどとうたったサプリメント(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(7)麹がダイエットに著しい効果があるかのようにうたったサプリメント(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(8)タレントがテレビ番組で絶賛したとうたう化粧品の美容液(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(9)「30日間解約保証」と表示されていたが、実際は4回の定期購入契約で解約が困難なサプリメント(インターネット〈ニュースアプリのインフィード広告、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(10)抗酸化力などの効能や世界特許製法などとうたったケイ素を含んだ飲料(インターネット〈自社通販サイト〉)
(11)麹が脂肪の原因を分解するなどとうたったサプリメント(インターネット〈SNSインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(12)塗るだけでシミが消える、厚生労働省認可などとうたった医薬部外品のクリーム(インターネット〈ニュースサイトインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(13) 比較サイトで1位とされた商品のリンク先販売サイトで、デブ菌やヤセ菌などと表示されたサプリメント(インターネット〈ニュースサイトバナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(14) 比較サイトで1位とされた商品のリンク先販売サイトで、デブ菌やヤセ菌などと表示されたサプリメント(インターネット〈ニュースサイトバナー、アフィリエイトサイト〉)
(15)全身脱毛月々○○円と表示し、誤認させる総額表示をした医療機関(テレビ)
(16)医療機器でないにもかかわらず病原菌名を表示していた空気清浄機(パンフレット)
(17)塗るだけで歯が白くなるかのようにうたった歯磨き用ジェル(インターネット〈ニュースサイトバナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(18)解約保証付きとうたいながら解約できない定期購入のサプリメント(インターネット〈自社通販サイト〉)
(19)ほぼ全員髪が生える、厚生労働省が認可などとうたった医薬部外品の育毛剤(インターネット〈掲示板アプリインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(20)ビフォーアフターの写真を使いアトピー性皮膚炎が改善するかのような表示をした基礎化粧品(インターネット〈リスティング広告、自社通販サイト〉)
(21)送料のみ負担と表示しているが4回以上の縛りがある定期購入契約のニキビ洗顔料(インターネット〈自社通販サイト〉)
(22)男性ホルモンに働き掛けてヒゲが生えにくくなるかのように表示した化粧品(インターネット〈ニュースサイトインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(23)「医学雑誌に掲載された」「ヒト幹細胞を使用している」と表示している化粧品(インターネット〈ニュースサイトバナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(24)「寝ている間も痩せる」「痩せ体質にシフト」などとうたった健康食品(インターネット〈動画共有サイトの動画アフィリエイト広告、自社通販サイト〉)
(25)血管病などと医薬品のような表示をしている栄養機能食品(テレビ)
(26)「ロスデライン豊胸・豊尻」「「痛みやダウンタイムもなく」等の表示をし、必要表示事項お記載がない美容外科医院(雑誌)
(27)子どもの背が伸びるかのようにうたった健康食品(インターネット〈ニュースサイトインフィード広告、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(28)血液中の糖分をエネルギーに変換する力があるなどとうたった田七人参使用の健康食品(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(29)ドラッグストア店内の商品近くに置かれたチラシに良質な睡眠が得られるかのように表示した健康食品(店頭〈チラシ、音声〉、インターネット〈ドラッグストア通販サイト〉)
(30)シミに効果があるかのようにうたった化粧品(インターネット〈通販モール〉)
(31)シミに効果があるかのようにうたった化粧品(インターネット〈自社通販サイト〉)

審査基準:
[警告]広告および表示事項が関係法令に抵触することから、当該広告の即時排除もしくは当該表示の撤回が必要と認められるもの。
[要望]広告および表示事項が消費者に誤認を与えるおそれのあるもの、または関係法令に抵触するおそれがあり、当該表示の修正を求めることが必要と認められるもの。
[提言]広告および表示事項の一部が消費者に誤認を与えるおそれがあるため、検討を求めることが必要と認められるもの。

JAROでは、これまで上記三段階だった審査基準を今年6月に改定し、現状の「警告」より問題レベルの高い「厳重警告」を新設しました。背景として、近年、JAROの審査結果分類基準最上位の「警告」と判定されるものの中に、著しく不適正な広告・表示が多く、課題となっており、こうした悪質なものに対して、現状の「警告」より強く適正化を求めるというものです。
見解発信後においてもより厳しい対応を取り、広告関係9団体(※)とも連携して広告・表示の適正化に取り組んでいくとしています。
このほか、「提言」は、「要望」との序列を明確にするため「助言」と改称しました。

新基準の運用は2020年4月の委員会から。
※広告関係9団体:
広告審査協会、関西広告審査協会、日本広告業協会、日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本雑誌広告協会、全日本広告連盟、日本アドバタイザーズ協会、日本インタラクティブ広告協会

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JARO審査基準改定について
(公益社団法人 日本広告審査機構 2020年6月18日)
https://www.jaro.or.jp/news/20200618c.html
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2020年に入ってから、JAROでは「新型コロナウイルス関連の広告への苦情」について取りまとめています。
1~3月、4~5月の期間で取りまとめた内容を、次回の記事でご紹介します。

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2019年度の審査概況
(公益社団法人 日本広告審査機構 2020年6月3日)
https://www.jaro.or.jp/news/ghuq7e0000002own-att/ghuq7e0000002ozg.pdf
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《関連記事》

・JAROへの苦情、通販定期購入契約の苦情は減少せず。ネット広告への苦情二桁増続く
(日本広告審査機構 2018年度の審査概況)

・ネット上の健康食品の成分に関する記事体広告、薬機法に抵触する境目は?

・メール広告からしかたどり着けない中間ランディングページ、不適切表示隠しの巧妙な手法

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。