気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意!

先日の記事で取り上げましたが、5月19日に出された洗浄ジェルのアルコール配合割合表示に対する景表法措置命令は、スピード処分でした。
表示期間は2020年4月4日から同月14日までの10日間で、事業者は14日に消費者庁へ報告と自社HPでの公表を行っていることから、調査も短期間で処分が確定したのではと推測されます。

今回の案件は、現在、新型コロナウイルス感染拡大で品薄が続いているアルコール消毒製品に関するものでしたので、迅速な処分を行うことによって、事業者への品質管理徹底と不当表示行為への抑止効果が狙いだと考えられます。
国民生活センターでも新型コロナウイルスに関連した相談のうち、除菌や消毒をうたう商品については、2020年4月末日までで837件の相談が寄せられており、消費者への情報提供を行っています。

◆国民生活センター 発表情報(2020年5月15日)
・除菌や消毒をうたった商品について正しく知っていますか?
-新型コロナウイルスに関連して-
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20200515_2.html

新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った商品に関しては、既に3月10日(第1弾)、3月27日(第2弾)の2度にわたってネット広告の緊急監視が実施され、64事業者87商品の表示に改善要請が行われています。

改善要請がなされた商品類については特に注意が必要です。


改善要請を受けた健康食品の表示成分・食品は、
ビタミン(A、C、D、グルタミンビタミン)、亜鉛、マグネシウム、セレン、梅肉エキス、オリーブ葉エキス、マヌカハニー、ポリフェノール、タンポポエキス、たんぽぽ茶、あおさ、スピルリナ、霊芝、納豆、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、グルコサミン、β-グルカン、アルキルグリセロール、ジアスターゼ、青汁、カテキン、プロテイン、松種子エキス、植物酵素、アリシン、乳酸菌、ウコン、水素水・水素サプリ
と、多岐にわたっています。

食品以外では、マイナスイオン発生器・イオン空気清浄機、空間除菌剤 (首下げ型、据置型)、アロマオイル、光触媒スプレーが対象となっていました。

この3月の改善要請を受けた品目にある「首下げ型の空間除菌剤」に関しては、5月15日に販売事業者5社に対する行政指導が行われました。

・携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について
(消費者庁 2020年5月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019867/

新型コロナウイルスについては、その性状特性が必ずしも明らかではなく、民間施設での試験などの実施も不可能な現状で、消費者庁は、「ウイルス予防商品」のウイルスに対する予防効果を裏付ける根拠は認められていないとしています。

今回は行政指導に留まり、社名や商品名は公表されていませんが、もし、行き過ぎた広告があれば、すぐさま不実証広告規制で優良誤認による措置命令処分となりそうです。

この、消費者庁が行っている虚偽・誇大表示のインターネット監視については、2009年度より四半期ごとに健康食品等に対して継続的に実施されています。
2020年1月~3月実施の検索キーワードには「妊活」が登場しており、2020年3月10日には、「妊活」を標ぼうしたサプリメントの表示で、初の措置命令が出されています。

・消費者庁 健康食品広告ネット監視 2019年度第4四半期は44事業者(65商品)の表示に改善要請(消費者庁: 2020年1月~2020年3月)

・「妊活」サプリ、ゼネラルリンクに景表法措置命令 ステマランキングサイトによる広告手法に注意(消費者庁 2020年3月10日)

新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った商品に対して今回行われたインターネット監視についても、改善要請がなされた商品類については特に注意が必要です。

景品表示法違反に対する行政のアプローチについては以下のような流れとなっています。

外部からの情報提供や職権探知等によって、景品表示法に違反する不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、
1)消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施する。
2)調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行う。
3)違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られる。

また、措置命令に対して、要件を満たす限り、当該事業者に対し課徴金納付命令が出されます。

(消費者庁HPより引用)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/violation/

≪関連記事≫
・洗浄ジェルのアルコール配合割合ラベル表示に景表法措置命令。輸入業者メイフラワーに処分(2020年5月19日 消費者庁)

・消費者庁、新型コロナウイルス予防商品緊急監視 30事業者による46商品の表示に改善要請(消費者庁  2020年2月25日~3月6日)

・根拠なし新型コロナの感染予防効果、34事業者41商品の表示に改善要請。消費者庁の緊急監視(第2弾) (消費者庁  2020年3月9日~3月19日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。