埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。1事業者に行政処分、25事業者に行政指導(埼玉県 2020年7月13日)

埼玉県が、県内の大学、高校と連携して、違反表示・広告等に対する監視に取り組んでいます。
2019年度に実施された不当表示広告調査では、県内の高校生1,359名(6校)、大学生105名(1大学)の計1,551名から、407事業者、計1,464件の広告表示が報告され、半数を超す208事業者(407件)について不当表示のおそれがありました。
県では、報告があった1,464件を精査し、令和2年3月31日に1事業者に対して行政処分、25事業者に対して文書による行政指導を行っています。

このような取り組みは埼玉県だけでなく、国や他の自治体においても、一般消費者に不適切な広告表示の調査モニターを委託して、事業者指導に活用しています。
消費者庁では、「電子商取引監視調査システム」により、一般消費者の方に「電子商取引表示調査員」として、インターネット上の広告表示等について調査を委嘱して、問題となるおそれがあると思われる表示について報告を受け、景品表示法違反事件の端緒の発見、景品表示法の遵守について啓発するメールの送信等に活用しています。

・電子商取引監視調査システム(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/e_commerce/

また、同様に東京都では20歳以上の都民に対象に、食品表示調査(調査員:200人)、表示・広告調査(調査員:200人)、計量調査(調査員:100人)を委託しています。

・令和2年度「東京都消費生活調査員」を募集
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/01/10/08.html

今回取り上げた埼玉県の取組は、成人ではなく学生を調査員の対象にしています。
これは、調査を通じて次代を担う大学生、高校生が不当表示等に関する正しい知識を得ることにより、消費者被害の未然防止を図るという、若年者への消費者教育も意図された取組となっています。
調査報告書の実施校の所感には、「生徒の感想の中で、「このようなウソの広告はやめてほしい」「このような調査が必要になってしまう社会がおかしい、悲しい」などの高校生らしい率直な意見が例年聞かれる。」というコメントもありました。

内容を確認します。



広告媒体別件数
調査媒体は以下の通り。
(1)雑誌(週刊誌、ファッション誌、情報紙等)の掲載広告
(2)新聞紙上の掲載広告
(3)新聞折り込みチラシ(調査学生・生徒の自宅のチラシ)
(4)フリーペーパーやミニコミ誌の掲載広告
(5)インターネットの広告(メールマガジン等の広告を含む)
(6)スマートフォンの広告(メールマガジン、情報発信アプリ等の広告を含む)
(7)店頭の広告

調査媒体の選定は各校が任意に選定している。
報告件数と不当表示のおそれありの件数の媒体別内訳は、スマートフォン548件中129件(23.5%)、インターネット507件中125件(24.7%)、新聞250件中98件(39.2%)、折込チラシ71件中26件(36.6%)、雑誌39件中14件(35.9%)、店頭19件中4件(21.0%)、フリーペーパー9件中3件(33.3%)、その他21件中8件(38.1%)。

不当表示の媒体別傾向について、件数ではスマホやネット広告がいずれも3割以上を占め多いが、報告件数に占める不当表示のおそれの割合では、紙媒体の方が高くなっている。

商品・サービス別件数等
調査対象について、特定の商品類は指定していない(大学は、食品表示に限定。)。
報告件数と不当表示のおそれありの件数の商品・サービス別内訳は、報告件数の多い上位3分類について、ダイエット関係が635件中104件(16.4%)、美容関係255件中126件(49.4%)、健康関係224件中85件(37.9%)となっている。

事業者の状況
報告があった1,464件を事業者別に集計したところ、同一商品の報告の重複により、407事業者となった。407事業者のうち、不当表示のおそれがあると思われるものは計208事業者であった。

違反被疑表示事例と指摘事項
報告のあった表示事例のうち、主な違反のおそれのある事例と学生・生徒の指摘事項については、次のとおり。

今回の調査から、埼玉県は令和2年3月31日に、1事業者に対して行政処分を行ったとしています。具体的な処分内容は明かされていませんが、埼玉県が公表した同時期の行政処分としては、(株)ニコリオのダイエットサプリメントの表示に対する処分が該当すると考えられます。

・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日)

調査事業は今年度も実施する予定で、現在、協力校を募集しています。
令和2年3月31日閣議決定された第4期消費者基本計画(令和2~6年度)では、令和4年4月から民法の成年年齢が18歳に引下げとなることも踏まえ、消費者市民社会の形成に参画することの重要性の理解と、社会において一消費者として主体的に判断し、責任を持って行動できるような能力を育むための取組を推進すると示されています。

消費者基本計画等(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/basic_plan/

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令和元年度大学・高校との連携による不当表示広告調査結果について
(埼玉県 2020年7月13日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0310/jigyousyasido/01gakkourenkei.html
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《関連記事》
消費者の東京都への悪質事業者通報、通販が5割超、誇大広告は健康食品関係が約2割(東京都 悪質事業者通報サイトの通報概要(令和元年度))

消費者からの広告表示に対する厳しい目 東京都「悪質事業者通報サイト」に大幅通報件数増加(東京都 2019年6月27日)

・JAROへの苦情、通販定期購入契約の苦情は減少せず。ネット広告への苦情二桁増続く (日本広告審査機構 2018年度の審査概況)

ネット通販トラブル疑似体験や通報窓口設置 「消費者力」向上を目指す自治体の取り組み

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。