先日の記事では、新型コロナウイルスの感染拡大により、除菌や消毒等を目的とするアルコール含有商品に対する消費者相談が増えていることをお伝えしました。
同じく、新型コロナウイルス感染拡大の影響により増加していると考えられる消費者トラブルに、ネット通販トラブルがあります。
国民生活センターの公表によると、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に登録されたネット通販のトラブルの割合が増加傾向にあり、5月には24,701件で相談全体の30%を超えています。(2019年5月は16,184件、20.0%)
販売購入形態別の相談件数でみると、「通信販売」は「店舗購入」を越えて最も高い割合を占めており、その中でもインターネット通販が多く、2019 年7~9月以降は増加傾向にあり、2020 年4~6月には 30%を超えています。
また、「ネガティブ・オプション」(※)の件数が大きく増加しているのは、新型コロナウイルス感染拡大の混乱に伴い、マスク等の送り付けに関する相談が多数寄せられたことによるものです。
(※)
ネガティブ・オプションとは、注文していない商品を、勝手に送り付け、その人が断らなければ買ったものとみなして、代金を一方的に請求する商法。
2020 年4~6月において、ネット通販に関して相談件数の増加がみられた商品・役務は、「健康食品」「他の保健衛生用品」「紳士・婦人洋服」「オンラインゲーム」などでした。
トラブルの特徴を確認してみましょう。
1)「お試し」定期購入 (健康食品、化粧品、飲料)
「健康食品」に関する相談は、新型コロナウイルス感染拡大の影響以前の2019 年7~9月以降の各四半期で最多となっている。
「お試し○円」などと通常より低価格で購入できることを広告する一方で、複数回の購入が条件となっている、定期購入トラブルに関するもので、「化粧品」「飲料」についても、同様のトラブルがみられる。
未成年者のトラブルが目立っていることも特徴で、初回価格が安いことから、「お小遣いの範囲で買えると思って契約したが、2回目以降に予期せぬ高額請求を受け、支払えない」、「新型コロナウイルスの影響により臨時休校中で、スマホで動画投稿サイトを見ることが多くなり、動画視聴中に出てきた広告を見てダイエットサプリを申し込んだが、定期購入だった」という相談がみられた。
ネット通販の定期購入トラブルについては、感染拡大の影響以前からトラブルが急増しており、消費者庁や埼玉県が、特商法や景表法に基づく行政処分を行っており、規制強化の議論が進んでいます。
・2019年度の通販「定期購入」契約相談が5万件超に。規制強化の議論が進む
2)詐欺的な通販サイト(身の回り品:紳士・婦人洋服、かばん、靴・運動靴、家具類)
洋服やかばん、靴など身の回り品に関する相談件数が、2020 年1~3月から4~6月にかけて、増加。「注文した商品が届かない」「粗悪品・模倣品が届いた」など、詐欺的な通販サイトに関するトラブル。
家具類の相談では、「在宅勤務が増え、オフィス用チェアを購入しようとしたが、代金振り込み後にサイトが表示されなくなった」など、生活様式が変わったことに伴って購入した商品に関するトラブルもみられた。
これらの相談は、40~50 歳代で件数が増加しており、ネット通販を使い慣れていない人がトラブルに遭っている事例もみられた。
3)新型コロナウイルス感染対策商品(他の保健衛生用品、他の医療機器、医薬品類)
マスクを含む「他の保健衛生用品」、体温計を含む「他の医療機器」、消毒用アルコールを含む「医薬品類」に関して、コロナ禍の混乱に伴い、2020 年2月以降、「高額な値段で販売されている」「商品が届かない」「粗悪品が届いた」などの相談が多数寄せられた。
現在、こうした混乱状況は落ち着き、以前よりも商品が店舗等で手に入るようになってきているため、相談件数は減少傾向。
4)オンラインで提供されるサービス(デジタルコンテンツその他、オンラインゲーム)
映画配信サービスに関する相談では、「退会したはずの動画配信サイトの料金が請求されている」等の相談件数が、2020 年2月以降、急増。
オンラインゲームに関する相談では、「未成年の子どもがオンラインゲームで高額な課金をしてしまった」というケース。トラブルのきっかけは、「休校により子供の在宅時間が増え、家でゲームをしていた」「仕事で家を留守にするため、休校で家にいる子どもにスマホを渡してゲームをさせていた」など、新型コロナウイルス感染拡大による休校の影響と思われる事例がみられた。
オンラインゲーム等の普及に伴って未成年者による高額利用トラブルが増加していることを受け、2018年の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂において、「未成年者のうち意思無能力者が申込みを行った場合には、契約は無効となる。」ことと「未成年者が取引の相手方に対して、成年者であると誤信させるために「詐術を用いた」といえるかの判断」についての記載が追記されています。
・未成年者の「詐術」の判断基準「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。
(経済産業省 平成26年8月)
・「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。未成年者の「詐術」の判断基準具体化へ(経済産業省 平成28年6月)
コロナ禍での「新しい生活様式」に通信販売の利用が推奨され、ネット通販利用のすそ野が広がる中、不慣れな消費者がトラブルに遭っているケースも見られます。
返品・解約の条件の記載も含め、ネット通販初心者にも分かりやすい商品や取引条件についての情報提供が求められますね。
《関連記事》
・健康食品や化粧品等、通販で定期購入契約を行う際の広告に、販売条件の明記が義務付けに(特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(平成29年6月30日公布))
・通販の定期購入契約で気を付けたい特商法の留意事項とは。購入手続き画面表示の具体例(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))
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