「禁止出品物」ルールに見る CtoCプラットフォームのマスク高額転売対応

今日のトピックはマスク高額転売問題です。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、マスクや消毒薬の買い占め、品切れ問題で非難が集まっていたフリマでの高額転売ですが、フリマアプリ「メルカリ」や、オークション
サイト「ヤフオク!」では、いち早く高額転売に対する取引制限の依頼をユーザーに呼びかけました。
(「メルカリ」は2月4日付、「ヤフオク!」は2月5日付)

消費者庁でも、2月6日にデジタル・プラットフォーマー各社に対し転売目的のマスク等の購入は望ましくない旨、利用者への啓発等を要請していますが、行政からの働きかけがなくても自発的に動いたと言えそうです。


◆消費者庁 on Twitter: 2020年2月6日
 https://twitter.com/caa_shohishacho/status/1225337686669455360

メルカリとヤフオク!の対応を比較してみると、メルカリがヤフオク!より1日早く対応を公表しましたが、その後の動きでは、ヤフオク!が更に踏み込んだ対応をとっています。

マスクの転売はチケットの転売と異なり、個人間での取引を規制する法律はなく、当初は両者ともに「禁止出品物」指定していませんでした。

メルカリでは「マスクは禁止出品物には該当しませんが、社会通念上適切な範囲での出品・購入にご協力をお願いします」という「お願い」と共に、取引状況によっては、入手経路を確認したり、商品の削除、利用制限措置をとったりする可能性もあると示しました。


◆マスクの取引に関するご協力のお願い(メルカリ 2020年2月4日)
 https://jp-news.mercari.com/2020/02/04/notice-about-listing-facemasks/

一方、ヤフオク!では、5日付の公表では、「必要な方が必要な量の商品を確保できるよう、ご配慮くださいますようお願いします」に留められていましたが、7日付で以下の通り「出品禁止物」についてガイドラインの改定を発表しました。

出品禁止物:
災害などの緊急事態において、供給不足により人の身体・生命に影響がある物品を不当な利益を得る目的で入手し、出品していると当社が判断する出品

ガイドラインに違反すると判断した場合は、出品の削除等の措置を実施することがあると示しました。

◆マスクや除菌用品の出品について(ヤフオク! 2020年2月5日)
 https://auctions.yahoo.co.jp/topic/notice/other/post_2718/

◆ヤフオク!ガイドライン細則の改定について(マスクの出品について)
(ヤフオク! 2020年2月7日)
 https://auctions.yahoo.co.jp/topic/notice/rule/post_2721/

ヤフオク!の公表以降、現時点でメルカリの動きは見られないことから、メルカリとしては、禁止出品物指定に慎重な姿勢がうかがわれます。
「社会通念上適切な範囲での出品・購入」というニュアンスでは、今後同様の事態が発生した時に、スピーディな対応をとることが難しいように感じます。

他方、流通業界に対しては、2月7日に厚労省と経産省が消毒薬などの安定的な供給について、業界団体に向けて以下のような内容を傘下の企業・薬局等に周知要請しています。

「製造販売業者や卸売販売業者に対して過剰な発注は行わない」
「買い占めや備蓄目的での過剰な在庫を抱えない」
「販売にあたっては「1人1箱まで」「1人○枚まで」といった販売制限を行う」
「転売目的の購入は望ましくない旨の店内掲示を行う」
「製造販売業者や卸売販売業者の分割納入に協力する」

◆新型コロナウイルスに関連した感染症の発生に伴う
 マスク・消毒薬など衛生用品の安定供給について(厚生労働省 2020年2月7日)
 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000593804.pdf

こちらも、法的強制力があるわけではありませんが、そこは事業者ですのである程度の働きかけの効力がありそうです。

法的規制が及ばない問題が生じたときに、BtoCとCtoCでは対応が異なる点が多々生じることと思います。

消費者庁では、現在「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」が進められていますが、具体的な消費者被害が出ていない問題についても、検討がなされることを期待したいと思います。

◆デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会(消費者庁)
 https://www.caa.go.jp/about_us/about/plans_and_status/digital_platform/

≪関連記事≫

・チケット不正転売禁止法施行とフリマ・オークションサービス事業者

・東京都サイバー薬事監視の取組(2)【フリーマーケットサイト(C to C)編】

・東京都、フリマサイト薬事監視強化。フリマサイト6社に加え、Twitter Japanと連携
(東京都福祉保健局 2019年2月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。