打消し表示の規制が強まっています。
先日の(株)ユニクエストの葬儀サービスのWeb広告に関する景品表示法の措置命令事案では、「追加料金一切不要」と記載したサービスの打消し表示が問題となっていました。
同事案では、サービスの対象外となる、追加料金が発生する内容についての打消し表示が記載されていましたが、消費者の有利誤認を打消す表示として、認められませんでした。
今回問題となったスマートフォン向けウェブ広告における「打消し表示」の景品表示法上の留意点を解説します。
【違反表示内容】
あたかも、対象役務の提供に当たって必要な物品又は役務を追加又は変更する場合でも、記載された価格以外に追加料金が発生しないかのように表示をしていたが、実際は、追加料金が発生するものであった。
●打消し表示について
不当表示内容を記載したウェブページとは別のページに、追加料金が例外的に発生する場合がある旨を記載していた。
しかし、当該記載は、リンク先に追加料金に関する重要な情報が存在するとは記載されていない「よくある質問」等のリンクテキストをクリックしなければ表示されない。
よって、一般消費者が対象表示から受ける当該サービスに関する認識を打ち消すものではない。
今回の措置命令を受けて、ユニクエストはウェブページの記載を修正しています。
スマホサイトの修正された表示のポイントを確認しました。

【スマホサイトの修正ポイント】
・プランの総額表示に問題となった「追加料金一切不要」の表示に代わって、「葬儀に必要な物品・サービスを含んで※」と記載。
・「※」記号により、強調表示に対する打消し表示であると示し、強調表示の同一視野上の下部に「プラン料金以外に費用がかかる場合」と記載されたリンクテキストを記載。
・打消し表示は「プラン料金以外に費用がかかる場合」をタップした後、アコーディオンパネルに表示されている。
・初期の状態では、「プラン料金以外に費用がかかる場合」のケースの項目ラベルのみが表示されており、各項目に対する回答は表示されていない。
・各項目のラベルをタップすると各項目に対応する詳細情報が表示される。 例えば、「火葬場の空き状況により各プラン既定の安置日数を超えてしまう場合」のラベルをクリックすると、詳細情報が表示される。

【更なる改善が求められるポイント】
・打消し表示のリンクテキストの大きさも、強調表示と同程度にする
・強調表示と打消し表示のリンクテキストの文字の色や背景の色を統一する
・打消し表示についての記載は項目ラベルの記載をそれぞれクリックしなければ表示されない。打消し表示をアコーディオンパネル内ではなく、Webページ上に表示する
消費者庁が2017年7月に公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」及び、2018年5月に公表した「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」より、打消し表示の表示内容、打消し表示の表示方法について、景品表示法上の問題となるおそれがあるポイントを確認しましょう。
調査に用いた表示例の改善例も示されています。
●打消し表示の表示内容(例外型の打消し表示)
商品・サービスの内容や取引条件を強調した表示に対して、何らかの例外がある旨(打消し表示)を記載しているが、一般消費者が打消し表示を読んでも具体的な例外事項の内容を理解できない場合。
●全ての媒体に共通して問題となる表示方法
・一般消費者が打消し表示を見落としてしまうほど文字が小さい場合。
・(打消し表示が強調表示の近くに表示されていても)強調表示が大きな文字に対して、打消し表示が小さな文字で表示されている。
・打消し表示の背景が無地の単色ではなく、複数の色彩が入り組んでおり、 打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合。
・(一般消費者が見落としてしまうほど小さくない場合であっても)打消し表示が強調表示から離れた場所に表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない場合。
・(打消し表示に気付いたとしても)当該打消し表示が、離れた場所に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合。
●Web広告において問題となる表示方法
・強調表示の位置から1スクロール以上離れた場所に打消し表示が表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない場合。
・打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、離れた場所に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合。
※一般消費者が認識できるか否かを判断する際は、(ⅰ)強調表示の前後の文脈や強調表示の近くにある記号等から一般消費者が打消し表示の存在を連想するか否かという点に加えて、(ⅱ)どの程度スクロールする必要があるのかという点等も勘案される。
●スマートフォンのWebページ上でアコーディオンパネルに打消し表示を表示する場合
通常の画面に強調表示を表示した上で、アコーディオンパネルに打消し表示を表示する際は、強調表示を見た者がすぐに重要な情報があることを認識できるように、強調表示に近接した箇所にラベルを配置するなどして、強調表示とアコーディオンパネルに表示された打消し表示とが一体として認識されようにすることが求められる。
また、アコーディオンパネルの表示方法について知らない者も一定数みられることからも、アコーディオンパネルに表示された打消し表示の内容を、通常の画面において強調表示に隣接した箇所に表示することや、強調表示が画面に表示された際に、打消し表示の表示されたアコーディオンパネルのラベルを一般消費者が必ずタップするように工夫することが求められる。
【調査に用いた表示例①の改善例】
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0006.pdf
上記のような問題となる表示方法により、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できず、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがあります。
Web広告以外にも、打消し表示を行う際の留意事項がありますので内容を確認しておきましょう。
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打消し表示に関する実態調査報告書
(消費者庁 平成29年7月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180921_0001.pdf
スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書
(消費者庁 平成30年5月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0002.pdf
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《参考記事》
・TSUTAYAの措置命令で考える、「打消し表示」の景品表示法上の留意点
・痩身系健康茶、ティーライフ(株)に対し景表法措置命令。体験談広告の問題点は?(消費者庁:平成29年9月29日)
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