デジタル・プラットフォーマーによる個人情報の取扱い、独占禁止法に基づく規制を明確化(公正取引委員会 平成31年8月)

先日の記事で取り上げた平成30年度「消費者意識基本調査」によると、「インターネット上の利用履歴などの個人データの取扱いの適正化」に対して、6割の消費者が今後の消費者政策上、特に重要になると回答していました。

このような消費者ニーズがある中で、公正取引委員会は2019年8月に、「デジタル・プラットフォーマー」と呼ばれるSNSやECサイトなどを運営する巨大IT企業を、独占禁止法に基づいて規制する指針案(※)を公表しました。

指針案では、デジタル・プラットフォームを利用する消費者が、デジタル・プラットフォーマーに提供する個人情報等の取得、利用について、「優越的地位の濫用」の観点から、問題となる考え方を示しています。

「優越的地位の濫用」とは、消費者がデジタル・プラットフォーマーから不利益な取り扱いを受けても、消費者がサービスを利用するためには、これを受け入れざるを得ないような場合が該当します。

独占禁止法の目的は、「公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」とされており、消費者保護の法律ではありませんが、「優越的地位の濫用」における「取引の相手方」には、事業者だけでなく消費者も含まれます。

デジタル・プラットフォーマーが提供するサービスを利用する際に、消費者が、その対価として自己の個人情報等を提供している場合は、消費者はデジタル・プラットフォーマーの「取引の相手方」に該当するとしています。

指針案で示された優越的地位の濫用行為の類型として、以下の4つが挙げられています。

(1)利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得する
(2)利用目的に必要な範囲を超えて、消費者の意思に反して個人情報を取得・利用する
(3)個人情報の安全管理のために必要な措置を講じていない
(4)サービスを継続して利用する消費者に対し、サービスの対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報等を提供させる

中には、個人情報保護法には違反しない場合であっても、優越的地位の濫用として問題となり得るケースがあります。

例えば、「利用目的を『商品の販売』のためだとして収集した個人情報を、消費者の同意なくターゲティング広告に利用した場合」や、「『同意』を得ても、それがサービス利用のための「やむを得えない同意だった場合」」などがあります。

公取委では、2019年1月より、デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての情報提供を事業者や消費者から広く受け付けています。

このような国の取組により、消費者がオンラインサービスを不安なく利用でき、市場の独占化・寡占化に少しでも歯止めがかかることを願います。

(※)
「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の乱用に関する独禁法上の考え方」(案))に対する意見募集について
(公正取引委員会 2019年8月29日)
 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/aug/190829_dpfpc.html

◆デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての
 情報提供窓口の設置について
(公正取引委員会 2019年1月23日)
 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jan/190123_1.html

◆デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会
 https://www.jftc.go.jp/soshiki/kyotsukoukai/kenkyukai/platform/index.html
(公正取引委員会)

《関連記事》
・「規約を一方的に変更された」出店者、楽天市場で93%、アマゾンで73%、ヤフーで50%(公正取引委員会 平成31年4月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。