まとめサイト非公開事件。厳しく問われる広告メディアコンテンツの質

まとめ記事サイト(キュレーションサイト)の記事掲載停止の問題が拡大しています。
問題の発端となったのは、ディー・エヌ・エー(DeNA)の医療関連などの情報をまとめたサイト「WELQ(ウェルク)」。
記事の信憑性や無断転用がネット上でユーザーに指摘され炎上したことから、11月29日にすべての記事の非公開と、取り扱いのある全ての広告商品の販売停止に追い込まれました。12月1日には、WELQと共通する運営体制・方針の8つのメディアを、5日にはMERY を含む全てのキュレーションプラットフォームサービスの記事の非公開化を発表しました。

※記事非公開化となったDeNAのまとめサイト
WELQ(ウェルク):医療
iemo(イエモ):インテリア
FindTravel(ファインドトラベル):旅行関連
cuta(キュータ):出産・子育て
UpIn(アップイン):マネー
CAFY(カフィ):料理
JOOY(ジョーイ):メンズファッション等
GOIN(ゴーイン):自動車
PUUL(プウル):マンガ・アニメ
MERY(メリー):女性向けファッション等

この問題は、他の大手のサイトにも拡大しています。

サイバーエージェント:
12月1日から、情報サイト「Spotlight(スポットライト)」の医療関連の記事で、内容の正確性を確認できないものの公開停止。(全体の数%)
リクルートライフスタイル:
12月1日から、グルメや美容などの情報サイト「ギャザリー」の健康関連記事を中心に全体の4分の1に当たる約一万六千の記事の公開中止。
ヤフー:
10月、女性向けファッションを扱う「TRILL(トリル)」の記事の画像に、他サイトから無断転用があったとして、記事削除。

今回の問題は、広告収入を上げるためのSEOを目的とした不適切なコンテンツの量産によるもので、ユーザー(消費者)不在のビジネスモデルの一人歩きともいえます。
もともと、インターネットは個人が自由に情報発信できるメディアであり、その情報の信憑性を担保されたものではなく、ユーザーが真偽を見極めなければならないメディア特性を持ちます。
しかし、企業が運営する以上、その情報提供にはモラルやコンプライアンスが求められることは言うまでもありません。

今回のDeNAの「WELQ(ウェルク)」については、都福祉保健局も薬機法の観点から問題視していました。

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東京都、WELQ問題でDeNAを“呼び出し” 「同様な他サイトへの対応も検討」
(ITmedia ニュース 2016年11月30日)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1611/30/news084.html
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報道によると、WELQが非公開になる前日の28日、都福祉保健局の薬事監視担当課が「事情を聞きたい」と、DeNAの担当者に対して来庁を依頼しましたが、DeNAの担当者が多忙のため面会は実現しなかったといいます。

一般ユーザーのみならず、行政からの指摘に対しても対応が鈍く、組織的にも、経営トップにもモラルやコンプライアンス意識が欠如していたと言わざるを得ません。
DeNAの社長の守安功氏は、一連の事態について、以下のように述べています。

マニュアルやライターの方々への指示などにおいて、他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねない点がございました。この点について、私自身、モラルに反していないという考えを持つことができませんでした。

——–
代表取締役社長兼CEO 守安功からの一連の事態に対するお詫びとご説明
(ディー・エヌ・エー(DeNA)プレスリリース 2016年12月1日)
http://dena.com/jp/press/2016/12/01/1/
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上記の発言から、組織的に不正なサイト運営を行い、経営トップもそれを問題だと認識していなかったことが分かります。ひいては、今回のようなITメディア業界を揺るがす大きな事件にまで発展してしまったと言えるでしょう。

都福祉保健局の薬事監視担当課の河野安昭担当課長は、以下のようにコメントしています。

WELQは医薬品販売サイトではないため、従来は監視対象ではなかったが、情報サイトであっても、『特定の商品がこういう病気に効く』と記載すると法的には医薬品に当たる。WELQの記事は薬機法の観点からも問題があると判断した。
医療に関する不正確な情報や、薬機法違反とみられる情報を掲載しているサイトがWELQ以外にも多数あることは承知しており、「WELQだけではなく、そういったサイトにどう対応するかも含めて協議していく。広がりがあるということなら、都だけでなく国との協議も必要かと考えている。

(東京都、WELQ問題でDeNAを“呼び出し” 「同様な他サイトへの対応も検討」(ITmedia ニュース 2016年11月30日))
薬機法や健康増進法の広告規制対象は「何人も」となっています。広告主だけでなくメディアも対象となります。また、メディアの記事に販売サイトが関連付けられている場合、一体の広告とみなされ違法となる可能性もあります。
今後は、ネットメディアも情報の責任を厳しく問われることはもとより、広告主となる事業者も、目先のアクセスだけでなく、広告メディアのコンテンツの質を厳しくチェックすべきでしょう。
景表法、薬機法、健康増進法など法規制の観点からだけでなく、一般消費者目線を強く意識する必要があります。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。