打消し表示への対応は万全に!29年度の消費者庁の広告表示適正化への取組

前回の記事では、消費者庁の「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※1)より、29年度の景表法違反状況を取り上げました。
今回は、29年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。
自社のコンプライアンス対策に、チェックしてみてください。

●「打消し表示に関する実態調査報告書」の公表
●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が86件
●公正競争規約の変更
●インターネット上の広告表示の監視調査は継続中
●都道府県との連携、協力関係強化
●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行


●「打消し表示に関する実態調査報告書」の公表
消費者庁表示対策課は、「打消し表示」について調査を行い、平成29年7月14日、「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表。

◆打消し表示に関する実態調査報告書
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/information_other/2017/

景品表示法の執行においても、この報告書で明らかにした考え方に基づく事実認定を行っている。
29年度に消費者庁が措置命令及び指導を行った事件のうち、打消し表示の効果についての考え方で、参考となる認定例は次のとおり。

・ソフトバンク株式会社に対する措置命令(平成29年7月27日)
・ティーライフ株式会社に対する措置命令(平成29年9月29日)
・葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の販売事業者16社に対する措置命令(平成29年11月7日)
・株式会社IDOMに対する措置命令(平成29年12月8日)
・株式会社e-chanceに対する措置命令(平成29年12月19日)
・東レ株式会社に対する措置命令(平成30年2月1日)
・マカフィー株式会社に対する措置命令(平成30年3月22日)

●「時間貸し駐車場の料金表示について」の公表
時間貸し駐車場の料金表示に関し、景品表示法上問題となり得るトラブルで多い「最大料金」表示とその適用条件、とりわけ当該条件の繰り返し適用の有無に関し、景品表示法上の考え方を明らかにした。

◆時間貸し駐車場の料金表示について
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171225_0001.pdf

●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が86件
不当表示等の発生を防止するために、事業者が講ずべき必要な体制の整備その他の必要な措置について、消費者庁は必要な指導及び助言、勧告をすることができる(景品表示法第27条、第28条第1項)。
勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。る(第28条第2項)
29年度は「指導及び助言」が86件となった。

●公正競争規約の変更
平成29年度に消費者庁長官及び公正取引委員会の認定した規約変更7件のうち、内容に実質的な変更があったものは次のとおり。

即席めん(表示)
食品表示法(平成25年法律第70号)に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の一部を改正し、全ての加工食品に原料原産地表示を義務付ける内閣府令(平成29年内閣府令第43号)が平成29年9月1日に施行されたことから、これに対応させる変更等を行った。(平成30年2月5日承認)

即席めんの表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:平成30年2月6日)
http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/023.pdf

ビール(表示)
平成29年度税制改正に関連し、酒税法(昭和28年法律第6号)におけるビールの定義が改正され、平成30年4月1日から施行されることから、これに対応させる変更等を行った。(平成30年2月20日認定、承認)

ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:平成30年4月1日)
http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/038.pdf

●インターネット上の広告表示の監視調査は継続中
消費者庁では、一般消費者に「電子商取引表示調査員」として、インターネット上の広告表示の調査を委託している。
・電子商取引表示調査員からの報告は、景品表示法違反事件の端緒の発見、景品表示法違反行為の未然防止の観点から行う事業者への啓発活動に活用している。
・29年度は、916件(前年度923件)が報告され、そのうち、景品表示法違反の問題があると認められたサイトは、188サイト(前年164サイト)172事業者(前年142事業者)。景品表示法の未然防止の観点から注意が行われた。

●都道府県との連携、協力関係強化
・都道府県における景品表示法の執行力の強化に向けて、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と協力して北海道・東北地区、関東甲信越地区、中部地区、近畿地区、中国地区、四国地区、九州・沖縄地区のブロックごとに年2回都道府県との連絡会議を開催し、景品表示法担当職員向けに研修を実施。
・都道府県職員対象の執行研修や、都道府県が行う景品表示法の運用に関して助言を行う。
・消費者庁は、平成24年4月1日から景品表示法に関する調査情報等を共有するネットワーク(景品表示法執行NETシステム)の運用を開始し(※2)、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等及び都道府県等との情報共有の緊密化、協力関係強化を図っている。

●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行
虚偽・誇大広告等に対しては、景品表示法及び健康増進法に基づく法執行が消費者庁の表示対策課食品表示対策室において行われた。
・平成28年6月30日に全面改訂を行った「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の周知に引き続き注力。
・インターネット上で特定保健用食品及び機能性表示食品の虚偽・誇大広告の監視を行い、健康増進法第31条第1項(誇大広告の禁止)の規定に違反するおそれのある事業者に対しては、表示の改善を要請した。
・景品表示法措置命令1件(前年度7件)のほか、健康増進法第31条第1項に違反するおそれがある事案について34件(前年度46件)の指導を行った。

●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf

●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(全部改定 平成 28 年6月 30 日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf

28年度に増加した景表法違反の処分件数ですが、29年度にはさらに倍増となりました。
消費者庁の表示適正化への取り組みで特に注目すべきは「打消し表示に関する実態調査」で、都道府県や広告媒体事業者、事業者団体等に積極的に研修を行い周知に努めています。
措置命令事案において打消し表示に対する評価を行った事案については、打消し表示の効果についての考え方をよく確認しておきましょう。

また、課徴金制度を始めとした法執行や、健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行強化の流れはさらに進むと考えられます。

事業者の皆さんには、一層の管理体制への取り組みが求められます。
広告法務のリスクマネジメントについて、お気軽にご相談ください。

(※1)
平成29年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180615_0002.pdf

(※2)
消費者庁『景品表示法執行NETシステム』運用開始!景品表示法執行が迅速化?
http://blog.fides-cd.co.jp/article/265751202.html

《関連記事》
・消費者庁が本気で調査!打消し表示は明瞭に

・景表法改正、事業者が講ずべき広告表示の適正管理の指針案(消費者庁 平成24年8月8日)

・景表法改正、広告表示の適正管理のための7つのポイン+1

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。