「SNOW」にステマ告示10件目の措置命令。Xでは初、自社転載を伴わない直接投稿が対象に(消費者庁 2026年8月6日)

2023年10月の施行から10事案目となるステルスマーケティング告示の行政処分です。

消費者庁は2026年8月6日、写真加工アプリ「SNOW」を提供するSnow Corporation(大韓民国京畿道)およびSNOW Japan株式会社(東京都品川区)の2社に対し、景品表示法第5条第3号(ステルスマーケティング告示)による措置命令を行いました。
SNOW Japanは、第三者に対し、対価の提供を条件に同社が指示する方針に沿ったSNS投稿を依頼。当該第三者の投稿にPR表記等の関係性表示がなかったことから、一般消費者が事業者の表示であることが判別困難な表示とみなされました。

これまでSNS投稿を対象としたステマ告示事案は、直近では今年6月29日の高光製薬をはじめとし、RIZAP・大正製薬・ロート製薬・ダイエットプレミアム・フレイスラボの6件があり、いずれもInstagramが表示媒体でした。本件は、X(旧Twitter)が対象となった初めての事案です。
また、これら6件がインフルエンサー投稿の自社メディアへ転載を違反表示としていたのに対し、本件はSNS上のインフルエンサー投稿そのものが違反認定されている点も初めてのケースとなります。

本記事では処分の概要と違反認定基準、PR表記漏れの実務上のインパクト、および海外の親会社とその日本法人2社が処分対象となった景表法上の考え方について確認します。
続く会員限定記事では、これまでのステマ告示措置命令10事案および確約認定事案の違反認定(違反被疑)傾向を分析し、実務担当者が留意すべきポイントを解説します。

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「SNOW」と称するアプリケーションの利用サービスの提供事業者2社に対する
景品表示法に基づく措置命令について  (消費者庁 2026年8月6日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/047140
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違反概要

事業者名代表者所在地事業内容
Snow Corporation代表理事 キム チャンウク (SNOW Japanの代表取締役を兼任)  大韓民国キョンギド ソンナムシ プンダ ング プルジョンロ 6、15チュンソフトウェア開発・制作、販売等の事業
SNOW Japan株式会社代表取締役 金 暢旭東京都品川区西品川 1丁目1番1号 住友不動産大崎ガーデンタワー22階
※Snow CorporationはSNOW Japanの議決権を全て保有。Snow CorporationはSNOW Japanに対し、本件役務の日本向けコンテンツの制作、日本語への翻訳、日本国内における利用者からの問い合わせ対応及び日本国内における販促業務を委託している。両社は本件役務を共同して供給している。

【対象役務】
「SNOW」と称するアプリケーションの利用サービス

【表示媒体・表示箇所】
X(旧Twitter)内の、第三者(インフルエンサー等)の投稿
投稿は72件

【表示期間】
表示が終了している投稿(70件):
2025年4月2日〜2026年6月25日(投稿ごとに表示期間は異なる)

2026年8月6日時点で表示中の投稿(2件):
2025年4月11日以降

【違反表示内容】
SNOW Japanが、第三者に対し、対価の提供を条件に、Xに、SNOW Japanが指示する方針に沿った投稿をすることを依頼したことによって、当該第三者が、「最近流行ってるSNOWのAI生成、めっちゃかわいいし楽しい」等、SNOWのAI生成機能を紹介する投稿をしていたことから、2社が本件役務に関する投稿表示内容の決定に関与しているものであり、当該投稿による表示は事業者の表示と認められる。

表示例)

(消費者庁発表資料より抜粋)

上記表示は、SNOW Japanが第三者に依頼した投稿であることを明らかにしておらず、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められない。
よって、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。

「事業者の表示」の判断基準

本件では、以下の3点から、第三者の表示が「事業者の表示」と認定されています。

  1. 事業者がインフルエンサーに対し、対価の提供を条件に
  2. SNS(X)に事業者が指示する方針に沿った投稿を依頼し、
  3. その依頼によって、インフルエンサーが投稿している

本件では、事業者から投稿内容への指示があり、公表文にも違反認定を受けた表示内容としてSNOWのAI生成機能を紹介する投稿内容が具体的に示されています。
ただし、投稿内容への具体的な指示がない場合であっても、個別に投稿を依頼し報酬を受け取るという関係性(第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性)があれば「事業者の表示」に該当する可能性が高いでしょう。(※)

(※)ステルスマーケティングに関するQ&A Q19
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing

自社メディア転載よりダメージが大きいSNS投稿ステマ

これまでのSNS投稿を対象とした6件の違反事案では、いずれも、事業者がインフルエンサー等にSNS投稿(Instagram)を依頼し、その投稿を自社ウェブサイト等に抜粋転載する際に、「PR」など事業者の表示であることの明示がなかったことが問題となりました。SNS上の投稿自体はステマ認定を受けていないことから、SNS上の投稿には事業者の表示の明示がなされていたことが推察されます。
他方、本件はこれと異なり、SNS(X)上の第三者投稿そのものにPR表記が欠落していたことが、ステマ告示違反認定となっています。事業者の管理が容易な自社メディア上に比べて、事業者の管理が煩雑となる第三者のアカウント上で違反表示が生じており、かつそこに存在し続けている点が特徴です。

ひとたびステマ告示違反の措置命令を受けると、ステマ表示を速やかに取りやめなければなりません。前者のケースのように自社メディア上の表示であれば、表示の是正は比較的速やかに行うことが可能ですが、後者の場合、事業者自ら投稿者に対して投稿削除や是正を依頼しなければなりません。

本件2社は、本件措置命令が発出された時点において違反認定された表示72アカウントのうち、2件が削除されておらず、表示を取りやめるよう命じられています。
事業者の表示となる第三者の投稿が、事業者自身のメディアではなく分散した第三者のアカウント上に存在するため、大半を早期に収束できたとしても、一部で取りこぼしが生じうることを、この2件は示しています。

同様の課題は、ステマ告示の初適用となった祐真会の事案でも見られました。祐真会の事案では、違反認定された45アカウントのうち35件が、措置命令が出された時点で削除されていませんでした。
《参考記事》
・医療法人社団祐真会、Googleマップの口コミ投稿にステマ告示初の措置命令(消費者庁 2024年6月7日)

第三者投稿施策に求められる広告管理の徹底

対価を伴う投稿依頼を行う以上、インフルエンサーへの表記指示と、その履行状況の管理を徹底することが求められます。
大規模キャンペーンなど多数の投稿依頼で、PRなど事業者の表示であることの明示が漏れてしまうと、事後的に多数の投稿者へ個別に連絡し、削除や是正要請、履行確認を行うという多大な対応コストの発生に繋がりかねません。
第3号告示は課徴金賦課の対象ではないからといって、事業損失は軽いと考えるのは早計です。

会員限定記事では、本事案を含む、これまでのステマ告示措置命令10事案および確約認定事案の違反認定(違反被疑)傾向を分析し、実務担当者が留意すべきポイントを代表事案とともに詳しく解説します 。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。