No.1不当表示、特商法の通信販売規制でも。法改正後2件目の処分、ネット通販定期購入(株)サンに業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年3月15日)

今年の2月以降、「No.1」表示に対する景品表示法による処分が11社に対して立て続けに発出されていましたが、今回は特定商取引法による処分が出されました。

消費者庁は、2024年3月14日、健康食品を販売する通販事業者の(株)サン(本店所在地:東京都新宿区)と同社代表取締役峯岸直樹に対して、特定商取引法違反で3カ月間の業務停止(禁止)を命じました。
処分となった内容は、通販の定期購入最終確認画面の表示義務違反、公平・公正な方法で行われた調査とは認められないNo.1表示に対する誇大広告によるものです。
本件の「No.1」表示が不適正とみなされたポイントも、昨今、景表法での処分事案と同様に、不適切な「調査対象者」、「調査選択肢」、「調査方法」によるものでした。
特商法には通販の表示事項等について、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止する誇大広告禁止規定(12条)があり、今回、「No.1」表示に初めて適用されました。

本件が特商法での処分適用となったのは、No.1表示だけでなく、通販での詐欺的な定期購入商法への措置と考えられます。
本件は、2022年6月1日に施行された詐欺的な定期購入商法対策を目的とした、定期購入契約での「最終確認画面」の義務表示事項を定めた特定商取引法改正後、2件目となります。

通販においては、誤認表示違反は景表法だけでなく特商法でも規制対象となります。
処分の内容と、両法の規制内容の違いを確認しておきましょう。

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特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに
当該業者の代表取締役に対する業務禁止命令(3か月)について
(消費者庁 2024年3月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036684/
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【事業概要】
処分対象事業者:株式会社サン(東京都新宿区)
取扱商品:「PLatte」と称する健康食品
取引類型:通信販売 自社ウェブサイト「https:// www.Sunincshop.jp/」
代表者:代表取締役 峰岸峯岸直樹

【認定した違反行為】
同社は、次のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、通通信販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがあると認められた。
(1)誇大広告(特定商取引法第12条)
少なくとも2023年11月7日から2024年1月9日までの間、ランディングページにおいて、
「10冠達成」
「女性に人気のダイエットドリンクNo.1」
「ダイエット実感値の高いダイエットドリンクNo.1」
「トレーニング後に飲みたいダイエットドリンクNo.1」
「美味しく続けられるダイエットドリンクNo.1」
「体を内側から整えてくれるダイエットドリンクNo.1」
「満足度が高いダイエットドリンクNo.1」
「オススメしたいダイエットドリンクNo.1」
「安心して始めやすいダイエットドリンクNo.1」
「こだわりが感じられるダイエットドリンクNo.1」
「注目度が高いダイエットドリンクNo.1」 等と表示。

あたかも、本件商品及び他の事業者が販売する類似商品について、実際に体験した者を対象に、「女性に人気」、「ダイエット実感値の高い」、「トレーニング後に飲みたい」、「美味しく続けられる」、「体を内側から整えてくれる」、「満足度が高い」、「オススメしたい」、「安心して始めやすい」、「こだわりが感じられる」、「注目度が高い」との10項目を、それぞれ公平・公正な方法で調査した結果において、本件商品に関する順位がそれぞれ第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際には、サンが委託した事業者による調査は、本件商品と類似商品として4商品を選定し、それぞれの特徴を文章で示した上で、本件10項目について、その特徴から受ける各商品の印象を問うものであり、委託事業者に登録している会員を対象に行われたものであって、本件商品及び類似商品を実際に体験した者に限って、公平・公正な方法で行われた調査ではなかった。

【表示例】
No.1表示:

(消費者庁公表資料より引用)

(2)最終確認画面における表示義務違反(特定商取引法第12条の6第1項)
少なくとも2023年11月7日から2024年1月9日までの間、ランディングページにおける定期購入契約の最終確認画面上において、商品の分量、販売価格、商品代金の支払時期及び方法、商品の引渡時期、定期購入契約の申込みの撤回又は解除に関する事項を表示していなかった。
撤回又は解除に関する事項:
返品・交換は商品到着後8日以内で未開封のもの、かつ誤発送又は不良品に限られ、消費者の都合による返品・交換・キャンセルは一切受け付けないこと及び休止・解約を希望する場合は次回お届け予定日の7日前に電話にて連絡する必要があること等。

【表示例】
最終確認画面:

(消費者庁公表資料より引用)

【処分の内容】
(1)業務停止命令
内容:
通信販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
 1)サンが行う通信販売に関する商品の販売条件について広告を行うこと。
 2)サンが行う通信販売に関する商品の売買契約の申込みを受けること。
 3)サンが行う通信販売に関する商品の売買契約を締結すること。
期間:
 2024年3月15日から2024年6月14日まで(3か月間)

業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。

(2)指示
1.前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築(法令及び契約に基づく返金及び解約の問合せ等に適切かつ誠実に対応することを含む。)して、これを同社の役員及び従業員に、業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。
2023年11月7日から2024年3月14日までの間にサンとの間で本件売買契約を締結した全ての相手方に対し、消費者庁のウェブサイトに掲載される、業務停止命令及び本指示をした旨を公表する公表資料を添付して、2024年3月28日までに文書により通知し、同日までにその通知結果について消費者庁長官宛てに文書により報告すること。
3.誇大広告の内容を消費者に周知すること。
4.今後、サンが行う通信販売について、特定商取引法の各規定を遵守すること。

上記指示に違反した者には、6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。

また、本件では、サンの代表取締役峯岸直樹に対して、同社が命ぜられた業務停止の範囲内の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を3か月間禁じる処分が下っています。

上記指示に違反した者には、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金が科せられます。

特商法規制と景表法規制との違いは?

消費者庁によると、全国の消費生活センターには同社に関する相談が21年7月20日から今年1月末までに1,380件寄せられており、その内、2023年度(2023年4月1日~2024年1月31日)は1,240件と件数が急増していました。
相談内容は、すべてが苦情相談ではないものの、意図しない定期購入契約での解約トラブルに関するものとなっていました。
今回の処分に特商法が適用されたのは、事業者による違法・悪質な勧誘行為等の防止と、消費者の利益を守るためといえます。
景表法規制との違いを確認してみましょう。

●特商法の業務停止命令を受けると、新規の営業活動ができない
景表法の措置命令では、不当表示を改め消費者の誤認排除措置を行えば、営業活動を行うことは妨げられません。他方、特商法で業務停止命令を受けた場合、処分期間中の通販での新規の営業活動が禁じられます。(解約手続きや既存の定期購入への対応はOK)

●特商法では、返金対応など積極的な消費者の被害救済が求められる
景表法では、違反を行っていた期間中の対象商品・サービスの売上額の3%の課徴金が科されますが、返金対応は義務付けられていません。(返金措置を行うことで課徴金の免除・減額あり)
他方、特商法の指示には、コンプライアンス体制構築として法令及び契約に基づく返金及び解約の問合せ等に適切かつ誠実に対応することや、本件定期購入契約をした相手方に対し、処分について文書により通知することなどが盛り込まれており、積極的な消費者の被害救済を求めるものとなっています。

●誇大広告での違反認定内容は消費者への周知が必要
景表法では、誤認表示について一般消費者への周知が命じられます。他方、特商法では、処分の通知は定期購入契約をした相手方のみとなります。ただし、誇大広告(12条)での違反内容については、定期購入契約をした相手方に対してだけでなく、景表法同様、広く消費者への周知を命じられます。※
※最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)は対象外。

●次々と法人を立ち上げて違反行為を行う事業者への対処
特商法では、業務停止を命ぜられた法人の「取締役」や「取締役と同等の支配力を有すると認められるもの等」に対して、停止の範囲内の業務を、新たに法人を設立して継続することを禁止しています。

詐欺的な定期購入商法への法執行は未だ3件。特商法改正後もトラブル減少せず

ネット通販定期購入に対する特商法による行政処分は、法改正前の2021年11月25日の(株)BIZENTO事案があり、2022年6月1日の法改正施行から1年後の2023年6月28日に(株)LITに対して、更に9か月後に2件目となる本件(株)サンに対する処分が出されました
・ネット通販定期購入(株)BIZENTOに特商法による業務停止命令(3カ月)。「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」のパブコメ開始(東北経済産業局 2021年11月25日)

・特商法改正後初の処分。ネット通販定期購入(株)LITに特商法による業務停止命令(6カ月)。積極的な消費者被害救済の指示も(消費者庁 2023年6月28日)

詐欺的な定期購入商法対策を目的とした、通販定期購入契約での「最終確認画面」の義務表示事項を定めた特定商取引法改正ですが、残念なことに、改正法施行後も通信販売での「定期購入」に関する消費者相談件数は増加し続けています。
全国の消費生活センター等に寄せられた通信販売での「定期購入」に関する相談件数は、2021年度が約5万9,000件、2022年度が約9万8,000件と増加しています。2023年度(5万4,627件)も前年同期(5万2,674件)と同水準となっており、法改正による抑止効果は認められません。今後、法執行が続くことも予想されます。
また、定期購入販売規制を目的とした法改正でしたが、一般的な通信販売、サブスクリプション契約にも影響が及ぶ規制となっています。ネットや紙面による契約申し込みを行う全ての通販事業を行う方は、今一度、ご確認を。
・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)
・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)

特定商取引法のポイントについて、以下の記事で解説しています。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。