東京都が、3月28日、健康食品と医薬部外品のアフィリエイト広告による不当表示を行っていた事業者2社に対して景品表示法措置命令を行いました。
処分を受けたのは、筋肉増強効果と痩身効果等を標ぼうする食品を販売していたツインガーデン(株)(東京都渋谷区)とシワ改善効果を標榜する医薬部外品を販売していた(株)エムアンドエム(東京都港区)です。いずれも、効果表示に対する不実証広告規制(※1)を用いた処分となっています。
今回の処分で注目したのは、以下のポイントです。
- 広告代理店やアフィリエイターに具体的な内容の指示をせずに、広告内容の決定を委ねていた場合も広告主の表示責任となること
- シワ改善効果の承認を受けた医薬部外品においても、根拠の認められた効能効果の範囲を逸脱した広告表現は認められない
- 体験談のねつ造が指摘されている
アフィリエイト広告に対しては、景品表示法の適用などに関する考え方として「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」と、景品表示法26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」が一部改訂され、2022年6月29日に公表されたところです。
・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)
処分の概要とアフィリエイト広告規制のポイントについて確認します。
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アフィリエイト広告等により不当な広告を行っていた通信販売事業者2社に景品表示法に基づく措置命令 (東京都 2023年3月28日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/hyoji/keihyo/230328sotimeirei.html
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(※1)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
違反事業者
(1)ツインガーデン株式会社
(2)株式会社エムアンドエム
違反概要
【対象商品】
①「B.B.B(トリプルビー)」と称する食品(ツインガーデン(株))
②「アンリンクル」と称する医薬部外品((株)エムアンドエム)
【表示媒体・期間】
①「B.B.B(トリプルビー)」と称する食品
アフィリエイトサイト:
「女性を楽しむメディア~Hop Step~」
2022年5月18日~20日、5月24日、27日、31日、6月6日、6月24日~26日、28日、29日
「Research.newsとことんとことん調べ上げるニュースサイト」
2022年6月28日、29日、7月4日~6日、12日~15日、19日~21日、25日~29日、8月10日~29日
「diet-web-store」
少なくとも、2022年8月10日~29日
自社販売ウェブサイト:
少なくとも、2022年6月24日~26日、28日、29日、7月4日~8日、11日~15日、19日~21日、25日~29日、8月10日~31日
②「アンリンクル」と称する医薬部外品
広告代理店に制作させたウェブページ:
「大人女性のホンネに向き合う女子SPA!」と称するウェブサイトを経由して表示されるウェブページ
少なくとも、2022年9月8日、9日、13日~16日、20日~22日、27日、28日、30日、10月3日、4日、6日、7日、19日~21日、25日、31日、11月1日、2日、9日、16日、17日、21日
「\自宅で永久シワ消し!?/【医師が暴露】国が認めた〇〇なら顔面だるだる主婦(45)がピーンッ!?製薬会社共同開発クリームが凄い」という見出しから始まるウェブページ
少なくとも、2022年7月2日
【違反内容】
①「B.B.B(トリプルビー)」と称する食品
アフィリエイトサイト「女性を楽しむメディア~Hop Step~」の表示例
・「B.B.Bを使った人の声」において、3名分の画像・体験談・氏名・年代を掲載。
・「B.B.Bはどんな人にオススメ?」「B.B.Bは太りにくく痩せやすい体質を目指したい人にオススメです。」「B.B.Bには筋肉の成長を促したり、分解を抑える働きを持ったHMBが配合されています。」
自社販売ウェブサイトの表示例
「頑張っているのに…どうして…そんなダイエッターの不安」 「☑どうしてもガマンできない…」「☑リバウンドが心配…」
あたかも、トリプルビーを摂取することで、筋肉の増加が促進され又は筋肉の減少が抑制され、代謝能力を高め太りにくく痩せやすい体質に変えることができ、運動をしなくても、顕著な痩身効果を得られるかのように示す表示等を行っていた。
②「アンリンクル」と称する医薬部外品
「大人女性のホンネに向き合う女子SPA!」と称するウェブサイトを経由して表示されるウェブページの表示例
・漫画において、アンリンクルについて、美容家とされる人物が「塗るだけで肌がピーンよ!」「自宅で美容医療級のケアができるのよ!」と発言
・漫画において主人公と思われる人物が、「早速調べてみると」「え?目元のシワって自宅でもケアできるの?」との描写に続けて、3名分の体験談及び比較写真各2枚を掲載
まゆこさん『目のシワもほうれい線も塗って数秒でピーンと伸びました。従来のクリームのように時間をかけて消すんじゃなくて、即効性があるのが嬉しいです』
はるはる『半分諦めていたんですが、50 歳になって目のシワとお別れできるなんて驚きでした。何が凄いってこれ使って数秒の変化なんですよ。』」
あたかも、アンリンクルを使用することで、数秒間等の極めて短い時間で、目や口の周辺等について、いわゆる美容医療と同様のシワ改善効果を得られるかのように示す表示等を行っていた。
実際:
両社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、両社は、書面を提出しましたが、表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められないものだった。
薬機法上、化粧品においては標榜が認められない「シワ解消・予防」効果ですが、医薬部外品として承認を得た場合は、その承認の範囲内での効果を標榜することができます。しかし、アンリンクルで表示されたような「数秒間等の極めて短い時間で、目や口の周辺等について、いわゆる美容医療と同様のシワ改善効果」が実証されたものではなかったことから、不実証広告規制による優良誤認表示とみなされました。
広告代理店やアフィリエイターに広告内容の決定を委ねていた場合も広告主に表示責任
東京都の公表によると、「2社は、広告代理店やアフィリエイターに作成させた広告表示の内容を十分に把握しておらず、自らの表示責任を否定していたが、広告代理店等に広告内容の決定を委ねていた場合であっても、基本的に景品表示法上の責任は広告主にある。」としています。
景品表示法では、広告主がアフィリエイト広告の表示内容を積極的に決定している場合だけでなく、広告主がアフィリエイト広告の作成を依頼する場合、アフィリエイターに広告主からの具体的な指示がなかったとしても、「表示内容の決定を委ねている」として、広告主が行った表示とされます。
2022年6月29日に一部改訂となった、景品表示法26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」では、広告主がASPやアフィリエイターに対して作成する表示等に不当表示が行われないよう、管理上の措置を講じることの具体的な指針が新たに追加されました。
・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)
アフィリエイト広告で広告主の表示とみなされないケースは?
一方、アフィリエイト広告で広告主の表示とみなされないケースとしては、例えば、広告主とアフィリエイターとの間で表示に関する情報のやり取りが一切行われていないなどとされていますが、本件についてはそのような実態は認められていないこととなります。
なお、アフィリエイターはアフィリエイトプログラムの対象となる商品・サービスを自ら供給する者ではないので、景品表示法で定義される「表示」を行う者には該当せず、規制対象にはなりません。(広告主と共同して商品・サービスを供給している場合を除く)
エムアンドエムの対応は適切か?
エムアンドエムは自社ホームページに「弊社商品に関するお知らせとなります。」という件名で公表した「お詫びとお知らせ」において、次のように記載しています。
エムアンドエムは、「委託先の広告代理店・アフィリエイターが一般消費者に向けて配信するアフィリエイト広告の記事内において」不当表示が「無断で行われていた」と記載しています。
措置命令では、事業者が行った表示は景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底することを命じていますが、少なくとも、このような内容ではエムアンドエムが、自らの表示責任を認めているとは読み取れません。
なお、同社は、HMBやBCAAを配合したサプリメントの筋肉増強や痩身効果の表示に対して、消費者庁から2020年3月に、不実証広告規制による優良誤認の措置命令を受け、2021年11月18日に6627万円の課徴金納付命令を受けています。
・エムアンドエムに景表法措置命令 HMBサプリの筋肉増強効果と痩身効果に不実証広告規制 (消費者庁 2020年3月6日)
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株式会社エムアンドエムに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について
(消費者庁 2021年11月18日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/026650/
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体験談のねつ造
今回の措置命令の対象となった広告に掲載されていた体験談等には、実際に措置命令対象商品を使用した人物の写真ではなく、 写真素材販売サイトから購入したもの等、商品とは無関係な写真が含まれていました。
体験談については、仮に実際に効果があった人のものであったとしても、表示された効果が実証された効果と適切に対応したものでなければなりません。
また、化粧品や医薬部外品においては、薬機法上、効能効果に関する体験談表示そのものが禁止されています。
アフィリエイト広告に関する景品表示法措置命令は、2020年に埼玉県による事案1件、2021年に消費者庁による事案2件の措置命令が出されています。
今後も厳しい法執行が予想されます。
・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日・4月1日)
・T.Sコーポレーション男性用育毛剤のアフィリエイト広告に、消費者庁による初の景表法措置命令 (消費者庁 2021年3月3日)
・アフィリエイトに加えてインスタ投稿が違反対象表示に。アクガレージとアシストの豊胸サプリに景表法措置命令(消費者庁 2021年11月9日)
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