機能性表示食品の表示に対して景品表示法措置命令(優良誤認)を出されました。2017年11月の葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とした機能性表示食品の事案から、2事例目となります。
6月30日、消費者庁は、健康食品及び漢方薬等の製造販売事業者さくらフォレスト(株)(福岡市中央区)が提供する機能性表示食品の表示に、不実証広告規制(※)による優良誤認の措置命令を行いました。
前回の事案では、科学的根拠に基づく届出表示から逸脱した痩身効果の表示が問題となりました。今回は、届出表示の逸脱表示に加えて、届出表示そのものの裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いているとして不当表示認定しました。
・「葛の花」16社に、機能性表示食品で初の景表法措置命令。届出内容と表示の整合性(消費者庁:平成29年11月7日)
違反対象となった機能性表示食品は、DHA・EPA、モノグルコシルヘスペリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソールを機能性関与成分とした『きなり匠』と、DHA・EPAを機能性関与成分とした『きなり極』です。
いずれも機能性関与成分に関する研究レビューによる機能性表示の届け出で、「きなり 匠」機能性表示は、「本品には DHA・EPA、モノグルコシルヘスペリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソールが含まれます。DHA・EPAには中性脂肪を低下させる機能があることが、モノグルコシルヘスペリジンは血圧が高めの方の血圧を下げる機能があることが、オリーブ由来ヒドロキシチロソールは抗酸化作用を持ち、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の酸化を抑制させることが報告されています。」。
「きなり 極」は、「きなり 匠」の「DHA・EPA」の機能性と同じ表示です。
葛の花事案から5年半、前回同様、今回も業界に大きな衝撃が広がっています。
処分のポイントを確認します。
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さくらフォレスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2023年6月30日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/033865
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
【違反内容】
対象商品:
1)「きなり匠」と称する機能性表示食品
2)「きなり極」と称する機能性表示食品
表示媒体・表示期間・効果:
1)「きなり匠」
自社ウェブサイト:2022年4月15日、5月17日、18日
高めの血圧を大きく下げる効果、中性脂肪を低下させる効果及び血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果
自社ウェブサイト:2022年8月5日、9月22日/10月6日~11日
「きなりシリーズ―きなり・きなり極・きなり匠―」と題する冊子:2022年1月6日~2023年2月23日
容器包装:2022年1月6日以降
中性脂肪を低下させる効果、高めの血圧を下げる効果及び血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果
2)「きなり極」
自社ウェブサイト:2022年5月26日/11月1日、2日/11月4日、7日
「きなりシリーズ―きなり・きなり極・きなり匠―」と題する冊子:2022年1月6日~2023年2月23日
容器包装:2020年6月2日以降
中性脂肪を低下させる効果
なお、本件2商品の容器包装については、措置命令が発出された時点において違反認定された表示を継続しており、表示を取りやめるよう命じられています。
【表示例】容器包装「きなり匠」
表示内容:
●届出の範囲を著しく逸脱した表示(「きなり匠」自社ウェブサイト)
「高めの血圧を下げる機能性サプリ」、「血圧をグーンと下げる」、「機能性表示食品 きなり匠」、「酸化LDLコレステロールを減少させる機能性取得 ○」、「血圧を下げる機能性取得 ○」、「中性脂肪を低下させる機能性取得 ○」と記載のある表等を表示。
あたかも、本件商品をそれぞれ摂取すれば、商品に含まれている各成分の作用により、高めの血圧を大きく下げる効果、中性脂肪を低下させる効果及び血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果が得られるかのように示す表示をしていた。
●届出表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いている表示(「きなり匠」容器包装)
「中性脂肪 LDLコレステロール 血圧が気になる方へ」「本品にはDHA・EPA、モノグルコシルヘスぺリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソールが含まれます。DHA・EPAには中性脂肪を低下させる機能があることが、モノグルコシルヘスペリジンは血圧が高めの方の血圧を下げる機能があることが、オリーブ由来ヒドロキシチロソールは抗酸化作用を持ち、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の酸化を抑制させることが報告されています。」等と表示。
あたかも、本件商品をそれぞれ摂取すれば、商品に含まれている各成分の作用により、中性脂肪を低下させる効果、高めの血圧を下げる効果及び血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させる効果が得られるかのように示す表示をしている又は表示をしていた。
実際:
さくらフォレストに対し、それぞれ当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
今回の処分での業界への影響は
今回の2商品と同一の科学的根拠(同一のシステマティックレビュー)による届出商品は多数あります。
消費者庁は本件処分と同時に、本件2商品と同一の科学的根拠を使っているものおよび、本件2商品の機能性関与成分であるDHA・EPAの含有量がこの2商品の含有量以下である機能性表示食品について、届け出事業者に対して報告を求めました。7月3日より、科学的根拠として疑義がある点を指摘し、届出者から合理的な回答があるかの確認を個別に開始、2週間以内の報告を求めています。結果については速やかに公表するとしています。
該当する届け出はDHA・EPAが31件、モノグルコシルヘスペリジンが14件、オリーブ由来ヒドロキシチロソールが47件で、重複を除き88製品が該当するとしています。
また、今回の事件を受けて、業界団体に対し、公表済みの届出について科学的根拠を再検証するよう文書で指導しました。
対象となった業界団体は、(公財)日本健康・栄養食品協会、(一社)健康食品産業協議会、(公社)日本通信販売協会、(一社)日本チェーンドラッグストア協会、日本抗加齢協会の5団体です。
前回の葛の花事案では、葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品45商品のうち、16社(19商品)に対する一斉処分でした。
葛の花事案では、届出表示から逸脱した痩身効果の表示についてのみの処分でしたが、今回は届出表示そのものの裏付けとなる科学的根拠の合理性や、成分の配合量が問題となっているため、さくらフォレストと同一の科学的根拠および成分の商品設計が採用されている製品については、処分を受ける可能性も否定できません。
機能性表示食品は事業者が自らの責任において、科学的根拠を基に食品の機能性を表示し販売する以上、しっかりとしたシステマティックレビューを行わなければなりません。
違反認定された届出表示の逸脱表示および、認められなかった届出表示の裏付けとなる科学的根拠について、消費者庁の発表を紐解きます。詳しい解説は、以下の記事でご確認下さい。
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《参考記事》
・「葛の花」機能性表示食品9社に景表法課徴金納付命令。自主的お詫び社告の影響は?(消費者庁:平成30年1月19日)
・「葛の花」16社、特定適格消費者団体から返金申し入れ。課徴金だけじゃない被害回復裁判リスク!(消費者支援機構関西 22018年3月5日)
・日本サプリメント トクホ初の許可取り消しと、規制強化の動向
・トクホ取消の日本サプリメントに景表法措置命令 強まる景表法の取組(消費者庁:平成29年2月14日)
・返金計画示されず トクホ取消の日本サプリメントに景表法課徴金納付命(消費者庁:平成29年6月7日)
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