エステ会社の「施術満足度1位」の表示に景品表示法の措置命令です。
消費者庁は6月15日に、美容業(株)PMKメディカルラボ(東京都新宿区)が提供する豊胸・痩身施術の表示に優良誤認が認められました。
「満足度1位」などと記した表示をめぐっては、「No.1 を取得させる」という名目で、非公正な「No.1 調査」を請け負う事業者が出現しているとして、今年1月に日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が「非公正な『No.1調査』への抗議状」と題した抗議文を発表していました。
更に、「No.1広告」などランキング広告や比較広告に関するガイドラインを先月に公表したところでの、今回の処分となっています。
(一社) 日本マーケティング・リサーチ協会
非公正な「No.1 調査」への抗議状(2022年1月18日)
https://www.jmra-net.or.jp/rule/20220118.html
「ランキング広告表示に使用する調査データ開示ガイドライン」と「比較広告のための調査実施の手引き」を発行しました(2022年5月26日)
http://www.jmra-net.or.jp/rule/guideline/
今回の事案は、非公正な「No.1 調査」の典型的な事例と言えます。
処分の内容と不適正表示の経緯、適正なNo.1表示のための要件を確認します。
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株式会社PMKメディカルラボに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2022年6月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/029113/
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【違反内容】
対象役務:
豊胸施術及び痩身施術サービス
表示媒体:
「Rakuten BEAUTY」と称するウェブサイトに開設した「High Qualityエステティック PMK 新宿店」と称する自社ウェブサイト
表示期間:
2021年9月10日~2022年5月27日
表示内容:
《優良誤認表示》
例えば、「あの楽天リサーチで2冠達成★バスト豊胸&痩身部門で第1位!」、「バストアップ第1位 施術満足度」、「ボディ瘦身第1位 施術満足度」等と表示。
あたかも、楽天インサイト(株)が実施した、PMKメディカルラボが提供する対象サービス及び他の事業者が提供する同種又は類似のサービスを利用した者に対する施術満足度の調査結果において、PMKメディカルラボのサービスに対する施術満足度の順位が第1位であるかのように示す表示をしていた。
実際:
楽天インサイトが実施した調査は、PMKメディカルラボ及び他の事業者が提供するサービスを利用した者に対する調査ではなく、また、調査においてPMKメディカルラボが提供するサービスの施術満足度の順位は第1位ではなかった。
【表示例】
不適正な「No.1」調査が行われた経緯
本事案の不適正な「No.1」調査が行われた経緯についての消費者庁の説明を、次のように報じています。
広告主のPMKメディカルラボが、広告代理店に対して、「施術満足度No.1」のキャッチフレーズを使うことを前提にした調査を依頼。
代理店とマーケティングのコンサルタント会社は、『調査のアンケート対象者にこのサロンのホームページを見せて、競合他社の10社ほどは名前だけ並べ、「痩身施術満足度が高いエステ店はどこだと思いますか。ご存じない場合はイメージでお答えください」』などと、このサロンに有利な設問を設定したうえで、リサーチ会社の「楽天インサイト」に調査を発注。
「楽天インサイト」が実施した調査は、イメージ調査と呼ばれるインターネットを使ってサイトの写真などから印象や満足度を尋ねるもので、インターネットで集めた400人から回答を得て、結果は2位だった。
400人は、実際にこのサロンで施術を受けた人ではなく、バストアップの施術満足度を聞く項目も含まれていたが、回答者のうちおよそ300人は男性だった。
調査結果について、広告代理店とマーケティングのコンサルタント会社が、広告主のPMKメディカルラボの依頼に合わせるために、ほかのサロンを選んだ回答者を除くなどしておよそ280人に減らして、結果を「1位」に変えてPMKメディカルラボに報告。
PMKメディカルラボは、こうした調査結果の恣意的な加工を一切知らなかった。
「“満足度2位なのに広告では「第1位」“ エステ会社に措置命令」
(NHK 2022年6月15日)
PMKメディカルラボは、直接、調査方法の指示をしておらず調査結果の恣意的な加工を知らなかったとはいえ、「施術満足度No.1」の結果ありきの調査依頼を代理店やコンサル会社に行っていたことから、客観性を欠く調査と、結果の恣意的な加工につながったと言えるでしょう。
また、景品表示法の規制対象はサービスを提供する事業者(広告主)ですから、PMKメディカルラボには適正な調査が行われた結果であるかを確認する責任があります。
適正なNo.1表示のための要件とは
2008年6月に公正取引委員会が、消費者モニターを活用したNo.1表示に関する実態調査を行い、景品表示法上の考え方を整理し「No.1表示に関する実態調査について」(※)という報告書を公表しています。
報告書では、適正なNo.1表示のための要件として、以下の要件の両方を満たす必要があるとしています。
- No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
- 調査結果を正確かつ適正に引用していること
「No.1表示」を行う際の景品表示法上の注意点について、以下の記事で解説しています。
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No.1表示に対する措置命令事案として、過去には以下のものがあります。
格安SIMの通信速度および、販売数量シェアに対する優良誤認事案。
・FREETELのSIMサービス、「業界No.1」「通信料0円」表示に優良・有利誤認の景表法措置命令。打消し表示に注意を(消費者庁:平成29年4月21日)
接骨院の「お客様評価」に対する優良誤認事案。
・埼玉県 接骨院MJGの「お客様評価」「やせプログラム」表示に景表法措置命令(埼玉県 2019年11月18日)
家庭教師派遣の「第一志望校合格率」、「顧客満足度」に対する優良誤認事案。
・埼玉県、家庭教師派遣(株)ワン・ツー・ワンに景表法措置命令。合格率や教師登録数、解約料等の表示に誤認認定 (埼玉県 2020年9月14日)
「No.1」表示に対する監視の目が強まる中、広告主だけではなく、関連する調査会社や広告代理店に対しても適正化に向けた取り組みが求められます。
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