PS配合糖鎖サプリの認知症予防効果。シーズコーポレーションに景表法措置命令。同梱冊子・チラシも注意(消費者庁:2021年5月14日)

疾病の治療又は予防の効果をうたったサプリメント(栄養機能食品)に対する、景品表示法と食品表示法の同時適用の処分です。

消費者庁は5月14日、健康食品の販売業(株)シーズコーポレーション(大分市)に対し、同社が供給するサプリメントの効能効果の表示について景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

優良誤認は、「認知症予防」「めまい」「難聴」「物忘れ・冴え」「耳鳴り」などと表示し、同製品の含有成分(糖鎖栄養素等)が身体の細胞に作用することにより、各疾病の予防や治療効果が得られるかのように示す表示について、不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
自社ウェブサイトの表示だけでなく、商品同梱冊子とチラシも対象表示となっています。

同時に、容器包装表示に対する栄養機能食品としての規定違反や、機能性表示食品と誤認させる表示について、食品表示法に基づく指示を行いました。

処分内容を確認します。

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株式会社シーズコーポレーションに対する景品表示法に基づく措置命令について
(2021年5月14日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024139/

株式会社シーズコーポレーションに対する食品表示法に基づく指示について
(2021年5月14日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024140/
———-

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

【事業者の概要】
(株)シーズコーポレーション
大分市、健康食品の販売業

【対象商品】
「seeds(シーズ)糖鎖」と称する食品

●景品表示法に基づく措置命令

【表示媒体・期間】
自社ウェブサイト:遅くとも2018年10月12日~2021年3月10日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト:遅くとも2018年10月12日~2020年10月22日
商品同梱冊子:少なくとも2021年1月31日
商品同梱チラシ:少なくとも2021年1月31日

【違反内容】
例えば、自社ウェブサイト(楽天市場店)において、
「糖鎖+PSで脳を活性化! 認知症のリスクを軽減します。」、「脳神経細胞の退化を予防し、アルツハイマー型・脳血管性認知症の症状が改善される『脳機能活性栄養素』です。」、「PS(ホスファチジルセリン)は様々なお悩みに効果が期待されています」、「認知症予防」、「めまい」、「難聴」、「物忘れ・冴え」、「耳鳴り」、「記憶力・集中力」、「発達障害」、「意欲向上」等と表示。
商品同梱冊子において、
「さまざまな症状に・糖鎖栄養素」と題し、「・ガン」、「・アレルギー症・花粉症」、「・喘息」、「・糖尿病」、「・老化」、「・アルツハイマー病」、「・認知症」、「・関節リウマチ」、「・不妊症」、「・高血圧」、「・脂質異常症」、「・精神疾患」、「・肝機能障害」、「・感染症」、「・膠原病」、「・甲状腺障害」及び「・胃潰瘍 他。」等と表示することにより、
あたかも、商品を摂取するだけで、商品に含まれる糖鎖栄養素等が身体の細胞に作用することにより、疾病の治療又は予防の効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例:自社ウェブサイト
(消費者庁公表資料より引用)

表示例:商品同梱冊子
(消費者庁公表資料より引用)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

同社は処分を前に不当表示を認める謝罪広告を日刊新聞紙2紙に掲載しています。

●食品表示法に基づく指示
【表示媒体】
容器包装

【販売期間及び販売数量】
遅くとも2018年10月から2020年10月までの間、少なくとも10,540箱

【表示内容
1)「栄養機能食品に係る栄養成分の機能」の項の規定(基準第7条の表)
・栄養機能食品である旨及び当該栄養成分の名称について、「栄養機能食品(ビオチン)」と表示すべきところ「栄養機能食品 ビオチン配合」と表示。
・摂取する上での注意事項について、「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」と表示すべきところ、「本品は、多量摂取により疾患が完治したり、より健康が増進するものではありません。」と表示。
・バランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言について、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と表示すべきところ、「食生活は、主食、主菜、副食を基本に食事のバランスを。」と表示。
・栄養素等表示基準値の対象年齢及び基準熱量に関する文言について、表示せず。

2)基準第9条第1項第9号の規定
栄養機能食品である本件商品に対し、「ホスファチジルセリン(PS)配合 脳機能を元気・脳細胞に多く存在」及び「糖鎖とはさまざまな単糖が鎖状に連なったもので、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を担っています。」と、基準別表第11に掲げる栄養成分以外の成分の機能を示す用語を表示。

3)基準第9条第1項第10号の規定
機能性表示食品以外の食品である本件商品に対し、「医療機関向け機能性食品」と、機能性表示食品と紛らわしい名称を表示。

【指示の概要】
(1)販売している全ての食品について、直ちに表示の点検を行い、不適正な表示の食品については、速やかに、適正な表示に是正した上で販売すること。
(2)基準で定められた遵守事項が遵守されていなかった原因の究明及び分析を徹底すること。
(3) 食品表示に関する責任の所在を明確にし、社内における品質表示のチェック体制の強化、拡充等の再発防止対策を実施するとともに、 対策によるチェック体制等が有効に機能していることを定期的に検証し、 必要な改善を行うこと。これにより、今後、販売する食品について、 基準に違反する表示を行わないこと。
(4)従業員に対して、食品表示制度についての啓発を行い、その遵守を徹底すること。
(5)(1)から(4)までに基づいて講じた措置について、2021年6月14日までに消費者庁長官に報告すること。

栄養機能食品は、特定保健用食品、機能性表示食品と並んで、食品の持つ効果や機能を表示することができる食品です。他の2制度と違って、個別の許可申請を行う必要がない自己認証制度となっています。ただし、栄養機能食品として販売するためには様々なルールがありますので、正しい理解が必要です。

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栄養機能食品について(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_nutrient_function_claims/
—————————–

最近の健康食品に対する措置命令では、対象媒体として、ウェブサイトの表示だけでなく商品同梱チラシや冊子を対象とした事案が続いています。
媒体を問わず、表示違反は認めないという行政の姿勢が感じられます。
過去違反事例もご確認ください。

・LPSサプリ、免疫力アップでウィルス対策。マクロフューチャーに景表法措置命令。同梱チラシも注意(消費者庁:2021年3月9日)

・痩身系健康茶「メタボメ茶」、ティーライフ(株)に対し2度目の景表法措置命令。体験談は「ダイエットプーアール茶」?(消費者庁:平成29年9月29日)

・イマジン・グローバル・ケア、「ブロリコ」成分の研究コンテンツによる広告手法に景表法措置命令(消費者庁:2019年11月1日

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。