カインズの期間限定割引セールの「通常価格」表示に景表法措置命令。期間限定セールを再開するには? (静岡県 2021年8月3日)

静岡県は8月3日に、ホームセンター(株)カインズ(埼玉県本庄市)の静岡県内のカインズ全25店舗のテレビ、収納ボックス、洗剤等55商品のセール企画に関する表示に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
店頭商品値札において、販売実績のない「通常価格」の比較対象価格による有利誤認表示とみなされました。

処分の概要と、今回問題となった期間限定セールにおいて「通常価格」を比較対象とした二重価格表示を行う際、期間延長についての景品表示法上留意すべきポイントを確認してみましょう。


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店頭値札で不当な価格表示を行っていた事業者に対し、景品表示法に基づく措置命令を実施
(静岡県 2021年8月3日)
http://www.pref.shizuoka.jp/kenmin/km-110/20210803sochi.html
———-

【違反内容】
対象商品:
テレビ、収納ボックス、洗剤等55商品

店舗:
静岡県内のカインズ全25店舗

表示媒体・表示期間:
セール開始年月日2020年8月21日~2021年2月16日、店舗・セール開始日別に集計すると、1,866点の値札表示において違反が確認された。

表示内容:
例えば、「当店通常価格¥42,800の品¥29,800」(テレビの例)と表示。
対象商品について、実際の提供価格に比較対照価格を併記することにより、あたかも、比較対照価格は、通常提供している価格であり、実際の提供価格が当該通常提供している価格に比して安いかのように表示していた。

実際:
比較対照価格「当店通常価格」は、過去一定期間での販売実績がないものであった。

【違反例】

(静岡県発表資料より抜粋)

【表示例】


(静岡県発表資料より抜粋)

違反内容の通り、カインズは表示したセール期間終了後、十分な通常価格での販売期間を置かずに、続けてセールを延長していました。
報道によると、処分についての経緯が報じられています。

昨年9月、県内の消費者から「セール期間の価格が前から同じ」との報告が県の消費生活センターに寄せられ、県が調査していた。
カインズによると、同様の表示は静岡県外の店舗でも行っていた。担当者は「社内で法の理解が不足していた。チェック態勢を強化し、再発防止に努める」とコメントした。
(産経新聞 2021年8月3日)

本件の違反となった店舗や対象商品数等を見る限り、業界トップクラスの企業といえども、広告コンプライアンスへの社内体制が整っているとは言えない状況が浮き彫りとなっています。
消費者の行政への情報提供も活発な昨今、事業者の皆さんには、一層の管理体制への取り組みが求められます。

今回問題となった、期間限定セールにおいて「通常価格」を比較対象とした二重価格表示を行う際、景品表示法上留意すべきポイントを確認してみましょう。

●比較対照価格として「通常」価格と表示するには、最近相当期間にわたって販売された実績があることが必要
《「最近相当期間にわたって販売されていた価格」か否かの判断基準》
一般的な目安として、
・当該商品の販売されていた期間について、原則として、セール開始時点からさかのぼる8週間において、「通常価格」で販売されていた期間が過半を占めていること。(当該商品が販売されていた期間が8週間未満の場合には,その期間において)

ただし、前記の要件を満たす場合であっても、
・「通常価格」で販売されていた期間が通算して2週間以上であること。
・「通常価格」で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと。

「相当期間」について:
必ずしも連続した期間に限定されるものではなく、断続的にセールが実施される場合であれば、比較対照価格で販売されていた期間全体として評価する。

「販売されていた」とは:
事業者が通常の販売活動において当該商品を販売していたことをいい,実際に消費者に購入された実績のあることまでは必要ではない。
他方、形式的に一定の期間にわたって販売されていたとしても、単に比較対照価格とするための実績作りとして一時的に当該価格で販売していたとみられるような場合には,「販売されていた」とはみられない。

(※)
不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf
※現在、景品表示法は消費者庁に移管されていますが、上記ガイドラインは適用されています。

つまり、同様の期間限定セールを再開したい場合は、期間限定セール終了後、常に2週間以上、かつ直前の限定期間を上回る日数の「通常価格」での販売実績が必要となります。

以下に、価格表示に関する景品表示法の解説記事をまとめました。
キャンペーンやマーケティング施策等を検討する際、広告法務のリスクマネジメントについて、お気軽にご相談ください。

≪参考記事≫

・割引率・割引額表示の注意点

・二重価格表示の注意点~販売条件が異なる販売価格~

・二重価格表示の注意点~競争事業者の販売価格~

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。