福岡の健康食品販売業者(株)大名製薬所 電話勧誘販売に特商法違反業務停止(3カ月)(2020年12月9日)

2020年12月9日、健康食品を販売する(株)大名製薬所(本社:福岡県福岡市)に対し、特定商取引法違反で業務の一部(電話勧誘販売に関する勧誘、申込受付および契約締結)の3カ月間停止処分が命じられました。
また、業務停止命令と併せて、違反行為の発生原因についての検証等が指示されています。

消費者庁長官の権限委任を受けた経済産業省北海道経済産業局による事案です。

違反の内容は、健康食品の電話勧誘販売での以下の行為です。
(1)氏名等の明示義務に違反する行為 (勧誘目的不明示)
(2)契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘
(3)商品の効能につき不実のことを告げる行為
(4)商品の価格につき不実のことを告げる行為

また、今回も最近の特商法違反処分同様、「同社の役員であり、かつ、同社が停止を命ぜられた電話勧誘販売に関する業務の遂行に主導的な役割を果たしている者」に該当するとして、同社取締役に対する3か月の業務禁止命令(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)処分が下っています。

《個人に対する業務禁止命令処分事例》

・「元気365」のRK企画 健康食品の電話勧誘販売に特商法業務停止命令(3カ月)
(2020年2月14日)

・電話勧誘販売での定期購入に特商法での業務停止命令 (株)Rarahiraと統括責任者に処分(2020年1月16日)

・ネット通販定期購入の表示に特商法での処分 (株)TOLUTOと前代表取締役等に業務停止命令(2019年12月26日)

処分の内容を確認します。

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特定商取引法違反の電話勧誘販売業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに当該業者の業務の遂行に主導的な役割を果たしている者に対する業務禁止命令(3か月)について
(北海道経済産業局 2020年12月9日)
https://www.hkd.meti.go.jp/hokih/20201209/index.htm
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【事業概要】
取扱商品:「慶」「ケイ麗」と称する健康食品
取引類型:電話勧誘販売
代表者:代表取締役 吉原 貴之

【認定した違反行為】
同社は、次のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、「電話勧誘販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがある」と認められた。

(1)氏名等の明示義務に違反する行為(勧誘目的不明示)(特定商取引法第16条)
遅くとも令和元年9月以降、電話勧誘販売の勧誘に先立って、その相手方に対し、その電話が本件売買契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げていない。

(2)売買契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘(特定商取引法第17条)
遅くとも令和元年8月以降、電話により勧誘された売買契約を締結しない旨の意思を表示した電話勧誘顧客に対し、本件商品を購入するよう執ように告げるなどして、続けて当該売買契約の締結について勧誘をしている。

(3)商品の効能につき不実のことを告げる行為(特定商取引法第21条第1項)
遅くとも令和元年8月以降、本件売買契約の勧誘に際し、本件商品について以下の通り告げている。
「慶」:
あたかも、認知症、脳梗塞などの予防の効能、糖尿病、関節炎、腰痛、狭窄症などを改善させる効能、又は医薬品との飲み合わせにより相乗効果をもたらす効能。
「ケイ麗」:
あたかも、認知症、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、骨粗しょう症の予防の効能、腰、膝の痛み、肩こりを改善させる効能又は医薬品との飲み合わせによる医薬品の副作用を軽減する効能があるかのように告げている。
消費者庁は当該告知事項の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社は、これらを一切提出しなかった。

(4)商品の価格につき不実のことを告げる行為(特定商取引法第21条第1項)
遅くとも令和元年8月以降、本件売買契約の勧誘に際し、実際には、本件商品「慶」を常時3,980円(税込・送料込)で販売していたにもかかわらず、あたかも定価は8,000円であり、キャンペーン期間中に限り3,980円(税込・送料込)で販売しているかのように告げている。

【処分の内容】
(1) 業務停止命令(法人)
内容:
電話勧誘販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)同社の行う電話勧誘販売に関する売買契約の締結について勧誘すること。
2)同社の行う電話勧誘販売に関する売買契約の申込みを受けること。
3)同社の行う電話勧誘販売に関する売買契約を締結すること。
期間:
2020年12月10日から2021年3月9日まで(3か月間)

業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。

(2)指示(法人)
前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築する。
これを同社の役員、従業員に、業務停止命令に関する業務を再開するまでに周知徹底すること。
本件売買契約の相手方に、業務停止命令及び本指示の内容を文書により通知すること。

上記指示に違反した者には、6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。

(3) 業務禁止命令(個人)
名宛人:
株式会社大名製薬所 取締役 中野 親人
内容:
電話勧誘販売に関する業務のうち、次の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を禁止する。
1)電話勧誘販売に関する売買契約の締結について勧誘すること。
2)電話勧誘販売に関する売買契約の申込みを受けること。
3)電話勧誘販売に関する売買契約を締結すること。
期間:
2020年12月10日から2021年3月9日まで(3か月間)
理由:
同社の役員であり、かつ、同社が停止を命ぜられた業務の遂行に主導的な役割を果たしている者に該当する。

平成29年12月1日に施行された特商法の改正では、刑事罰の強化として以下が盛り込まれています。
●次々と法人を立ち上げて違反行為を行う事業者への対処
・業務停止を命ぜられた法人の「取締役」や「取締役と同等の支配力を有すると認められるもの等」に対して、停止の範囲内の業務を、新たに法人を設立して継続することを禁止する。
⇒違反した場合、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金
<新設>

今回の処分は、「定期購入」契約に関するものではありませんが、健康食品の電話勧誘販売での特商法規制について、改めて注意が必要です。

《関連記事》
・定期購入契約のアウトバウンド営業に注意!健康食品販売の(株)財宝に特商法で指示
(消費者庁 2019年12月10日)

・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)

・コールセンターのアウトバウンド営業に注意!ガス契約先変更の電話勧誘販売事業者に特商法違反で業務改善指示(平成30年2月1日)

・健康食品の電話勧誘販売(株)島田製薬に、特商法業務停止命令3か月及び指示
(平成29年8月31日)

・他の通販業者に電話勧誘を委託。健康食品の電話勧誘販売「(株)アンチエイジングラボ」に特商法違反で指示(平成29年5月24日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。