埼玉県、秩父の旅館の温泉表示に景表法措置命令。2004年から露天風呂に温泉不使用(埼玉県:2020年2月17日)

埼玉県は2月17日、秩父市の旅籠一番こと坂本俊彦に対し、旅館で提供する「温泉」の表示について、景品表示法の措置命令を行いました。

本件は、運営するWebサイトで、「露天風呂」、「内風呂」、「露天風呂付客室」全ての浴槽に温泉を使用しているかのように表示していましたが、「露天風呂」では使用しておらず、優良誤認表示とみなされました。

処分内容と、温泉表示上の景品表示法上の考え方を確認します。

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旅館において温泉を提供する者に対する措置命令について
(埼玉県:2020年2月17日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/2019/0217-07.html
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【被処分事業者】
名称:坂本 俊彦(さかもと としひこ)
施設名:旅籠一番(はたごいちばん)

【対象役務】
同人が経営する施設において提供する温泉

【表示媒体】
同人が運営する公式ウェブサイト

【表示期間】
遅くとも2004年12月頃から2020年1月22日まで

【違反内容】
表示:
「温泉」を紹介するページにおいて、
「自慢の温泉と心温まるおもてなしでお待ちしております。」
「『島府の湯』自慢の温泉と心温まるおもてなしでお待ちしております。」
「露天風呂当館自慢の露天風呂は心も肌も安らぎに包まれる自然石で造られており、お部屋ごとの貸切もできます。秩父路の静寂とくつろぎを堪能できるお風呂です。」
「内風呂檜の香る秩父路の秘湯『島府の湯』。旅の疲れを癒し、いつでも心と体を優しくときほぐしてくれます。」
「露天風呂付客室」
等と記載。

あたかも全ての浴槽で温泉を使用しているかのように表示していた。

実際:
2004年8月24日以降、温泉法第2条第1項に規定する温泉を「露天風呂」では使用していなかった。

表示例:

温泉表示については、2003年に公正取引委員会が「温泉表示に関する実態調査報告書」を公表し、景品表示法上の考え方を示しています。
その後、公取、都道府県、国土交通省が連携して適正化に取り組んでいます。

本事案は、違反表示が2004年12月頃からなされており、知らなかったでは済まされないと言えるでしょう。

《温泉表示上の景品表示法上の考え方》
(1)源泉に加水、加温、循環ろ過などを行っているにもかかわらず、パンフレット等において「源泉100%」、「天然温泉100%」などと、源泉をそのまま利用していることを強調するような表示を行うことは、消費者の誤認を招くおそれがある。

(2)「天然温泉」との表示についても、加水、加温、循環ろ過などを行っていない温泉であると認識している消費者は少なくないと考えられることから、消費者に対する適切な情報提供の観点からは、パンフレット等において「天然温泉」との表示を行う場合には、あわせて、加水、加温、循環ろ過装置の利用の有無に関する情報が提供される必要がある。

(3)パンフレット等において療養泉としての適応症表示を行う場合には、同適応症が源泉を基準に判断したものである場合はその旨を明瞭に表示し、浴槽内の湯を基準に判断したものであるとの誤認を消費者に抱かせないようにする必要がある。

(4)また、パンフレット等において浴槽内の湯について適応症表示を行う場合には、消費者が実際に利用する浴槽内の湯が療養泉としての基準値を維持していることを確認する必要がある。

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温泉表示に関する実態調査報告書(公正取引委員会 平成15年7月31日)
http://www.net626.co.jp/koutorii/hyouji.pdf

温泉表示問題に対する公正取引委員会の取組(公正取引委員会 平成16年11月22日)
https://www.env.go.jp/council/12nature/y123-01/mat06.pdf

温泉表示に関する実態調査の結果概要について(国土交通省 平成16年9月29日)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/01/010929_2_.html
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また、消費者庁による過去の温泉表示に関する措置命令には、以下の事案があります。

・大阪府、温浴施設運営事業者2者(大和ハウス工業(株)、(株)オンテックス)に景表法措置命令。温泉成分に虚偽(大阪府:2019年8月27日)

・11種類が2種類。岡山・湯迫温泉の浴槽数に景表法措置命令(消費者庁 2015年2月24日)

・課徴金制度閣議決定前日。愛知県の旅館(株)豆千待月に景表法措置命令(消費者庁 2014年10年24日)

・老舗温泉宿でも!温泉の不当表示に対する景表法措置命令(消費者庁 公正取引委員会 2013年6月4日)

なお、埼玉県による景表法措置命令は過去に以下の2件の処分があり、平成26年12月の景表法改正で都道府県知事に付与された措置命令権限による、全国初の行政処分を行っています。

・全国初。都道府県の景表法措置命令。(株)ローランインターナショナル、中古自動車「修復歴」表示(埼玉県:平成27年12月25日)

・埼玉県 接骨院MJGの「お客様評価」「やせプログラム」表示に景表法措置命令
(埼玉県 2019年11月18日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。