東京都は、2019年12月26日、パソコン修理の通信販売事業者のオルネスホールディング(株)(屋号:TOKYO修理、東京修理、とうきょう修理)と同社の代表取締役に対し、特定商取引法違反で9カ月間の業務停止命令と違反行為の是正等が指示を行いました。
また、業務停止命令と併せて、東京都消費生活条例、同条例施行規則に違反する不適正な取引行為についての情報提供もなされています。
今回の業務停止命令は「公示送達(※)」によるもので、2016年の特定商取引法改正により公示送達の規定が導入されてから行う業務停止・業務禁止命令処分としては全国初の事例となっています。
東京都の公表資料によると、「調査過程で、事業者は事務所の閉鎖等を行い、電話や郵便等の連絡に一切応じなくなった」とされています。
(※)公示送達
違反事業者のホームページに住所の記載がない場合など、所在不明で処分書が送付できない場合、処分書を交付する旨を一定期間掲示することで事業者に交付されたものとみなす処分。
違反の内容は、「表示義務違反」、「誇大広告」、「承諾等の非通知」、「債務履行の不当遅延」、「申込みの内容を容易に確認及び訂正できるようにしていない」等です。
処分の内容を確認します。
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悪質なパソコン修理事業者に9か月の業務停止命令
公示送達による特定商取引法の業務停止・禁止命令は全国初
(東京都 2019年12月26日)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/12/26/12.html
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【事業概要】
業務内容:パソコン修理
取引類型:通信販売 ウェブサイト「ERUFLE」
代表者:小杉諭史
【特定商取引法に基づく不適正な取引行為】
広告における表示義務違反
(特定商取引法第11条)
当該事業者ウェブサイト(以下「当該サイト」)の「特定商取引法に基づく表記」と題するページ内において、役務提供事業者の住所について、「東京都渋谷区南平台2-12」と表示していたが、現に活動している住所を特定しうる情報として不完全な情報を掲載していた。
誇大広告等の禁止
(特定商取引法第12条)
当該サイトは本件契約の役務の対価について、実際のものよりも著しく有利であると消費者を誤認させる表示をしていた。
当該サイトの「トップページ」に「データもアプリも設定も残せる」と表示し、「修理料金メニュー」ページ内に「作業費一律4,980円税別」、「作業費+部品代だけ」、「部品もお得に3,900円税別~」と表示し、消費者が認識しやすい箇所には、あたかも作業費と部品代を支払えば、消費者のパソコンのデータもアプリも設定も残せるかのように表示していた
実際には、
・データやアプリや設定を残したまま修理を行う場合には、別途費用が必要な「パソコン診断データコース」の契約を締結する必要があり、契約内容の詳細は消費者が契約申込み後にパソコンを当該事業者に送付してから初めて提示されるものだった。
・データやアプリや設定を残したまま修理を行う場合に、実際に消費者が負担することとなる費用について、当該サイトの「特定商取引法に基づく表記」ページ内、「修理料金メニュー」、「約款」ページ内において、相反する表示をしていた。
・消費者がデータ回復を希望した場合、別途費用が発生することとなる。
承諾等の非通知
(特定商取引法第13条第1項)
当該事業者は、パソコン修理サービス提供に先立って対価の一部又は全部を受領したときに通知する、申込み承諾通知において、、規定に基づくサービスの提供者の住所及び電話番号並びに金銭を受領した年月日について記載していなかった。
債務履行の不当遅延
(特定商取引法第14条第1項第1号)
当該事業者は、パソコン修理サービス提供に先立って対価の一部又は全部を受領したときに通知する、申込み承諾通知において、「納期予定日」を表示していたにも関わらず、納期予定日を過ぎて、「部品の品質不良が確認されたため、再度取り寄せをいたしております」などと告げた上で、「詳細な発注情報等は商社との取り決め上開示できかねます」、「詳細な納品日等はご案内出来かねます」などと繰り返し、納期を不当に遅延させていた。
申込みの内容を容易に確認及び訂正できるようにしていない
(特定商取引法第14条第1項第2号、省令第16条第1項第2号)
当該事業者は、Eメールによって追加契約の申込みを受ける場合に、消費者が追加契約の申込みメールを送信したとき、その返信メールにおいて申込の意思表示を確認するのみで、追加契約の取引条件及び修理の内容を容易に確認し、訂正できるようにしていなかった。
【処分の内容】
(1) 業務禁止命令(法人)
内容:
通信販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)役務の提供条件について広告を行うこと。
2)役務提供契約の申込みを受けること。
3)役務提供契約を締結すること。
期間:
2019年12月27日から2020年9月26日まで(9か月間)
業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。
(2)指示(法人)
1. 業務停止命令を受ける原因となった違反行為の発生原因について、調査分析の上、検証すること。
2. 違反行為の再発防止に向けた、再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築すること。
上記指示に従わない場合には、行為者に対して6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。
(3)業務禁止命令(個人)
内容:
当該事業者に対して上記業務停止を命じた範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を禁止する。
期間:
2019年12月27日から2020年9月26日まで(9か月間)
理由:
当該事業者の代表取締役であり、当該事業者の通信販売における業務全般を統括管理し、営業方針等を決定するとともに営業に係る指揮命令を行うなど、当該業務の停止を命ぜられる業務の遂行に主導的な役割を果たしていた。
【東京都消費生活条例及び同条例施行規則に定める不適正な取引行為】
条例第25条第1項第5号、規則第8条第8号
当該事業者は、契約の解除を申し出た消費者に対して、債務不履行、債務履行に伴う不法行為又は契約の目的物の瑕疵により生じた事業者が負うべき損害賠償責任の全部を不当に免除する条件を付して契約を締結していた。
条例第25条第1項第6号、規則第9条第1号
当該事業者は、修理の内容に納得していない消費者に対し、「裁判になります」、「謝罪広告を大手全国紙に載せて頂く」などと威迫して困惑させ、消費者に契約に基づく債務の履行を迫り、又は当該債務の履行をさせていた。
オルネスホールディングは、自社HPにおいて、「弊社の行政処分に係るお詫びとお知らせ」として、指示内容に取り組むことを公表している一方で、「※調査過程で、事業者は事務所の閉鎖等を行い、電話や郵便等の連絡に一切応じなくなりました。と掲示されておりますが本件に関しては事実ではございませんので、弊社の顧問弁護士と協議の上、対応にあたっております。」としています。
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弊社の行政処分に係るお詫びとお知らせ
(オルネスホールディング株式会社 2019年12月27日)
http://www.olnes.co.jp/pdf/20191226.pdf
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オルネスホールディングに関する都内の相談状況は、2017年から2019年12月23日現在までに55件の相談が寄せられていました。
(東京都公表資料より引用)
また、特定消費者団体である消費者機構日本(COJ:コージェイ)が、消費者からの情報提供を受けて、消費者契約法及び景品表示法に照らして問題があると判断し、2018年1月11日付で、要請・申入・質問を行っていました。
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「とうきょう修理」の運営会社「オルネスホールディング株式会社」に対して
要請・申入・質問を行いましたが、回答がありません。
(消費者機構日本 2018年11月9日)
http://www.coj.gr.jp/zesei/topic_181108_01.html
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9カ月間の業務停止命令という極めて重い処分も頷けます。
《参考記事》
・特定商取引法・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)
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