消費者庁は、12月21日、デオドラントクリ-ムを販売する通販事業者のイーシャ(株)(東京都渋谷区)と同社の代表取締役等2名に対し、特定商取引法違反で3カ月間の業務停止を命じました。
また、業務停止命令と併せて、違反行為の是正等が指示されています。
違反の内容は、商品の効能に関する優良誤認表示および、商品の販売価格に関する有利誤認表示による「誇大広告等」となっています。
同社はウェブサイトにおいて、『ニオイの原因菌99.9%殺菌!』、『ニオイの病原菌99.9%除菌』及び『殺菌効果72時間持続』と記載。また、「本日限定sale終了まであと○時間○分○秒」などと表示し、あたかもサイト上に表示された時間内に注文すると、特別に値引きした価格で購入できるかのような表示が問題となっています。
誇大広告に関して、景表法ではなく特商法での処分となった背景等、内容を確認します。
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特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに
当該業者の代表取締役等に対する業務禁止命令(3か月)について
(消費者庁 平成30年12月21日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/2018/pdf/release_181221_0001.pdf
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【事業概要】
取扱商品:「CONIF(コニフ)」と称するデオドラントクリーム
健康食品等の電話勧誘販売
【認定した違反行為】
同社は、次のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、通通信販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがあると認められた。
(1)誇大広告等(商品の効能に関する優良誤認表示)(特定商取引法第12条)
同社は、遅くとも平成30年9月26日以降、通販サイト上で「ニオイの原因菌99.9%殺菌」、「ニオイの病原菌99.9%除菌」、「殺菌効果72時間持続」と記載していた。消費者庁は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、同社は資料を提出したが、合理的な根拠を示すものと認められなかった。
【表示例】
(2)誇大広告等(商品の販売価格に関する有利誤認表示)(特定商取引法第12条)
同社は、通販サイト上で、少なくとも平成30年10月12日から平成30年11月20日までの間、「本日限定sale終了まであと○時間○分○秒」、少なくとも平成30年10月12日から平成30年11月21日までの間、「SPECIAL TIME SALE あと00:〇:〇」などと表示し、あたかもサイト上に表示された時間内に注文すると、特別に値引きした価格で購入できるかのような表示をしていたが、実際には、常に同じ販売価格で本件商品を販売していた。
【表示例】
【処分の内容】
(1) 業務禁止命令
内容:
通信販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)同社の行う通信販売に関する商品の販売条件について広告を行うこと。
2)同社の行う通信販売に関する商品の売買契約の申込みを受けること。
3)同社の行う通信販売に関する商品の売買契約を締結すること。
期間:
平成30年12月22日から平成31年3月21日まで(3か月間)
業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。
(2)指示
1.当該商品を平成30年9月26日以降に購入した者に対して、違反事実を平成31年1月21日までに通知し、消費者庁長官に報告すること。
2.前記違反行為の発生原因について検証し、その検証結果について、平成31年1月21日までに、消費者庁長官に報告すること。
3.前記違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制について、本件業務停止命令による業務を再開する1か月前までに消費者庁長官に報告すること。
上記指示に違反した者には、100 万円以下の罰金、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。
報道では、以下のように報じています。
イーシャに関する消費者相談件数は16年以降18年8月から12月7日までに1126件だった。16年度は1件、17年度が333件、18年度は792件だった。消費者庁は内容の内訳は明らかにしていないものの、誇大広告の相談を含むと説明している。
イーシャの前期(18年7月期)の売上高は6億1300万円。誇大広告を行っていたデオドラントクリーム「ニコフ」のほか、抑毛クリーム「サラスキン」や加工食品を含む売上高となる。
◆消費者庁 イーシャに特商法違反で処分、クリームの表示で誇大広告
(通販新聞社 2019年1月10日)
https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=4470
今回のように多くの高額な金銭的被害に繋がった事案については、『通信販売に係る取引の公正並びに購入者の利益が著しく害されるおそれがある』として、特定商取引法違反が適用されたと考えられます。
また、平成29年12月1日に施行された特商法の改正では、刑事罰の強化として以下が盛り込まれています。
●次々と法人を立ち上げて違反行為を行う事業者への対処
・業務停止を命ぜられた法人の「取締役」や「取締役と同等の支配力を有すると認められるもの等」に対して、停止の範囲内の業務を、新たに法人を設立して継続することを禁止する。
⇒違反した場合、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金<新設>
本件においても、同社の代表取締役と同社から業務委託を受けた同社の取締役と同等以上の支配力を有するものと認められる者の2名に対して、3か月間、同社が命ぜられた業務停止の範囲内の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を禁じる処分が下っています。
悪質業者の取り締まりは、今後、一層強化される見込みです。
以下の記事も併せてご確認ください。
特定商取引法・消費者契約法の改正案が閣議決定。悪質業者の取り締まりを強化
《参考記事》
・「残り枠は1件!」浴室リフォーム工事訪問販売事業者に対する特定商取引法業務停止命令(平成25年2月)
・「ネイチャーウェイ」、テレビ通販返品表示に対する初めての特商法行政処分(平成24年11月)
・「パーフェクトデイズ」の開運商法に業務停止命令。特商法違反と景表法違反の違いとは(平成24年11月)
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