光触媒マスク4社に景表法措置命令。問題となる機能性の検証と表示の整合性:後編(消費者庁:2019年7月4日)

光触媒を使用したマスクの販売事業者4社に対する景表法措置命令事案について、前回は処分の概要をご紹介しました。

今回の不実証広告規制による、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として各社から提出されたデータは、いずれも根拠とは認められませんでした。

処分に対する各社の対応は、4社四様で、各社の措置命令に対するHPでの告知によると、全面的に違反を認め謝罪しているのはアイリスオーヤマのみでした。「発売前の光触媒に対する検証が不足していた、効果に対して誤認していた」としています。

今回は、処分に対する各社の対応を確認します。


「光触媒の効果そのものを否定されたものではない」と主張するのは、DR.C医薬と玉川衛材で、このうちDR.C医薬は、措置命令の内容を精査したうえで、今後の対応を検討中としています。
一方の玉川衛材は7月4日の告知では、パッケージの文言の追加や修正を行うとしていましたが、7月27日に「お詫びとお知らせ」を公表し、「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものでした」と措置命令に基づく公示を行いました。

大正製薬は、報道によると、措置命令を不服として、消費者庁に審査請求する方針を明らかにしています。
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「花粉を分解」光触媒マスク表示問題で大正製薬が消費者庁に徹底抗戦
(ダイヤモンド編集部 2019年7月18日)
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措置命令を受けた2019年7月4日には「今回の措置命令の指摘事項は、当社が消費者庁に提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものでない。今後、法的に採り得る対応・措置を検討中。」とコメントを発表し、さらに2019年7月12日には「消費者庁による措置命令に関する見解」とする文章で、消費者庁の指摘が合理的なものではないとする根拠を説明しています。

そこでは、大正製薬が行った複数の第三者機関による試験の概要と結果の説明と、それを消費者庁が「裏付けとなる合理的な根拠」と認めない判断を下した際の材料とした「消費者庁が独自に実施した試験」の内容を示し、その手法が科学的に不適切であると主張しています。

消費者にとって、商品選択に当たって重要なことは、果たしてそのマスクが光触媒技術による特別な効果で、アレルギーの原因物質が他のマスクよりも体内に吸入されにくいものなのか否か、だと思います。

大正製薬の行った試験と消費者庁の行った試験のどちらが「表示の裏付けとなる合理的な根拠」の判断手法として認められるのか、審査請求の結果を待つこととなりますが、景表法規制を捉えるうえで、事業者にとって注目の事案となりそうです。

各社の措置命令に対するHPでの告知状況は、以下の通りとなっています。

玉川衛材

本措置命令に関して消費者庁から指摘された内容は、本製品のパッケージ表示が虚偽表示であったというものではなく、あくまで当該表示の裏付けとなる合理的な根拠が十分ではなかったというものであり、本製品の光触媒効果自体が否定されたものではありません。

今後におきましては、パッケージの文言の追加や修正を実施するなど、適切に対応してまいる所存です。

HP「消費者庁からの措置命令に関するお知らせ」(2019年7月4日)
https://www.tamagawa-eizai.co.jp/wp-content/uploads/2019/07/%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8%80%85%E5%BA%81%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E5%91%BD%E4%BB%A4%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B_19.7.4HP.pdf

DR.C医薬

弊社が受けました措置命令は、対象マスク製品のパッケージ上の一部の表現につきまして、消費者庁に、弊社が提出した根拠資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったことにより受けたものであり、それらの表現が事実と異なっていると積極的に事実認定されたものではありません。

(中略) 

今回の措置命令につきましては、その内容を精査したうえで、今後の対応等を検討して参る所存ですが、弊社製品の表示につきましては、今回、措置命令を受けましたことを厳粛に受け止め、今後、より一層適正な表示に努めて参る所存です。

HP「消費者庁措置命令について」(2019年7月4日)
https://drciyaku.jp/news/2019-07-04/

アイリスオーヤマ

この度の違反については、発売前の光触媒に対する検証が不足していたこと、効果に対して誤認していたことが原因でした。

HP「「光の力で分解するマスク」に関する景品表示法の違反についてのお詫び」
(2019年7月5日)
https://www.irisohyama.co.jp/news/2019/hikari-mask.html

大正製薬

当社としては、パブロンマスクについては、光触媒が有するウイルス、細菌、花粉の除去の効果に関する科学的根拠に基づいて製品開発を行い、その合理的な根拠に基づいて製品パッケージ表示していると認識しており、消費者庁から措置命令が出されましたことは誠に遺憾であります。
今回の措置命令の指摘事項は、当社が消費者庁に提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものでないと考えております。今後、法的に採り得る対応・措置を検討中です

HP「消費者庁による措置命令について」(2019年7月4日)
https://www.taisho.co.jp/company/release/2019/2019070401.html
HP「消費者庁による措置命令に関する見解」(2019年7月12日)
https://www.taisho.co.jp/company/release/2019/2019071201.html


過去の行政処分取消訴訟として、以下の事案があります。

株式会社翠光トップライン及び株式会社ジェイトップラインに対する景品表示法に基づく措置命令について (消費者庁 平成27年2月27日):
平成27年3月18日、同社らが同命令の取消し及び損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴した。
平成28年11月10日、原告らの請求をいずれも棄却する判決がなされた(原告らが平成28年11月24日に東京高等裁判所に控訴後、平成29年2月10日、控訴取下げにより確定。)。
・特許取得技術でもNG?翠光トップライン断熱フィルムに景表法措置命令(消費者庁:平成27年2月27日)

株式会社村田園に対する景品表示法に基づく措置命令(平成28年3月10日):
平成28年3月25日、同社が同命令の取消しを求めて東京地方裁判所に提訴した。
平成29年6月27日、東京地方裁判所において原告の請求を棄却する判決がなされた(平成29年7月11日に判決確定。)。
・「村田園万能茶」に景表法措置命令。パッケージ表示と原料原産国の優良誤認

三菱自動車工業株式会社及び日産自動車株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令(平成29年6月14日):
平成29年9月13日、同社が同命令の取消しを求めて審査請求を提起した。
消費者庁は、平成30年12月21日、行政不服審査会の答申の判断を尊重し、裁決により、同命令を取り消した。
・日産の課徴金取り消しに見るOEM供給における相当注意義務

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《関連記事》
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。