消費者被害の防止と回復。消費者団体訴訟制度と適格消費者団体の機能強化へ(第269回 消費者委員会本会議)

先日の記事では、16社一斉処分で話題となった「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品販売事業者に対する、特定適格消費者団体による返金申し入れを取り上げました。

「特定適格消費者団体」ってなに?
何の権限で事業者に返金申し入れを行っているの?

と疑問に思う方も多いのでは。

それもそのはず。「特定適格消費者団体」やその制度に関する認知度はまだまだ低いのです。
平成28年11月に実施された消費者庁の消費者調査では、「消費者契約に関する制度や消費者団体による訴訟制度」についての認知度は28.4%に留まり、「特定適格消費者団体や財産被害回復のための訴訟制度」について知らない人は84.9%を占めていました。
(消費者庁:28年度消費者意識基本調査)

「特定適格消費者団体」とは、内閣総理大臣から認定された適格消費者団体の中から認定され、消費者の財産被害回復のための訴訟を起こすことができる団体です。
平成25年消費者裁判手続特例法の制定により創設され、平成28年10月から運用開始された新しい制度で、平成30年3月8日現在で東京と大阪の2団体のみの認定となっています。(適格消費者団体は17団体が認定)

消費者団体訴訟制度には、上記、特定適格消費者団体の被害回復制度に先立って、適格消費者団体による差止請求(※)が、平成18年消費者契約法改正により創設され、平成19年6月から運用されており、約450件(うち約50件で訴訟)の実績を挙げています。
(※)消費者被害の防止を目的に、事業者の不当な勧誘・契約条項の使用・表示について中止を求めることができる。

一方、被害回復の訴訟件数はいまだ0件で、その原因として、制度の認知度の低さだけでなく、被害状況調査の資金不足も課題となっています。

消費者庁の平成30年度予算案では、適格消費者団体等に対して、消費者団体訴訟制度の機能強化のために新規に3800万円を計上し、悪質事案による消費者被害の実態調査等を行うことにより、消費者団体訴訟制度の機能強化を図るとしています。

制度運用開始から1年半。特定適格消費者団体の存在感が徐々に増していきそうです。

◆第269回 消費者委員会本会議
 【資料3】 適格消費者団体の機能強化に向けた取組について
  http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/269/doc/20180308_shiryou3.pdf

<関連記事>
・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%
(平成28年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。