求められる折込チラシの通信販売広告改善、商品不適切表示は約3割(JADMA「平成25年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

社団法人日本通信販売協会(JADMA)「広告適正化委員会」では、2013年に実施された新聞折込チラシの通信販売広告実態調査の結果を発表しました。(※)
この調査は、通信販売取引改善を目的に2012年度に引き続き2回目の調査となっています。

この調査の実施期間中に、ダイエットサプリを販売する通販会社に消費者庁から措置命令が出され、それ以外にも、2012年度には複数の通販会社が措置命令を受けていました。
前回の調査では、その当該会社の新聞折込広告が複数抽出されて、本委員会で審査、問題有と判断されていたが、JADMAとして直接的な改善への働きかけを行なわなかったとしています。
その点を踏まえ、今回は調査では単に調査報告に留まらず、具体的な審査広告事例と共に、改善を目的とする具体的な活動を行うと発表しています。

≪調査レポート内容≫
1)エリア、折込曜日、商品分類、通販会社の業態の分布
2)通販取引上必要な事項の記載状況
3)商品内容に関する広告表示の適否
4)新聞折込チラシの広告事例(以下の3つのジャンルで判定)
①取引条件、商品説明ともに適正に表示されている広告
②法令に抵触していないが一部不適正な箇所があり、消費者の信頼を得るためにも改善が必要と思われる広告
③法令に抵触する怖れのある広告
5)調査の総括
6)改善を目的とする具体的な活動

上記調査レポートより、抜粋して紹介します。

●主要6都市、織り込み件数トップは大阪
主要6都市エリア毎の折込件数は、大阪が全体の34.7%と一番高く、次いで、東京が21.9%、札幌が15.0%。

●折り込み件数の多い曜日は水曜日
曜日毎の折込件数は、水曜日が全体の32.2%と一番多く、次いで、木曜日18.5%、火曜日16.0%、次に月曜日の11.3%と続く。前回2012年との違いは月、火曜日の件数が減り、一般のチラシ広告の折込が多いと言われている土曜日の通販広告の折込数が増えていた。

●「健康食品、食品類」のチラシが44%を占める。ダイエット通販会社への措置命令の影響も
商品分類では、「健康食品、食品類」が44%(264件)、次に「化粧品など」が24.7%(148件)、「家電家具などのホームリビング用品」が19.0%(114件)となっている。
前回2012年との比較では、健康食品関連の広告(特にダイエット関連商品)が減少している。これは昨年、消費者庁により複数のダイエット通販会社へ措置命令が出されたことによる影響と思われる。
「その他」は土嚢、灯油、漢方薬、住宅メンテナンス、清掃サービスなどの通販である。

●「通販会社の業態」は、メーカーが5割、小売が3割を占める
「通販会社の業態」は、メーカーが約半数の50.7%と一番多く、次いで通販専門または店舗販売も行っている「小売」が32.5%であり、この2業態で全体の83.2%を占めている。
「その他」は媒体社の通販部門、住宅メンテナンス会社、工事店など。年末のおせち料理の通販を行ったホテル・レストランのサービス業が加わった。
前回2012年との比較では、「小売」が5.2%減少、「その他」が3.8%減少し、「中間流通(問屋・商社)」が4.9%増加している。

●特定商取引法記載事項および、返品特約に関する表示について5割が欠落
前回に比較し改善はしているものの、600件中313件の通販広告で各種関連法規に定める何らかの記載事項が欠落していた。特に記載欠落が多かった事項は、「支払時期」が36.0%、「返品の際の送料」が28.7%、「返品特約」が22.5%となっている。
「支払時期」では、後払いの振り込みやコンビニ決済などでの支払方法がある場合の記載漏れが目立つ。

●商品内容に関する不適切な広告表示は約4割
商品内容に関する広告表示については、前回と比べると約10%の改善となるものの、依然約3割が不適切な表示となっている。「表示に関する各種法令やガイドライン等」に抵触する恐れがあるもの、または消費者視点から信頼性に欠けるものとして改善が必要と判断された。

商品分類別では、「適していない」割合が多いのは「服飾雑貨など」の61.5%(16件)、「化粧品など」の43.0%(65件)、「健康食品、食品類」の29.5%(78件)の順となっている。
「服飾雑貨など」では、金運・開運を謳った財布や宝飾品の表示が目立った。

通販会社を業態別にみると、「適していない」割合が多いのは、「メーカー」の38.2%(116件)次いで、「中間流通」の29.7%(19件)、「小売」の23.1%(45件)となっている。

●調査結果に対するその他のコメント
・取引内容、商品内容ともに不備が目立ったのは、新聞社やその関連会社などが発行するタブロイド紙に掲載された通販広告である。これは、通販会社の意識のなさはもとより、掲載を許可する媒体側のチェック体制の整備と、広告枠に関しても必要事項が記載しうるスペースを配慮する必要もある。

・チラシに加え、通販会社のホームページや通販サイトの内容も比較検討して確認作業を行ったところ、チラシで表示している価格や販売数量などがホームページの表示内容と食い違っていたものがあり、どちらに信憑性があるか判明できないものが多数見受けられた。

・一方、通販サイトについては各社ともかなり抑えた表示となっているにも関わらず、チラシ広告については表示に誇張が見られ、全く別物となっているケースが相変わらずあった。
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JADMAの広告適正化委員会が発表した、今回の調査結果を踏まえた改善を目的とした活動として、特に以下の対応が注目されます。

●法令に抵触する怖れのある広告の通販会社への対応
• 調査結果を書面で報告。
• 併せて「改善の具体策」の書面による回答を依頼。
• 上記対応に対する協力姿勢がなく、違法性や悪意性があり、消費者にとって多大な不利益やトラブルの発生が予測できる広告表示を再度行う場合には、JADMAから関係省庁などへ通報していく。

●折込掲載新聞社への対応
通販広告特集や通販企業の広告を掲載するタブロイド紙を発行する新聞社および関連会社に対し、広告内容のチェック体制や必要事項記載に関する協力要請を行う。
調査報告書では、具体的な審査広告事例も多く公表されていますので、参考にしていただくとよいでしょう。


通信販売取引改善のための通販広告実態調査 <新聞折込チラシ>編 VOL.2
(社)日本通信販売協会 2013年度調査報告書
https://www.jadma.or.jp/pdf/2014/TsuhanChirashiSurveyReport2014.pdf

<調査概要>
第1回調査:2013年9月1日から10月16日に折り込まれたチラシ(300件)
第2回調査:2013年11月1日から12月7日に折り込まれたチラシ(300件)
実施エリア:主要都市である札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6都市を選択
対象チラシ:各都市の発行部数トップ紙の朝刊に月曜日から日曜日まで折り込まれたものを収集。新聞に折り込まれる地域タブロイド紙の通販広告も対象。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。