「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。未成年者の「詐術」の判断基準具体化へ(経済産業省 平成28年6月)

経済産業省で、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(※)」の13回目の改訂が実施され、6月3日に公表されました。

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました
(経済産業省 平成28年6月3日)
http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160603001/20160603001.html

今回の主な改定内容は、以下の項目です。
———————-
1 「Ⅰ-4 未成年者による意思表示」の改訂
2 「Ⅰ-7 ユーザー間取引(インターネット・オークション、フリマサービス等)」の改訂
3 「Ⅱ-1 ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任」の改訂
4 「Ⅱ-9-1 インターネット上の著作物の利用」の改訂
5 「Ⅲ-11 データ集合の利用行為に関する法的取扱い」の改訂
6 「Ⅲ-13 データ消失時の顧客に対する法的責任」の追加
7 「Ⅳ 国境を越えた取引等に関する論点」の改訂
8 その他の修正
・ワンクリック請求と契約の履行義務
・インターネットショッピングモール運営者の責任
・インターネット上で行われる懸賞企画の取扱い
・共同購入クーポンをめぐる法律問題について
・景品表示法による規制
・サムネイル画像と著作権
———————-

改定のポイントを紹介します。


1 「Ⅰ-4 未成年者による意思表示」の改訂
未成年者が取引の相手方に対して成年者であると誤信させるために「詐術を用いた」とされ取消権を失う可能性のある例を囲み事例から本文中に書き下す形に修正し、詐術に該当するか否かの判断要素について可能な限り具体的に記述。

改定内容:
(準則i.51ページ)
「詐術を用いた」ものに当たるかは、未成年者の年齢、商品・役務が未成年者が取引に入ることが想定されるような性質のものか否か(未成年者を対象にしていたり訴求力があるものか、特に未成年者を取引に誘引するような勧誘・広告がなされているか等も含む)及びこれらの事情に対応して事業者が設定する未成年者か否かの確認のための画面上の表示が未成年者に対する警告の意味を認識させるに足りる内容の表示であるか、未成年者が取引に入る可能性の程度等に応じて不実の入力により取引することを困難にする年齢確認の仕組みとなっているか等、個別具体的な事情を総合考慮した上で実質的な観点から判断されるものと解される。
すなわち、「未成年者の場合は親権者の同意が必要である」旨を申込み画面上で明確に表示・警告した上で、申込者に生年月日等未成年者か否かを判断する項目の入力を求めているにもかかわらず未成年者が虚偽の生年月日等を入力したという事実だけでなく、さらに未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足りる」行為といえるのかについて他の事情も含めた総合判断を要すると解される。

2 「Ⅰ-7 ユーザー間取引(インターネット・オークション、フリマサービス等)」の改訂

オークションと同じく消費者間のいわゆるCtoC取引であるフリマサービスの普及を受け、サービス運営事業者の利用者に対する責任や、取引当事者間の法的関係などのオークションとフリマサービスで共通する事項について、オークションのみならずフリマサービスも含むよう記載を拡充。

3 「Ⅱ-1 ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任」の改訂
違法情報をインターネット上で閲覧可能にした事業者の削除義務について、従前から二分されている(a)(b)の裁判例に(c)の裁判例を追記。

(a) 違法な情報の流通を知り又は知り得た場合には直ちに削除する義務があるとして広く削除義務を認める基準を採用するもの
(b) 事業者が発信者である、権利侵害が明白である等、例外的な事情がない限り削除義務を負わないとする制限的に責任を認める基準を採用するもの
(c) サイトの目的、管理体制、被害者が採り得る救済手段の有無、名誉毀損の態様や程度等を総合して個別具体的に判断すべきとするもの

4 「Ⅱ-9-1 インターネット上の著作物の利用」の改訂
・サイト情報のプリントアウトの取扱いに加えて大型スクリーン投影の取扱いを追記。
・二次利用されるインターネット上の情報として、掲示板への書き込みに加えて投稿画像・投稿動画を追記。

5 「Ⅲ-11 データ集合の利用行為に関する法的取扱い」の改訂

データベースから取り出された情報・データの扱いに関する既存項目を、典型的なデータベース以外のデータ集合を対象に含めるよう拡張する形で改訂。
著作権法及び不法行為法上の取扱いに加え、不正競争防止法上の取扱いについても記述を追加するとともに、個人情報保護法等による制限についても触れる。
データ提供者とデータ受領者との間で定める契約の参考として公表された契約ガイドライン(※)を紹介。
(※)
経済産業省商務情報政策局情報経済課
「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン―データ駆動型イノベーションの創出に向けて―」
http://www.meti.go.jp/press/2015/10/20151006004/20151006004.html

6 「Ⅲ-13 データ消失時の顧客に対する法的責任」の追加

クラウドサービス事業者が顧客のデータを消失した場合の、契約上の責任に関する基本的な考え方を示す項目を新規に策定。

7 「Ⅳ 国境を越えた取引等に関する論点」の改訂
「日本の事業者」又は「日本の消費者」が各項目の主体となるよう明確化し、それぞれが国外の相手方と取引等を行う場合について論じる構成に整理。
その他、民事訴訟法等の平成23年改正を受けた記述に改める。

経産省では、準則について、電子商取引、情報財取引等をめぐる取引の実務、それに関する技術の動向、国際的なルール整備の状況に応じて、今後も柔軟に改訂していく予定。
改訂に向けた事業者からの意見を随時受け付けています。

【意見送付先】
住所:〒100-8901
東京都千代田区霞が関 1-3-1
経済産業省商務情報政策局情報経済課
FAX 番号:03-3501-6639
電子メールアドレス:ecip-rule@meti.go.jp
※件名は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則についての意見」としてお送りください。

(※)
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」とは
電子商取引、情報財取引等をめぐる現行法の解釈の指針となるもの。
電子商取引、情報財取引等に関する様々な法的問題点について、民法をはじめとする関係する法律がどのように適用されるのかを明らかにすることで、取引当事者の予見可能性を高め、取引の円滑化に資することを目的として、学識経験者、関係省庁、消費者、経済界などの協力を得て、経済産業省により平成14年3月に策定された。

《関連記事》
・未成年者の「詐術」の判断基準「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。(経済産業省 平成26年8月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。