2023年10月の施行から約2年8カ月、ステルスマーケティング告示の9事案目の行政処分です。
2026年6月29日、消費者庁は高光製薬株式会社(神戸市東灘区)が販売するサプリメント(栄養機能食品)「ノビルン」「ノビルンC」に関する表示に対して、景品表示法第5条第3号による措置命令を行いました。
2024年11月の大正製薬、2025年3月のロート製薬と、製薬会社のサプリメントへのステマ告示違反認定が続いています。本件も、過去の事案同様、SNS投稿を自社サイトに転載する手法が問題となりました。
高光製薬は、商品宣伝のために自ら第三者を募集し、商品を無償提供したうえでSNS投稿を依頼。
そのSNS投稿のうち、画像部分を抜粋し、PR表記等の関係性表示を付けないまま、自社ウェブサイトだけでなく、楽天市場、Yahoo!ショッピングに開設した自社販売ページにも掲載していました。
本記事では処分の概要と、繰り返されるSNS投稿を自社サイトに転載する手法について景表法上の留意点を解説します。続く会員限定記事では、消費者庁公表資料に掲載された処分対象の画像と、修正された現在の公式LPを比較しながら、ステマ表示に関する部分だけでなく、今回の処分を免れたページ内のNo.1表示や比較広告の表現についても考察します。
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高光製薬株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2026年6月29日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/046721
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《参考記事》
・大正製薬NMNサプリにステマ告示3事案目。自社WebサイトのSNSタイアップ投稿転載に注意 (消費者庁 2024年11月13日)
・ロート製薬の機能性表示サプリにステマ告示措置命令。続く大手製薬会社のステマ違反、自社サイトのSNS投稿転載に注意 (消費者庁 2025年3月25日)
違反概要
【対象商品】
「ノビルン」及び「ノビルンC」と称する食品
| 表示媒体 | 表示期間 | |
| 自社サイト | ノビルン【公式】 -成長期においしく栄養バランス- | 2025年4月27日〜10月25日、10月27日、 11月20日〜12月11日 |
| ノビルンC【公式】】 -スマホ世代においしく栄養サポート- | 2025年10月16日〜25日、 10月27日、 11月20日〜12月11日 | |
| 楽天市場の 自社ストア | 【楽天総合1位】ノビルン | 2025年4月25日〜12月11日 |
| 【キッズ部門1位】ノビルンC | 2025年10月16日〜12月11日 | |
| Yahoo!ショッピング の 自社ストア | ノビルン【LINE登録で300円OFFクーポン】 ノビルン | 2025年4月26日〜10月29日、 11月12日〜12月11日 |
| ノビルン【LINE登録で300円OFFクーポン】 ノビルンC | 2025年10月16日〜29日、 11月12日〜12月11日 | |
【違反表示内容】
本件2商品の販売促進活動のために募集を行い、当該募集に応じた第三者に対し、本件2商品を無償提供した上、本件2商品に関してSNSに投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した表示について、画像部分を抜粋して、自社ウェブサイト等に表示していた。
このことから、当該表示は高光製薬が自己の供給する本件2商品の取引について行う表示(事業者の表示)であると認められる。
表示例)
「SNSでも大人気!」
「Instagram」と称するSNSの公式アイコンを模したイラスト
本件商品を顔の右側に掲げる人物の画像 等。
上記表示は、高光製薬が当該第三者に依頼した投稿であることを明らかにしておらず、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められない。
よって、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。
表示例:「ノビルン【公式】-成長期においしく栄養バランス-」と称する自社ウェブサイト

「事業者の表示」の要件
本件では、以下の3つの点から、第三者の表示が「事業者の表示」と認定されたと考えられます。
1.事業者が商品の販売促進活動のために募集し、商品を無償提供した上でSNSに投稿を依頼している
2.その依頼によって、第三者が投稿している
3.当該第三者の投稿の画像部分を事業者が抜粋して表示している
モニターへの無償提供やその投稿自体は、「第三者の自主的な意思」であれば「事業者の表示」とはなりません。(ステルスマーケティングに関するQ&A Q4)
しかし、本件では、商品の無償提供だけでなく、SNSへの投稿依頼(投稿内容への指示の有無にかかわらず)によって第三者が投稿した表示ですので、「第三者の自主的な意思」での投稿ではありません。
また、事業者が依頼・指示等をしていなくても、当該第三者の表示を恣意的に抽出したり、表示内容に変更を加えて掲載する場合は、事業者の表示とみなされます。(ステマ運用基準第2の2(1)キ)
ステマ告示違反の典型的なパターン
高光製薬の代表者は今回の件について、取材に対し、自社の販売サイトへの掲載は全体が広告であるという認識があったため、SNSからの切り抜き部分にあえてPR表示を行う必要はないと考えていた、と説明しています。
しかし、2023年10月のステマ告示施行以降、SNS投稿の自社サイト転載が問題視された事案は今回が初めてではありません。
2024年8月のRIZAP、同年11月の大正製薬、2025年3月のロート製薬、ダイエットプレミアム、2026年3月のフレイスラボと、今回で6例目となり、ステマ告示違反9事案のうち6事案がこのパターンでの処分となっています。
ステマ告示違反の典型的なパターンの一つとして、規制内容の正しい理解とSNSタイアップ投稿の適切な運用管理が強く求められます。
SNSタイアップ投稿の自社メディア転載の留意点
確かに、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(※)では、基本的に事業者自身のウェブサイトやSNSのアカウントでの表示は、事業者の表示であることが明らかであるとして、告示の対象となるものではない(つまり、PR表記は不要)とされています。
ただし、自社メディア上の表示であっても、事業者の表示ではない(例えば、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるもの)と一般消費者に誤認されるおそれがある場合には、第三者の表示について事業者の表示であることを明瞭に表示する必要があります。(ステマ運用基準第3の2(2)オ)
また、「SNSでも大人気!」というタイトルも、「お客様の声」というタイトル同様、通常、顧客の自主的な意思に基づくSNS上の投稿が記載されていると理解されるものと考えられ、そのタイトルで「事業者の表示」に当たる第三者の投稿を掲載することは適当ではないでしょう。(ステルスマーケティングに関するQ&A Q16)
「事業者の表示」に当たる第三者の投稿を掲載する場合は、自社の依頼した第三者の投稿であることが、ウェブサイトを見た一般消費者にとって明瞭になる形で表示する必要があります。
対応例)
・事業者が第三者に依頼・指示をして、ある内容の表示をさせた場合には、「弊社から○○に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」「プロモーション」といった表示をする。
・依頼・指示等をしていないSNS上の投稿であっても、恣意的に抽出したり、表示内容を変更して掲載する場合は、事業者の表示である旨を示す。
(※)「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf
ステルスマーケティングに関するQ&A
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing
高光製薬は、消費者庁の指摘を受けて消費者が誤解する可能性を認識し、該当箇所はすでに改善したとしています。現在の公式LPを確認すると、ステマ表示に関する部分だけでなく、ページ内のNo.1表示や比較広告の表現にも変化が見られます。これらは今回の命令の直接の対象ではありませんが、消費者庁より何らかの指導が入ったことが推測されます。事業者が処分後にどのような修正判断を行ったのかは、実務上非常に参考になるポイントです。
会員限定記事では、消費者庁公表資料に掲載された処分対象の画像と、修正された現在の公式LPを比較しながら、修正の背景と意図を探ります。
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