ホットペッパーのクーポン、エステサロン計37店舗で期限後も同条件で継続。エステサロン運営3社に景表法措置命令 (消費者庁:2026年3月26日)

消費者庁は2026年3月25日に、エステティックサロンを運営する3社(株式会社シェイプアップハウス、株式会社ミス・パリ・ジェイピーエヌ、株式会社スリムビューティハウス)に対し、景品表示法(有利誤認)に基づく措置命令を行いました。
美容予約サイト「HOT PEPPER Beauty」に掲載されたクーポンの、不適切な期間限定のキャンペーン表示が問題となった事案です。

3社はクーポンに「有効期限」を設定し、あたかもその期限内に申し込んだ場合に限り、割引価格で施術が受けられるかのように表示していました。しかし実際には、期限後も新たなクーポンによって同額の割引価格で施術を受けることが可能だったことが、有利誤認とみなされました。

本事案で注目すべき3つの論点
論点1 期間限定キャンペーンにおける「実質的同一性」の落とし穴
 ─期間限定表示における有利誤認の判断基準─
論点2 「確約計画の認定」と「措置命令」を分けた分岐点
 ─本件(措置命令)と(株)ソシエ・ワールド(確約認定)の対比─
論点3 行政による広告・取引適正化への最新執行姿勢
 ─事案に応じた多様な執行手法(特商法×景表法)の活用・連携─

本記事では、事案の概要と「論点1」について解説します。続く会員限定記事では、実務の生命線となる「論点2」「論点3」について詳しく分析します。

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エステティックサロンの運営事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁:2026年3月26日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/045622
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【3社の概要・対象役務】

事業者名対象店舗対象役務表示期間
(株)シェイプアップハウス(大阪市北区 代表取締役下村留弥以)  「エステティック ミス・パリ」と称する13店舗  3役務
「スリム革命ダイエット」等
2024年12月1日〜 2025年5月28日
(株)ミス・パリ・ジェイピーエヌ
(大阪市北区 代表取締役下村留弥以)  
「エステティック ミス・パリ」と称する3店舗
(株)スリムビューティハウス
(東京都港区 代表取締役 西坂 才子)
21店舗6役務
「骨盤&代謝巡りダイエットSpecial体験」等
2024年12月1日〜 2025年2月28日

シェイプアップハウスとミス・パリ・ジェイピーエヌはグループ会社であり、いずれも「エステティック ミス・パリ」の名称で店舗を運営しています。

【違反内容】
表示媒体・表示箇所:
「HOT PEPPER Beauty」と称するウェブサイトに掲載された店舗ページ内の「クーポンメニュー」ページで提供するクーポン。

表示内容:
3社は、HOT PEPPER Beautyで提供するクーポンにおいて、有効期限を付した割引価格(例:「今だけ70%OFF」「24,200円→5,500円」「有効期限:2024年12月末日まで」等)を表示。
あたかも、同期限内に当該クーポンを利用して申し込んだ場合に限り、割引が適用された価格で本件役務の提供を受けることができるかのように表示していた。

実際には、同期限後に申し込んだ場合であっても、期限内と同額の割引が適用された価格で本件役務の提供を受けることができるものであった。

措置命令書の別表からは、上記16店舗(シェイプアップハウス・ミス・パリ)・21店舗(スリムビューティハウス)それぞれで、役務ごとに実質的に同一の価格・条件のキャンペーンを、「有効期限」を数週間〜1か月おきに更新しながら、間断なく継続していた実態がわかります。

シェイプアップハウス・ミス・パリ・ジェイピーエヌ(3役務)

役務名表示期間表示切替回数価格
スリム革命ダイエット 【足スリム】2024/12/1〜 2025/5/28  6回5,500円で 据え置き
スリム革命ダイエット 【むくみ改善】2024/12/1〜 2025/2/26  3回5,500円で 据え置き
フェイススリム2024/12/1〜 2025/2/26  3回7,700円で 据え置き
生コラーゲン スペシャル美顔法 (2メニュー)2024/12/1〜 2025/2/26 各3回7,700円で 据え置き

スリムビューティハウス(6役務・代表店舗例:大宮総本店)

役務名表示期間表示切替回数価格
骨盤&代謝巡り ダイエットSpecial体験2024/12/1〜 2025/2/28  5回1,500円で 据え置き
骨盤Infinity体験
(4メニュー)
2024/12/1〜 2025/2/26 各3回2,500円で 据え置き
骨盤キャビテーション体験2024/12/1〜 2025/2/26  3回1,500円で 据え置き
骨盤ダイエットBeauty
(2メニュー)
2024/12/1〜 2025/2/26 各3回1,500円で 据え置き
骨盤ダイエット美脚体験2024/12/1〜 2025/2/28  4回1,500円で 据え置き
骨盤ダイエット&脂肪ケア2024/12/1〜 2025/2/28  4回5,000円で 据え置き

【表示例:シェイプアップハウス及びミス・パリ・ジェイピーエヌ】

【表示例:スリムビューティハウス】

(消費者庁発表資料より抜粋)

【論点1】期間限定表示における有利誤認の判断基準

期間限定キャンペーンは、消費者に「今申し込むことが有利である」と認識させて購入を促す有効な手法です。それゆえに、表示した期限後も同一内容のキャンペーンを間断なく継続することは、実際よりも取引条件が有利であると誤認させるため、景表法上の「有利誤認」に該当します。
他方、同一内容のキャンペーンでなければ継続可能ということになりますが、わずかな内容変更の場合は認められないおそれがあります。
景品表示法の判断基準は、事業者の内部的な運用方針ではなく、あくまで消費者がその表示を見てどう誤認するかという点にあります。

今回の事案では、数週間〜1か月おきに「クリスマス限定」「お正月太り解消」「春までに速攻痩身」など、季節のイベントに合わせてクーポンの訴求文言(キャンペーン名)を切り替えていました。しかし、割引率・提供価格・施術内容は据え置かれたままでした。
消費者庁は、これらを別々のキャンペーンではなく一連の同一キャンペーンの継続とみなし、有利誤認と認定しています。

表示文言適用期間
「今だけ50%OFF☆クリスマス直前!!
【部位選択OK】脂肪ケア100分\10000→\5000」
2024年12月1日〜同月25日
「今だけ50%OFF☆お正月太り解消!!
【部位選択OK】脂肪ケア100分\10000→\5000」
2024年12月26日〜2025年1月31日
「今だけ50%OFF☆春までに速攻痩身!!
【部位選択OK】脂肪ケア100分\10000→\5000」
2025年2月1日〜同月28日
(スリムビューティハウスの一部役務の例。割引率・提供価格・施術内容はいずれの期間も同一)

これは、期間限定表示規制において繰り返しが認められるキャンペーンは、「実質的な取引条件が変わっているか」を基準にしていることを示しています。

内容や受ける施術、割引率が同じであれば、イベント名を変えても、期限を設定することで消費者を急かしていることには変わりありません。

本件以外にも、期間限定表示規制の判断基準の指針となる処分事案が多数あります。

過去の重要事例から有利誤認の線引きをさらに深く学びたい方は、以下の解説記事も合わせてご確認ください。
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・キャリカレ通信講座の景表法措置命令にみる二重価格と期間限定キャンペーンの留意事項

本事案で読み解く事業者対応と行政の最新の執行トレンド

消費者庁は、今回の3社に対する景表法による措置命令に先立ち、今年1月にスリムビューティハウスに対し、特定商取引法違反(「契約解除に関する不実告知」と「迷惑勧誘」)による業務停止命令を出しています。
また、本事案とほぼ同じ行為類型(HOT PEPPER Beautyのクーポンでの期限表示と同一役務の繰り返し)について、同時期に株式会社ソシエ・ワールドが「確約計画」の認定を受け、措置命令を回避しています。

同時期にほぼ同一の行為を行いながらも対応のタイミングや姿勢によって行政対応が異なり、事業活動への影響も大きく異なってきます。そして今回の事案を深く読み解くと、エステ業界に限らず、特商法と景表法がシームレスに連携する行政執行の新しい潮流が見えてきます。
本事案は、事業者がコンプライアンスにおいて留意すべき重要な事例と言えるでしょう。

会員限定記事では、消費者庁が公表している確約手続の制度枠組みをもとに、確約認定と措置命令の分かれ目はどこにあるのか、スリムビューティハウスが受けていたもう一つの行政処分(特定商取引法)が、今回の判断にどう関わっていたと考えられるのかを深堀り検証します。さらに、業種を超える行政の最新の執行トレンドを詳しく解説します。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。