消費者庁は2025年10月17日に、英会話教室NOVAを運営する(株)NOVAランゲージカンパニー(東京都品川区)に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。
対象となったのは、支払わせた実績のない「通常入会金」での二重価格表示です。
「通常価格」の二重価格表示での有利誤認表示での処分は、期間限定表示と並んで多数出されています。2024年度において5事案、2025年度では2事案目、更に確約計画認定も1事案となっており、継続的な景表法違反の重点監視分野であることが分かります。
また、本事案で問題となった英会話教室の表示では、英会話教室の運営主体、サービス内容や表示を決定し主導している事業者、その上位にある持株会社が存在し、組織構造と役務提供の実態が絡み合っており複雑な事案です。
本記事では、このNOVAへの措置命令事案から、セットでの処分もあり得る「通常価格」の二重価格表示と期間限定表示の違反認定ポイント、そして実務上特に重要となる措置命令の対象となる事業者の考え方について、深堀します。
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株式会社NOVAランゲージカンパニーに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁:2025年10月17日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/043914
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【違反内容】
対象商品:
英会話コース6コース
「おためし留学」「マンツーマン留学」「オールインコース」「フリープラン」「特別コース」「NOVAバイリンガルKIDS」
表示媒体:
自社ウェブサイト:「NOVA駅前留学。」
期間:
2024年9月1日から2025年4月30日までの間、ほぼ継続して表示。
表示内容:
例えば、「おためし留学」コースについて、「入会金 一般 20,000円(税込22,000円)▶0円」、「NOVAバイリンガルKIDS」コースについて、「入会金 KIDS 10,000円(税込11,000円)▶0円」と表示。
あたかも、税込22,000円、税込11,000円と称する価額(「本件通常入会金」という)は、英会話コースを受講するために英会話教室NOVAへ入会する者が通常支払う費用であり、実際に支払う費用が当該通常支払う費用に比して安いかのように表示していた。
実際:
本件通常入会金は、英会話コースを受講するために英会話教室NOVAへ入会する者に対し、最近相当期間にわたって支払わせた実績のないものであった。
【表示例】

違反認定の重要論点:なぜNOVAは「通常価格」のみの認定だったのか
提供実績のない通常価格による二重価格表示と期間限定表示は、有利誤認違反に多い認定パターンです。通常価格を比較対照価格にした割引キャンペーンを繰り返し行う場合、その両方の違反を犯すリスクをはらんでいます。
例えば、過去の処分事例として、2022年3月24日に措置命令を受けた(株)EE21の事案では、資格取得講座の表示において提供実績のない「通常受講料」での割引表示と、期間限定をうたった割引の繰り返しで、両方の違反認定となっています。
他方、NOVAの不当表示においては、「入会金」0円の表示を8か月間継続していたことで、通常入会金が「最近相当期間にわたって支払わせた実績のない価格」と認定されましたが、「期間限定表示」での有利誤認の認定はされていません。
この判断の違いは、どこにあるのでしょうか?
また、本事案は、複雑なグループ会社間の表示責任の所在、そして「最近相当期間」の具体的な判断基準など、実務担当者が対策を講じる上で欠かせない論点を多く含んでいます。
続きは会員限定記事で:実務で必須となる景表法対策の深掘り
会員限定記事では、以下の具体的な対策ポイントを詳しく解説します。
1)期間限定表示違反認定のポイント:「限定性の誤認」
2)「最近相当期間にわたって販売されていた価格」の判断基準: 公取委ガイドラインに基づく具体的な要件
3)措置命令の対象となる表示責任の所在: 複雑な組織構造で「誰が責任を負うのか」
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【関連情報】令和7年度違反・違反被疑事例
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