東京都によるステマ告示措置命令。ダイエットプレミアムのダイエット食品アフィリ広告、優良誤認も (東京都 2025年3月28日)

東京都が、3月28日、ダイエット食品について不当表示を行っていた通信販売事業者(株)ダイエットプレミアム(東京都渋谷区)に対し、景品表示法措置命令を行いました。
今回の処分の留意ポイントです。

  • 地方自治体で初となるステマ告示措置命令。SNSタイアップ投稿の自社ECサイト転載での違反認定
  • SNS上のバナー広告から遷移したアフィリエイトサイトにおける合理的根拠のないダイエット効果表示と、事実と異なる「第三者の主観的評価」を訴求するNo.1表示に対する優良誤認認定
    (痩身効果表示は、不実証広告規制(※)による)

処分の概要とステマ規制およびアフィリエイト広告の留意ポイントについて確認します。

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景品表示法に基づく措置命令
ステルスマーケティング告示に該当する広告に対する措置命令は地方自治体で初
 (東京都 2025年3月28日)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/03/2025032839
———

(※1)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


違反事業者
株式会社ダイエットプレミアム

違反概要
【対象商品】
「酵素づくしのべっぴん炭クレンズ」と称する食品

【表示媒体・期間】
アフィリエイトサイト:
少なくとも、2023年10月(27日、29日、31日)、11月(2日~16日、18日、22日~24日、26日、28日、29日)、12月(1日、2日、4日、7日、9日~10日、16日~17日、24日)
2024年6月(6日、7日、14日~18日、24日、26日~30日)、7月(1日~3日、5日~6日、13日~14日)
自社販売ウェブサイト:
2023年10月27日~12月2日、4日、7日、12月9日~10日、12月13日~22日、24日、2024年6月1日~7月30日

【違反内容】
(1) 優良誤認表示(効果性能)
アフィリエイトサイトの表示例
・「\宿便がドババッ!/まるで飲む腸内洗浄⁉ テレビでの放送を禁止されてた 「強力脂肪溶解術」を使ってみたら… -12kg 達成する人続出で大炎上(絵文字)」、
「1日目」「3日目」「7日目」という文言の下に、腹部を露出した人物の画像3枚及びその直下に「59.8kg」「51.6kg」「43.1kg」とそれぞれ表示された体重計の表示パネル部分と思われる画像3枚等を掲載。
・漫画において、「クチコミ 1週間で -8kg痩せた」、「クチコミ 好きな洋服を着れて モテ期到来♡」、「すごい…!!」、「高評価ばっかり…!」と記載し、
「信じがたいアイテムに調べてみると クチコミは目を疑う高評価ばかり!!」と記載して、
「●●●●さん 36歳 クチコミ32件 ☆☆☆☆☆☆☆7」、「これヤバい(絵文字) 1週間飲んだだけなのにどんどんウエストゆるくなって、3L着てたのにXSになったんだがww ウキウキで体重計のってみたらなんと16kgも痩せてる!! 大好きなお菓子も揚げ物もやめてないのに。 この粉いい意味で気を付けたほうがいい笑」等と記載し、 腹部を露出した人物の画像2枚を並べて掲載。

(東京都公表資料より引用)

あたかも、本件商品を摂取することで、「誰でも食事制限や運動をすることなく、短期間で容易に顕著な腹部の痩身効果を得られる」かのように示す表示を行っていた。

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社からは「合理的な根拠を示す資料は存在しない」旨の回答があった。

(2) 優良誤認表示( No.1表示)
アフィリエイトサイトの表示例
・「米国のダイエット部門で第1位に!」と題し、「炭クレンズはアメリカのダイエット部門で第1位にも選ばれています。」、
外国の雑誌記事に本件商品と思われる画像を掲載し、「短期間で痩せる必要のあるセレブに人気で、第1位に選ばれているんです!」と記載。

(東京都公表資料より引用)

あたかも、本件商品について、「短期間で痩せる必要のあるセレブから支持され、米国のダイエット部門で人気第1位に選ばれた」かのように示す表示を行っていたが、実際にはそのような事実はなかった。

(3) ステルスマーケティング告示
同社は、仲介事業者を経由し、複数のインフルエンサーに対して、対価を提供することを条件に、本件商品についてInstagramに投稿を依頼したことによって当該インフルエンサー達が投稿した表示を、同社が依頼した投稿であることを明らかにせずに抜粋して、自社販売ウェブサイトにおいて表示していた。

(東京都公表資料より引用)

ステマ対策、SNSタイアップ投稿の自社メディア転載に注意

地方自治体で初となったステマ告示措置命令も、SNSタイアップ投稿の自社メディア転載によるものでした。同ケースでのステマ告示違反認定は、2024年8月のRIZAP、同年11月の大正製薬、2025年3月のロート製薬と4例目となります。
本件では、仲介事業者を経由し、複数のインフルエンサーに対して、対価を提供することを条件に、本件商品についてInstagramに投稿を依頼したことによる表示が、「事業者の表示」と認定されました。
そして、インフルエンサー達が投稿した表示を抜粋して、同社が依頼した投稿であることを明らかにせずに自社ECサイトに掲載していたことが、一般消費者が事業者の表示であることが判別困難な表示とみなされました。

自社メディア上の表示であっても、事業者の表示ではない(例えば、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるもの)と一般消費者に誤認されるおそれがある場合には、第三者の表示について事業者の表示であることを明瞭に表示する必要があります。(※)
以下のような表示です。

  • 事業者が依頼・指示、対価提供(過去・将来の関係性含む)を行った第三者のSNS等の投稿を引用する場合。(ステマ運用基準第3の2(2)オ)
  • 事業者が依頼・指示等をしていなくても、当該第三者の表示を恣意的に抽出したり、表示内容に変更を加えて掲載する場合。(ステマ運用基準第2の2(1)キ)
  • そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合。(ステマ運用基準第3の2(2)オ)

自社で作成したねつ造された第三者の意見は論外ですが、第三者に依頼・指示をして、ある内容の表示をさせた場合には、「弊社から○○に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」「プロモーション」といった表示をすることで、事業者の表示である旨を示すことが求められます。
また、依頼・指示等をしていないSNS上の投稿であっても、恣意的に抽出したり、表示内容を変更して掲載する場合は、事業者の表示である旨を示す必要があることに留意しましょう。

(※)「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf
ステルスマーケティングに関するQ&A
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/

アフィリエイトサイトは広告主に表示責任あり

本件は、SNS上のバナー広告から遷移したアフィリエイト広告に対するものでした。
アフィリエイト広告は、広告主(事業者)が広告代理店等にアフィリエイト広告の作成を依頼する際、アフィリエイターに広告主からの具体的な指示がなかったとしても、「表示内容の決定を委ねている」として、広告主が行った表示とされます。
事業者の表示である以上、アフィリエイターがユーザー目線で何を書いてもよいわけではなく、優良・有利誤認の規制対象となります。

なお、アフィリエイターはアフィリエイトプログラムの対象となる商品・サービスを自ら供給する者ではないので、景品表示法で定義される「表示」を行う者には該当せず、規制対象にはなりません。(広告主と共同して商品・サービスを供給している場合を除く)
ただし、令和5年法改正により直罰規定(48条)(令和6年10月1日施行)が導入され、広告代理店やアフィリエイター等も共犯関係が認められれば、刑事罰による罰則(100万円以下の罰金)の対象となる可能性はあります。

アフィリエイトサイトもステマ規制の対象

本件では、アフィリエイトサイトの表示内容に対する優良誤認認定となっています。
しかし、仮に、優良・有利誤認の表示がなかったとしても、アフィリエイト広告について、「事業者の表示」であることが明瞭となっていない場合はステマ告示違反となります。
例えば、アフィリエイトサイトの冒頭に、「このサイトはアフィリエイト広告を利用しています。」等と、文字のサイズや色なども踏まえ、一般消費者にとって、「事業者の表示」であることが明瞭な記載を行う必要があります。

また、アフィリエイトサイト内の一部に、「事業者の表示」ではないと一般消費者に誤認されるおそれがある表示(例えば、専門家の客観的な意見のように記載されているものの、実際には、当該専門家に報酬を支払ってコメントを依頼しており「事業者の表示」に当たるもの)が含まれている場合には、その一部を見ただけであっても、一般消費者にとって、「事業者の表示」であることが明瞭となっている必要があります。
例えば、当該表示の付近に「○○社から○○先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」といった記載をするなどが求められます。

ステルスマーケティングに関するQ&A Q13
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/#q13

SNS等に表示される不当なネット広告への監視対応力が強化されている

東京都では、令和5年7月に、「東京デジタルCATS (Clean Advertising Team of Specialists)」と命名した弁護士やWEB広告専門家等による外部の専門家から助言を得る制度を導入し、SNS広告への調査方法等について専門的な見地からの助言を受ける取り組みを行っています。
————
不当なインターネット広告への対応力を強化します!
– 「東京デジタルCATS」始動! –
(東京都 2023年8月25日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/hyoji/cats
————-
今回の措置命令は、「東京デジタルCATS」の助言員からステルスマーケティング告示等に関する専門助言を受けての、地方自治体で初となるステルスマーケティング告示を含む執行となったとしています。

これまでも、東京都によるアフィリエイト広告の不当表示に対する措置命令が積極的に行われてきました。
・アフィリエイト、広告代理店に決定を委ねた場合の表示責任。ツインガーデンの痩身サプリとエムアンドエムのシワ改善医薬部外品に景表法措置命令 (東京都 2023年3月28日)

・東京都も痩身系機能性表示食品ヘルスアップとニコリオに景表法措置命令。SNS経由のアフィリ広告に注意 (東京都 2024年3月27日)

・アフィリエイト広告への処分続く。ヴィワンアークスの育毛剤の発毛・白髪改善効果表示に景表法措置命令(東京都 2024年10月10日)

今後も厳しい法執行が予想されます。

広告主である事業者としての対策は?

アフィリエイターやインフルエンサー等の第三者を介した広告も、表示責任は広告主である事業者にあることをしっかりと意識して、作成する表示等に不当表示が行われないよう、広告表示の管理を行うことが求められます。
アフィリエイト広告に対しては、景品表示法の適用などに関する考え方として「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」と、景品表示法26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改訂が2022年6月29日に公表されています。広告主がASPやアフィリエイターに対して作成する表示等に不当表示が行われないよう、管理上の措置を講じることの具体的な指針が新たに追加されました。
アフィリエイト広告等に限らず、広告主は、不当表示の未然防止等のため、広告の出稿前後の表示内容の確認、表示内容の根拠となる資料の保管など、必要な管理上の措置をしっかりと講じることが重要です。
《参考記事》
・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)

《関連記事》
・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日・4月1日)

・T.Sコーポレーション男性用育毛剤のアフィリエイト広告に、消費者庁による初の景表法措置命令 (消費者庁 2021年3月3日)

・アフィリエイトに加えてインスタ投稿が違反対象表示に。アクガレージとアシストの豊胸サプリに景表法措置命令(消費者庁 2021年11月9日)

・「chocoZAP」にステマ告示2事案目。自社WebサイトのSNSタイアップ投稿転載にもPR表記を(消費者庁 2024年8月8日)

・大正製薬NMNサプリにステマ告示3事案目。自社WebサイトのSNSタイアップ投稿転載に注意(消費者庁 2024年11月13日)

・ロート製薬の機能性表示サプリにステマ告示措置命令。続く大手製薬会社のステマ違反、自社サイトのSNS投稿転載に注意 (消費者庁 2025年3月25日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。