自転車用ヘルメットの安全性認証表示に優良誤認、販売業者3社に景表法措置命令。認証をアピールする際の注意点 (消費者庁 2024年12月12日)

2024年12月10日及び11日、消費者庁は、インターネット上で自転車用ヘルメットを標ぼうする商品を販売する事業者3社に対し、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

不当表示の内容は、「CE認証済み」など、自転車用ヘルメットに関する欧州の安全規格又は安全基準に適合するものであるかのように示す表示が行われていたにもかかわらず、実際には、これらの規格又は基準に適合するものではなかったというものです。
処分を受けたのは、蔵前製薬(株)(東京都目黒区)、インフィニティ(株)(東京都豊島区)、(株)クロマチック・フーガ  (福岡県太宰府市)の3社です。

自転車用ヘルメットは、自転車運転時の事故の際に頭部を保護する重要な役割があることから、令和5年4月から着用が努力義務化されています。

処分のポイントと認証をアピールする際の注意点について確認します。

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自転車用ヘルメットを標ぼうする商品の販売事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について (消費者庁 2024年12月12日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/040302
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【違反事業者概要】
対象事業者:蔵前製薬株式会社 (本店所在地: 東京都目黒区)
事業内容:日用品雑貨及び各種商品の企画、製造、販売、輸出入等
代表者:代表取締役 浅野 桂奈子

対象事業者:インフィニティ株式会社 (本店所在地: 東京都豊島区)
事業内容:化粧品、健康食品、医薬品、医薬部外品、日用品雑貨等の輸出入及び販売等
代表者:代表取締役 李 娜

対象事業者:株式会社クロマチック・フーガ  (本店所在地: 、福岡県太宰府市)
事業内容:通信販売等
代表者:代表取締役 星野 良介

【違反概要】
(1)蔵前製薬及びインフィニティ
商品:「キャップヘルメット」と称するヘルメット

蔵前製薬の従業員とインフィニティの従業員が本件商品の仕入れ及び出荷を行うなど、両者が共同して、本件商品を自ら又は小売業者を通じて一般消費者に販売している。

表示媒体、表示期間:
「楽天市場」に開設した「arianna」と称するウェブサイト
少なくとも2024年1月13日

インフィニティの従業員は、本件ウェブサイトの店舗運営責任者に就任している。
蔵前製薬は、蔵前製薬の従業員が本件ウェブサイトの表示内容を作成するとともに、インフィニティの従業員が本件ウェブサイトの表示内容を最終決定するなど、インフィニティと共同して、本件商品に係る本件ウェブサイトの表示内容を自ら決定している。

表示内容:
例えば、本件商品を被った人物及び本件商品の画像と共に、「CE安全基準認証済み」、「自転車・超軽量」、「改正道路交通法の施行により 令和5年4月1日から、 すべての自転車利用者に対して 乗車用ヘルメットの着用が 努力義務化されます。」等と表示。
あたかも、本件商品が自転車用ヘルメットに係る欧州連合の安全基準又は安全規格に適合するものであるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:キャップヘルメット(「楽天市場」に開設した「arianna」と称するウェブサイト)

(消費者庁発表資料より抜粋)

(2)クロマチック・フーガ
商品:「ハット型ヘルメット」と称するヘルメット
表示媒体、表示期間:
「楽天市場」に開設した「雑貨の国のアリス®」と称する自社ウェブサイト
少なくとも2024年1月19日
表示内容:
例えば、本件商品を被った人物の画像と共に、「ハット型ヘルメット」、「CE認証済」、「令和5年4月1日から、 道路交通法の改正により、自転車利用者のヘルメット着用が努力義務となりました。」等と表示。
あたかも、本件商品が自転車用ヘルメットに係る欧州連合の安全基準又は安全規格に適合するものであるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:「ハット型ヘルメット」(「楽天市場」に開設した「雑貨の国のアリス®」と称する自社ウェブサイト)

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
本件2商品は、自転車用ヘルメットに係る欧州連合の安全基準又は安全規格に適合するものではなかった。

消費者庁によると、
(1)ヘルメットの内側全面に衝撃吸収層が付いていないもの
(2)あご紐の幅が15mm未満のものやチンカップ付きのもの
(3)あご紐がヘルメットに確実に取り付けられていないもの
(4)ヘルメット着用時に視野が隠れるもの
のうち1つでも該当した場合には、自転車用ヘルメットの安全基準・規格(EN1078やSG基準)を満たさないとしています。(※1)
3社が販売した2商品は、これらの基準・規格に適合するものではありませんでした。

(※1)
自転車用ヘルメットの外形上の主な注意点
(消費者庁 2024年12月12日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/040293

自転車用ヘルメットの安全性を示すマーク・規格

ヘルメットには「産業用」、「乗車用」、「自転車用」などがあります。
日本国内には現時点で、乗車用ヘルメット(バイク用ヘルメット)と異なり、自転車用ヘルメットに対する法令による規格・基準はなく、民間機関・団体による安全規格や安全基準の「SG(製品安全協会)」や「JCF(日本自転車競技連盟)」が流通しています。
また、外国の法令や民間の安全規格や安全基準として、欧州の「CE EN1078」、米国の「CPSC1203」などへの適合をうたう製品も輸入・販売されています。

主な自転車用ヘルメットに関する安全性を示すマーク・規格

自転車用ヘルメットの安全性を示すマークについて
 ― 消費者庁が自転車用ヘルメットを標ぼうする商品に関する措置命令を実施 ―
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_081/

自転車用ヘルメットの安全認証マークに関するトラブル状況

自転車用ヘルメットの安全認証マークにまつわる消費者相談や不適切事例について、消費者庁(※2)や製品安全協会(※3)が注意喚起を行っています。

相談事例:
・広告には海外の製品安全の認証マークのCEマークとCPSCマークがついているとの表示があったが、届いたものにはついていなかった。(ネット通販購入)
・商品紹介には【CE安全基準認証済、自転車用ヘルメット】と表示があったが、商品到着後に表示を確認すると、EN812という産業用ヘルメットの規格(※)であり、自転車ヘルメットの規格EN1078ではなかった。(ネット通販購入)
(※)
EN812は軽作業用の保護帽を対象としたものであって、自転車用ヘルメットに求められる安全性能には遠く及ばない。

不適切事例:
認証を受けたことをアピールするために、証書のようなものを掲載しているが、当該商品に求められる基準や認証とはまったく関係のないものであったり、仮に試験結果であったとしても、それがどのような条件で行われたのかは分からない。

(※2)
自転車用ヘルメットの安全性を示すマークについて
― 消費者庁が自転車用ヘルメットを標ぼうする商品に関する措置命令を実施 ―
(消費者庁 2024年12月12日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_081

(※3)
第76号 自転車用ヘルメット:認証マークにも気を付けましょう!(修正版)
(一般財団法人製品安全協 2023年6月29日)
https://www.sg-mark.org/mailmagazine/no76/

事業者としての留意事項

●消費者の商品選択に重要な価値となる表示には特に注意
自転車用ヘルメットは、自転車運転時の事故の際に頭部を保護するための製品です。
安全規格や安全基準を満たしたとするマークが付された自転車用ヘルメットを選んで購入する消費者は、安全の確保に第一義的な価値を置いていると考えられます。
ヘルメットに限らず、消費者の商品選択に重要な価値となる表示での虚偽や誤認表示は厳しく処分されます。

●認証をアピールする際は適切に
まず、製品に関する認証が事実に基づいていることを必ず確認します。
公共的機関その他の団体の認定、賞などを受けた旨を表示する場合は、その内容、時期及び団体名を付記するようにします。

事業者が自ら評価してマークを付けることができる自己適合宣言によるものか、第三者機関による審査・認証によるものかも重要なポイントです。
特に、法令による規格基準ではないにもかかわらず、国による規格適合性や認証を受けているかのようにうたうことは、不当表示となるおそれがあります。

製品に関する認証が事実であることに加えて、認証を受けた内容と、商品で訴求する内容とが適切に対応していることが求められます。
商品に求められる基準や認証とはまったく関係のないものは認められません。

安全性を含め、製品の長所を一般消費者に訴求するために品質や規格等の内容について積極的に表示を行う場合には、製造事業者や仕入先事業者の説明をうのみにするのではなく、当該表示の根拠となる情報をしっかりと確認する必要があります。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。