2023年10月1日に施行された ステルスマーケティング告示の3事案目の行政処分です。
消費者庁は2024年11月13日に、大正製薬(株)(東京都豊島区)が販売するサプリメントに関する表示に対して、景品表示法第5条第3号による措置命令を行いました。
大正製薬が商品の無償提供及び対価の提供を条件に、インフルエンサーへ投稿依頼を行なったInstagram 内の投稿を、一部抜粋して自社ECサイトにおいてPR表記をせずに掲載していたことが、一般消費者が事業者の表示であることが判別困難な表示とみなされました。
ステマ告示違反の内容は、今年8月のRIZAPに対する事案と同様のものとなっており、「一般消費者にとって事業者の表示であることが判別困難な表示」についての理解が求められます。
・「chocoZAP」にステマ告示2事案目。自社WebサイトのSNSタイアップ投稿転載にもPR表記を(消費者庁 2024年8月8日)
自社メディアでの表示であれば、PR表記は一切不要という誤った理解には要注意です。処分の内容を確認します。
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大正製薬株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年11月13日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/039990
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違反概要
【対象商品】
「NMN taisho」と称するサプリメント
【表示媒体・表示期間】
「大正製薬ダイレクトオンラインショップ」と称する自社ウェブサイト
2024年4月3日、4月19日~5月22日までの間
【違反表示内容】
第三者に対し、本件商品の無償提供及び対価を提供することを条件に、本件商品についてInstagramに投稿を依頼したことなどによって当該第三者が投稿した表示を、一部を抜粋して、自社ウェブサイトに表示していたことから、大正製薬は、本件商品に関する表示内容の決定に関与しているものであり、当該表示は事業者の表示と認められる。
表示例)
「Instagramで注目度上昇中⤴」
「品質にこだわりたい方には特許処方の大正製薬『NMN taisho』
「●●●様」
本件商品を持つ人物の画像及び「いくつになっても自分らしく、ʻʼ今が最高ʻʼと思える活き活きとした日々を過ごしていきたいですね!」等。
上記表示は、大正製薬が当該第三者に依頼した投稿であることを明らかにしておらず、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。
表示例:「大正製薬ダイレクトオンラインショップ」と称する自社ウェブサイト
SNSタイアップ投稿の自社メディア転載の留意点
今年8月のRIZAP(chocoZAP)に対するステルスマーケティング告示違反同様、大正製薬も、SNS上でのインフルエンサーの投稿ではPR表記を行っていましたが、事業者自身のウェブサイトでの表示は、事業者が関与した第三者の投稿(インフルエンサーの投稿)部分についても、事業者の表示であることが明らかであると判断して、第三者の投稿部分について広告であることが明瞭となる表記をしなかった、と述べています。
大正製薬(株)の「消費者庁による措置命令について」での、措置命令の経緯説明
表示の経緯
当社は、インフルエンサーに対して本商品の無償提供及び対価の提供を条件に本商品に関する投稿を依頼し、2023年6月にインフルエンサーによるSNSへの投稿がなされました。当該投稿につきましては、一般生活者が当社の広告であることを判別できるように「#PR」等の表示をしておりました。
その後、当社は当該インフルエンサーの投稿の一部を抜粋し、自社ウェブサイトに表示しました。その際、自社ウェブサイト上に表示しているものであることから、一般生活者においては、インフルエンサーの投稿部分についても当社の広告であることが判別できると考え、その投稿に表示されていた当社の広告である旨を表示せずに、以下のとおり表示しておりました。大正製薬(株)「消費者庁による措置命令について」(2024年11月13日)
https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20241113001753.html
確かに、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(※)では、基本的に事業者自身のウェブサイトやSNSのアカウントでの表示は、事業者の表示であることが明らかであるとして、告示の対象となるものではない(つまり、PR表記は不要)とされています。(ステマ運用基準第3の2(2)オ)
ただし、自社メディア上の表示であっても、事業者の表示ではない(例えば、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるもの)と一般消費者に誤認されるおそれがある場合には、第三者の表示について事業者の表示であることを明瞭に表示する必要があります。
以下のような表示です。
- 事業者が依頼・指示、対価提供(過去・将来の関係性含む)を行った第三者のSNS等の投稿を引用する場合。(ステマ運用基準第3の2(2)オ)
- 事業者が依頼・指示等をしていなくても、当該第三者の表示を恣意的に抽出したり、表示内容に変更を加えて掲載する場合。(ステマ運用基準第2の2(1)キ)
- そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合。(ステマ運用基準第3の2(2)オ)
自社で作成したねつ造された第三者の意見は論外ですが、第三者に依頼・指示をして、ある内容の表示をさせた場合には、「弊社から○○に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」「プロモーション」といった表示をすることで、事業者の表示である旨を示すことが求められます。
また、依頼・指示等をしていないSNS上の投稿であっても、恣意的に抽出したり、表示内容を変更して掲載する場合は、事業者の表示である旨を示す必要があることに留意しましょう。
(※)「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf
ステルスマーケティングに関するQ&A
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/#q4
《参考記事》
・医療法人社団祐真会、Googleマップの口コミ投稿にステマ告示初の措置命令 (消費者庁 2024年6月7日)
・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)
・顧客による自主的な投稿ではない「口コミ」評価のNo.1表示に優良誤認。埼玉県 整骨院「くまのみ」に景表法措置命令(埼玉県 2023年3月14日)
・「妊活」サプリ、ゼネラルリンクに景表法措置命令 ステマランキングサイトによる広告手法に注意(消費者庁 2020年3月10日)
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