(株)ファッズ、居酒屋のメニュー価格に景表法措置命令。税込と誤認させる税抜き表示に注意  (消費者庁 2024年7月29日)

今回の措置命令事案は、飲食店の料理メニューの税抜き価格表示に対する有利誤認表示です。

消費者庁は7月29日に、居酒屋「新時代」など飲食店の経営事業者(株)ファッズ(名古屋市)の、店舗における料理や飲料の価格表示に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
同社は、飲食店ポータルサイト「食べログ」内に開設された自社ホームページや、SNS「X」の店舗公式アカウントにおいて、「生ビール190円ハイボール150円」など、価格を消費税抜きで表示していたところ、あたかも消費税込みの価格であるかのように表示していたとして、有利誤認表示とみなされました。

処分の概要と、消費税法の「総額表示」ルールについての景品表示法上留意すべきポイントを確認しておきましょう。

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株式会社ファッズに対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁 2024年7月30日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/038840
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違反内容

【対象役務】
「新時代」又は「新時代44」と称する店舗における料理及び飲料を供給する役務

【表示媒体】
「食べログ」と称する飲食店ポータルサイト内に開設された自社ホームページ
「X(旧Twitter)」と称するSNS内の「新時代@shinjidai_phads」と称する「新時代公式アカウント」の投稿

【表示期間】
食べログ:2023年6月21日~12月25日
X:2020年8月8日~2024年6月10日の8投稿、
2021年11月8日以降の3投稿※、2023年1月4日以降の18投稿※
※措置命令発出時点において、表示継続中。

【表示内容】
食べログ:
例えば、「新時代新橋店」と称する店舗において提供する料理、飲料について、「料理メニュー」及び「(税込価格)」、「伝串(1本)」及び「50円」等と表示。

X:
例えば、「新時代のグランドメニューは、全店舗統一 『コンビニよりも安い』 ハイボール150円 ・生ビール 190円 何回でも忘年会を実施頂ける価格設定にしました グルメ通の方には『レバ刺し(380円)』がおすすめです より多くの方にお気に入り頂けるメニューを揃えました phads.jp/shop_search/」との記載と共に、料理の画像を表示。

いずれも、あたかも、価格が税込価格であるかのように表示していた。

実際:
価格は消費税を含まない価格であって、税込価格ではなかった。

【表示例】食べログ

(消費者庁公表資料より引用)

【表示例】X

(消費者庁公表資料より引用)

消費税法の「総額表示」ルールも要チェック

税抜き価格表示に対する景品表示法での処分は2事例目です。過去には、2021年12月にガソリンスタンドの看板表示のわかりにくい税抜き価格表示に対する措置命令があります。

・菊池商事とプレイズ、ガソリンスタンド看板の税込と誤認させる表示に景表法措置命令 (消費者庁 2021年12月16日)

景表法上の観点からは、税抜き価格が税込価格と誤認されることが有利誤認につながるということですが、「税抜」、「税別」の文字が大きく明瞭に表示されていればよいということではありません。
消費税法では、消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者への総額表示(税込価格表示)を義務付けており、2021年4月1日から完全義務化されています。

具体例
例えば、次に掲げるような表示が総額表示として認められます(標準税率10パーセントが適用されるものとして記載しています。)。

11,000円
11,000円(税込)
11,000円(税抜価格10,000円)
11,000円(うち消費税額等1,000円)
11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
11,000円(税抜価格10,000円、消費税率10%)
10,000円(税込価格11,000円)

No.6902 「総額表示」の義務付け(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm

税抜き価格を本書きとして表示するのであれば、例示の「10000円(税込価格11,000円)」のように、税抜き価格だけでなく税込価格も併記する必要があります。
例えば、10,000円(税抜)」のような表示では、消費税の金額や税率が具体的に示されていません。仮に「税抜」の文字が大きく明瞭に表示され、消費税が別途かかることを表記していても、具体的な金額がわからなければ総額表示には該当しないとみなされます。

また、「税抜価格」を他の表示方法に比べて文字の大きさや色合いなどを変えることにより「税抜価格」をことさら強調し、「10,000円」が「税込価格」であると消費者が誤認するようなことがあれば、景品表示法上問題となります。

総額表示義務の対象は、事業者があらかじめ消費者に対して行う価格の表示で、媒体による区別はなく、どのような表示媒体(ECサイトの価格、店頭表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告など)でも対象となります。
(ただし、価格を表示していない場合や、口頭で伝えるような価格は、総額表示義務の対象とはなりません)

消費税法の「総額表示」ルールを、再度確認しておきましょう。

≪参考記事≫

・割引率・割引額表示の注意点

・二重価格表示の注意点~販売条件が異なる販売価格~

・二重価格表示の注意点~競争事業者の販売価格~

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。