8月6日、消費者庁は(株)ジェイコムウエストのガス料金コースの料金表示に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。
不当表示は、毎月のガス使用量が16㎥を超える場合のジェイコムウエストのガス料金が、大阪ガスの「一般料金」より低額であるかのような表示でした。
ジェイコムウエストと大阪ガスのガス料金の算定方法は、どちらも基本料金+従量料金((基準単位料金+原料費調整単価)×月のガス使用量)の合算額となっていました。
原料費調整単価について、ジェイコムウエストの価格が大阪ガスの価格を上回っていたことから、実際には、月のガス使用量の多寡にかかわらず、ガス料金は大阪ガス一般料金より高くなるものでした。
有利誤認となった理由は、原料価格が高騰していた時期となる、2022年9月から2023年2月までの間、上限設定がないジェイコムウエストの原料費調整額が、上限設定のある大阪ガスの原料費調整額を上回っていたことによるものです。
(JCOMは、上記を除く期間では同事象は発生しておらず、月間16㎥以上のガスの使用で、大阪ガスよりも低額になっているとしています。)
処分内容と、同様の事案で過去最高となる16億5594万円の課徴金額となった中国電力の電気料金プランの有利誤認表示についても確認します。
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株式会社ジェイコムウエストに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年8月7日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/038974
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●違反概要
【対象役務】
都市ガスの小売供給
「J:COMガス まとめトク料金コース」と称するガス料金
【表示媒体】
JCOM(株)のウェブサイト
※ジェイコムウエストは表示内容の決定をJCOMに委ねることにより、表示内容の決定に関与している。
【表示期間】
2022年11月11日から2023年1月19日までの間
【表示内容】
例えば、「POINT1 J:COMガスのまとめトク料金コースなら年間3,420円(税込)おトクに!」、「大阪ガスの一般料金をご契約中のご家庭で、毎月のガス使用量が16㎥を超える場合は、J:COMガスのまとめトク料金コースをご契約いただくとおトクになります。」等と表示することにより、あたかも、毎月のガス使用量が16㎥を超える場合の本件役務のガス料金は、大阪ガスが提供する家庭用の都市ガスの「一般料金」より低額であるかのように表示していた。
実際:
令和4年11月11日から令和5年1月19日2022年11月11日から2023年1月19日までの間において、本件役務のガス料金に適用される原料費調整単価が大阪ガス一般料金に適用される原料費調整単価を上回るため、月のガス使用量の多寡にかかわらず、ガス料金は大阪ガス一般料金より高額であった。
【表示例】JCOM(株)のウェブサイト
認められなかった打消し表示
同様の事案に、2023年8月30日に措置命令を受け、過去最高となる16億5594万円の課徴金額となった中国電力の電気料金プランの有利誤認表示があります。
・課徴金額過去最高16億円超。中国電力の電気料金プランの非公正な料金比較に景表法措置命令。(消費者庁:2024年5月28日)
不当表示は、同社の自由料金メニューの料金が実際には従量電灯Aよりも高くなる場合があったにも関わらず、自由料金メニューの方が安価であるかのように表示していました。
有利誤認となった理由は、燃料価格が高騰していた時期となる2022年4月1日から2023年1月12日までの期間において、燃料費調整の上限設定がない自由料金メニューと燃料費調整が定額の従量電灯Aを、燃料費調整額を含まない料金で比較していたことによる非公正な料金比較によるものです。
同事案では、価格優位性を訴求する強調表示に対して、打消し表示として、「燃料費調整額を含まない比較であること、燃料費調整額により実際には異なる金額となる場合があること、自由料金メニューには燃料費調整の上限設定がないこと」を記載していましたが、打消し表示は認められず、有利誤認認定されました。
燃料費調整額を含まない料金での比較や、打消し表示を行っていることなどから、中国電力の違反の方がジェイコム事案より恣意的なものを感じます。
上限設定の有無といった料金設定の違いを明らかに表示せずに価格比較を行うことは、本件のような有利誤認表示となるリスクがあります。
十分に注意が必要です。
≪参考記事≫
・北海道電力の電気と都市ガスのセット契約キャンペーン表示に景表法措置命令。「おトク」の条件表示はキッチリと(2023年7月28日 消費者庁)
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