詐欺的な定期購入商法対策を目的とした、通販定期購入契約での「最終確認画面」の義務表示事項を定めた2022年6月施行の特定商取引法改正ですが、残念なことに、改正法施行後も通信販売での「定期購入」に関する消費者相談件数は増加し続けています。
全国の消費生活センター等に寄せられた通信販売での「定期購入」に関する相談件数は、2021年度が約5万9,000件、2022年度が約9万8,000件と増加しています。2023年度(5万4,627件)も前年同期(5万2,674件)と同水準となっており、法改正による抑止効果は認められません。
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その申込み、定期購入になっていませんか?もう一度「最終確認画面」をチェック!
-依然として多い通信販売での「定期購入」トラブル-
(国民生活センター 2024年1月31日:公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20240131_1.html
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20240131_1.pdf
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通販「定期購入」に関する最新の消費者相談状況と法規制動向を確認しましょう。
化粧品、健康食品以外にも広がる「定期購入」
「化粧品」(化粧クリーム、養毛剤など)が最も多く33,254件、ついで「健康食品」(ダイエットサプリメントなど)が13,359件で、相談件数全体の85%を占めています。
3位「他の教養娯楽品」(電子タバコ、ペットフード)、4位「医薬品」(消毒殺菌剤、漢方薬)などの商品にも「定期購入」の販売方法が広がっています。
《関連記事》
・2021年度も増加していた通販「定期購入」トラブル。電子タバコや医薬品など商品に広がりが(国民生活センター 2022年7月公表)
・ペット用品のネット通販で定期購入トラブル急増。前年同期件数の6倍以上(国民生活センター 2023年2月1日公表)
主な相談事例:
【事例1】
割引クーポンを利用すると気づかないうちに“複数回の購入が条件の定期購入”に変更される
SNS で初回 980 円のダイエットサプリの広告を見てクレジットカード払いで注文した。その後商品が届き、中身を確認したら6箱入っていて、代金も約2万円になっていた。
1箱のみ 980 円で注文したつもりだったが、申し込む際に「期間限定クーポンプレゼント」を選択したことで、約2万円の商品が3か月ごとに届く定期購入になっていたようだ。
次回以降は解約したいが、事業者の電話番号にかけてもつながらない。(2023年7月受付 60歳代 女性)
【事例2】
いつでも解約可能な定期購入と思って購入したが、高額な違約金を請求される
SNS の広告に「白髪が目立たなくなる」とあるのを見て、育毛エッセンスをコンビニ後払いで申し込んだ。支払代金が約 2,000 円であり、いつでも解約可能な定期購入と思っていたが、事業者から3本で約1万 6,000円の請求メールが届いた。
事業者に電話したところ、「5回継続が条件のコース(支払総額約6万7,000円)を申し込んでいるので解約はできない。どうしても解約したい場合は、2回目の代金を支払った上で違約金約2万5,000円を支払うことになる」と言われた。
(2023年7月受付 70歳代 女性)
【事例3】
購入後に2回目以降を解約しようとしたところ、差額の支払いを求められた
SNS の広告からアクセスしたサイトでファンデーションを購入した。初回が約2,000円と安かったので定期購入かもしれないと思ったが、2回目以降は解約すればよいと考えて注文し、支払い方法はコンビニ後払いを選択した。
その後、初回の商品が届き、2回目以降を解約するために事業者に電話をかけたが音声でチャットから問い合わせるよう誘導されたので、チャットで解約を申し出たところ、「2回目の商品を受け取らずに解約する場合は、5営業日以内に差額の約 8,000 円を振り込まなければ解約は完了しない」と回答された。
注文時の画面は保存していないが、差額精算が必要だというような注意事項を見た覚えがなく、初回のみで解約できると思っていた。(2022年 10月受付 40歳代 女性)
悪質通販「定期購入」対策に、契約条件画面のスクリーンショットを推奨
事例1のケースに関しては、新たな手法として2022年9月に国民生活センターから、2024年3月にも東京都が注意喚起を行っています。
販売サイトで「いつでも解約可能」などと表示し、消費者の注文完了直後に「特別割引クーポン」を提示、クーポンを利用すると消費者が気づかないうちに“複数回の購入が条件の定期購入”にコース変更されるというもの。
「最終確認画面」にコースが変更される旨が表示されていなかったり、表示されていても、文字が小さかったり、多数回スクロールしないと確認できなかったりと、消費者が認識しづらいものとなっています。
《関連記事》
・悪質通販「定期購入」の新たな手口に注意喚起。規制に向けた行政の動きは?(国民生活センター 2022年9月公表)
注文完了後に現れる「割引クーポン」等に注意!!
~「回数縛りなし」のはずが、クーポンを利用したら複数回継続が条件の定期購入に!~
(東京都 2024年3月1日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/sodan/kinkyu/20240301.html
この詐欺的手法は、契約に関する表示が契約完了時に画面上に表示されるのみであることから、後から確認することが困難で証拠が残りにくいことが、行政の調査や法執行のネックとなっています。
このようなデジタル広告の問題点について、景品表示法検討会においても、中長期的な検討課題として、デジタルの表示の保存義務などが議論されましたが、令和5年改正では見送られました
そこで、消費者への注意喚起において、後から確認できるように、契約内容や画面表示を必ずスクリーンショットで保存するようアドバイスしています。
通販はクーリング・オフの対象外ですが、2022年6月施行の特商法改正により、販売業者等が販売サイトの「最終確認画面」において、契約の申込みの内容(分量、販売価格・対価、支払の時期・方法、引渡・提供時期、申込期間(期限のある場合)、申込みの撤回、解除に関すること)を、表示しなかったり、不実の表示や消費者を誤認させるような表示を行った場合、消費者の申込みの取り消しが認められます。
《関連記事》
・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)
ただ、消費者に通販利用時に契約条件画面のスクリーンショットを保存させることを習慣化させることは容易ではないと想像できます。そのため、改正特商法施行後も相談件数の減少には至っていないのだと考えられます。
詐欺的な定期購入商法への法執行は未だ3件。トラブルの収束は?
ネット通販定期購入に対する特商法による行政処分は、法改正前の2021年11月25日の(株)BIZENTO事案があり、2022年6月1日の法改正施行から1年後の2023年6月28日に初の処分が(株)LITに対して、更に9か月後に2件目となる(株)サンに対する処分が出されました。
・ネット通販定期購入(株)BIZENTOに特商法による業務停止命令(3カ月)。「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」のパブコメ開始(東北経済産業局 2021年11月25日)
・特商法改正後初の処分。ネット通販定期購入(株)LITに特商法による業務停止命令(6カ月)。積極的な消費者被害救済の指示も(消費者庁 2023年6月28日)
・No.1不当表示、特商法の通信販売規制でも。法改正後2件目の処分、ネット通販定期購入(株)サンに業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年3月15日)
法改正後の処分件数が2件に留まり、現状、悪質通販定期購入商法の抑止効果も認められません。今後、法執行の強化により被害が収束に向かうのか疑問が残ります。
≪参考記事≫
・電話注文での「定期購入」トラブルに注意喚起。電話受注でのアップセル・クロスセル営業に特商法規制強化へ(国民生活センター 2022年11月30日公表)
・2021年度も増加していた通販「定期購入」トラブル。電子タバコや医薬品など商品に広がりが(国民生活センター 2022年7月公表)
・ネット通販「定期購入販売」関連相談、前年度比57.1%と大幅減少 (JADMA 2021年度消費者相談件数)
・JAROへの苦情、健康食品6割減。審査事案の3分の1がアフィリエイトサイト関連(日本広告審査機構 2021年度の審査概況)
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